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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
12/33

11話 黒竜



エストルダ大帝国皇帝であるラインバードは空に向かい「ピ―――」と、手と口を使い指笛ゆびぶえを鳴らした。

何かを呼び出しているようだ。

帝国騎士団の副団長であるイーニストからアランの居場所を聞くなり直ぐにこの行動を取っていた。

イーニストは指笛の音と同時に空を見上げた。


上空には大きな翼を広げ尾を揺らし周回をしながら徐々にこちらに向かってきている。

黒曜石の如くの太陽の光に当たり輝く鱗は見る者全て惹きつけるほど綺麗な色をしている。


「……黒竜こくりゅう


イーニストは自分達に近付いてくるエストルダ皇帝ラインバード所有の竜を見つめていた。







異世界エスラルードは、伊万里いわくファンタジーな世界だ。

魔法や妖精など日本では物語の世界であるが、ここ異世界エスラルードはごく普通に存在している。

竜も然り……。

しかし、竜の存在は異世界エスラルードでは知られているが、数は非常に少ない。

現在、分かっている情報では今のところ世界には2匹の竜しか確認されていない。

エストルダ大帝国に黒竜こくりゅうとここから海を越えたある国に赤竜せきりゅうと、その国のトップが竜を所有している。

そのように説明をすれば、竜は怒るかもしれない。

彼らの知能は人間並みかそれ以上に賢いのだ。

しかし、竜と意思疎通が出来るのは契約している皇帝ラインバードともう一つの国のトップの二人だけだ。

何故、その二か国にのみにしか竜がおらずトップに立つ者が契約出来るのかは、『華嫁』に関係している……詳しい説明は今は省かせてもらう。

その時がくればいずれまた……。





ラインバードの前に降り立った黒竜は彼に話しかける様に軽く頭を動かしている。

竜の瞳は碧眼ととても綺麗な青をしている。

高さは約3メートルほどありランバードは少し見上げながら黒竜に話しかけていた。


「オニキス、お前に頼みたい事がある。至急アランをガウラの森で迷子になっているのを捜しだし城まで連れて来てくれないか?」


黒竜はオニキスと名前が付けられていた。

オニキスはラインバードの話を聞きながら頭を動かしていた。

しかし、話を全て聞くと『グフッ』とオニキスが少し溜息をついた様に見えたのはイーニストだけだろうか?

だが、同意したのか翼を大きく広げだした。


「頼んだぞ」


ラインバードが一声かけるとオニキスは空に向かい飛び立った。




「父上、オニキスを呼び出すなんて非常事態でも起きているのですか?」


オニキスと入れ替わりに来て、ラインバードに話しかけてきたのは第2皇子のカイルだ。

いつもと違う様子にカイルも異変を感じたのだろう。


「他の皇子が揃ってから事の説明をする。アランについては今オニキスに迎えに行かせた」

「……相変わらずどこかで道に迷っているのですか?アラン兄上は。いつもなら勝手に城に戻ってくるまで放置をするのに、迎えに行かせるとは余程、緊急を要する問題が起きたのですね?」


カイルもアランの方向音痴を知っているので、呆れた声で話していたが最後の方は真面目な声色になっていた。


「お前は賢いからみなまで言わなくとも理解するから助かる」

「皇帝のお褒めに預り光栄です」


カイルは言葉を交わしながらこの場にいるメンバーに目を配らせた。

皇妃でカイルの母親であるリンダに魔術師のノエル。


――――――今日はイマリを召喚する日だった筈。


なのに、伊万里の姿が見えずに自分達を呼び出したという事は……

カイルの脳裏に嫌な予感が走った瞬間


「ノエル先生!!イマリはどこに飛ばされたか分かりますか!?」


ノエルに大きな声をかけながら第4皇子のダレンがカイル達がいるこの場所に向かってきた。


「イマリが飛ばされたという事は一体どういう意味?」


やはりイマリが関係する事なのだろう……ダレンの言葉に確信したカイルだった。

こんなに感情を露わにするのは大抵イマリ絡みだ。

カイルも人の事は言えないが……。


視線をラインバードに移すと『待て』と言わんばかりに目で合図をし、遠くを見ていた。

その先には第3皇子のサイラスが近づいてきている。

手には小さな箱が握られていて、その表情は少し嬉しそうだ。

ラインバード達のこの緊迫した雰囲気に全く気付いていない様子だ。


「父上?突然の呼び出しに私達に何か用があるのですか?それにノエルがいるのに、イマリの姿が見えないんですが……」


周りを見渡しながらサイラスは伊万里を目で探している。

つくづく自分も含め兄弟全員イマリを気にいってるなとカイルが思っていると


「そのイマリの事なんだが、本来ならここに召喚される筈だったのが、先に召喚の儀式を行っていた別の国に召喚されたと見ている。多分、イマリはルワリスタ国に居る筈だ。あの国は特殊で特に現在、王が病気で倒れ内情は荒れている。そんな危険な場所にイマリがいるのだ」



「イマリが!!」

「早く助け出さないとイマリの身が危ないのでは!?」

「イマリに何かあったら僕は許せない!!」


動揺を隠せないのか口々に言葉に出している。

そんな皇子達の様子にラインバードは一瞥し


「落ちつけ、先ずは情報が必要だ。むやみにあの国にイマリの情報を流せば、余計に警戒をされイマリの身が危なくなるかもしれん。まずは秘密裏に動いてイマリの状況を確認するので、話の続きはアランが到着してからだ」


冷静な声で話すラインバードに皇子達も頭が冷えたのか全員頷いていた。

そんな中、一人だけ微笑みながら皇子達を見ている者がいた。



――――――あらあら、イマリはモテモテね!この件で息子達の誰かと少しは恋愛方面に近付けばいいのにね!



皇妃であるリンダだ。

勘なのか伊万里の身は大丈夫だと感じていた。

伊万里は強運の持ち主だから絶対に自分達の元に帰ってくるとそう信じて……。









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