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第1話 王都へ、そして1つの出会い

第1話です!どうぞお楽しみください!

第1話 王都へ、そして1つの出会い




翌日、朝も早くに目が覚めた。起きるとすぐ母さんに昨晩の事を話す。


「母さん、大切な話があるんだ」


真剣な表情に母さんも何かを感じ取ったのだろう、何も言わずに耳を傾けてくれる。

そして昨夜聞いた話を包み隠さず全て話した。


「……だから俺はすぐにでも王宮にいかなきゃいけない」


そこで一度言葉を切る。


「そう……」


母さんは少しの間静かに目を閉じる。


「……まるで御伽噺みたいね。母親としてはここで危ない事をしないでって息子を止めなきゃいけないのだけど……」


「母さん……」


「でも、アークはもう決めたんでしょ?」


「え?あ、ああ、これは俺が頼まれた事だから。俺がやらなきゃいけないんだ」


「なら行ってきなさい、それで、しっかりその責務を果たして来なさい。母さんは止めないわ、その代わり、絶対に帰ってくるのよ?」


その言葉に力強く頷く。


「なら早速出るよ」


「分かったわ、しっかり支度をしときなさい、外にソラを出しておくから」


そう言って母さんは外に出て行く。

俺も言われた通りに旅支度をして外に出る。

服の着替えに保存食、持っていく物はいくつもあったがとりあえず大きめの鞄に詰め込んだ。


「待っていたわよ、さ、こっちに来なさい」


外にはソラと何やら長細い包みと皮袋を持った母さん。


「母さん、それは?」


「旅費よ、それと……はぁ、まさかまたこれを出す事になるなんてね」


そう言って包みを解くと中からそれなりに使い込まれたロングソードが出てきた。


「いくら街道を通るとはいえ、モンスターは出てこないとは限らないわ。これを持って行きなさい、お父さんが昔使っていた剣。時々手入れはしていたのだけど、また使う事になるなんてね」


そう言って剣を差し出してくる。

そのロングソードを手に取ると真剣特有の重みを感じ、思わず呟く。


「重い……」


「そう、それが本物の武器の重み。人を助ける事も出来れば、人の命を奪う事も出来る物よ」


母さんは一瞬悲しそうな顔をする。


「本当は、貴方にこんな物を持たせたくはなかった。でも、そうもいかないでしょ?」


「大丈夫、俺は何があっても俺だから」


「……ふふっ、貴方、お父さんと同じ事言うのね?」


その言葉に思わず驚いてしまう。


「父さんと?」


「ええ、あの人も王都へ立つ時、同じ事を言って出て行ったわ」


「そうなんだ……」


そう考えると少し不思議な感じだ、でも、父親と繋がりがあるような気がして嬉しくなる。


「その様子なら、大丈夫見たいね?でも、覚えておいて。武器は、使う人次第で善にも、悪にもなるってこと」


「うん、大丈夫だよ。じゃあ、そろそろ行くから」


そう言って剣をベルトで背中に止め、ソラに跨る。


「気を付けて行くのよ?ソラも、この子を任せたわよ?」


その言葉に了解とばかりに大きく頷き、嘶くソラ。

母さんはそのソラのタテガミをひと撫でしてから離れる。


「じゃあ行ってくる」


そう言って家を背に歩き始めるソラ。

日はまだまだ登ったばかりだ、うまく行けば2〜3日で王都に辿り着けるだろう。


…………


村の中を通る途中、知った顔に呼び止められた。


「アークーッ!」


手を振りながらこちらに走ってくる小柄な少女。

栗色のショートカットでまだ幼さが残る顔をしているその少女は俺の幼馴染のセレナだった。


「はぁ、はぁ、やっと追いついた……あ、あれ?そんな旅支度して、何処に行くの?」


走って来た事で大分息を切らしていたセレナだったが、すぐに後ろの大荷物に気付たようで事情を聞いてくる。


「ちょっとな、大事な用でこれから王都にいかなきゃいけないんだ。セレナはどうしてここに?」


セレナは村長の娘、村全体が見渡せる小高い丘の上に家があるのだ。


「窓から、アークが見えて。それで……あ、会いたくなって……」


尻すぼみに声が小さくなっていくセレナ、最後の方は声が小さ過ぎてよく聞こえなかった。


「そうか、それは偶然だったな?んじゃ、先も長いし。俺行くわ」


そう言うと、空気を読んだのか再び歩き出すソラ。


「え、え、もう行っちゃうの?」


すると、突然慌て出すセレナ。


「すぐに帰って来るから、話はその時聞いてやるよ。だから、な?待っててくれって?」


その場しのぎに言った言葉だったのだがセレナは何故か頬を赤くしている。


「ふ、ふわっ、え、えへへ……なんか新婚さんみたいだよぅ……分かった!待ってるから!」


そう言うとピョンピョン飛び跳ねながら手を振り始めるセレナ。


「行ってらっしゃい!アーク!」


「おう、ちょっと行ってくるわ」


セレナに村の出口まで見送られ、ソラを駆る。


「さあ、ソラ!今日中にソレム大橋までは行くぞ!気張れよ!」


『ソレム大橋』アルディア王国の真ん中を通る大きな江河『ソレム川』中流域にある大きな橋の事、シオン村から王都へ行くにはソレム大橋を通るルートが1番の近道だった。


…………


それからソラを走らせることほぼ1日、日が真っ赤になる夕暮れ頃になってやっとソレム大橋のある町『ソレム市』に辿り着いた。モンスターに遭遇することも無く無事橋の下の町までこれたのだが、今日はここまでだな。

適当な宿を探し、部屋を取るとソラを馬屋に預け夕食を食べるため町に出る。

どうやらこの町は酒場ばっかりらしい、仕方がないのでその内の1つに抵当に入る。


「あっ、いらっしゃいませ~!好きなお席に座ってくださいね!」


扉を開けるとカランコロンいうベルの音と共に、元気な少女の声が響く、どうやらこの酒場の従業員の少女らしい。

酒場の中をよく見て見る。外からは見えにくかったが、中はそれなりに広く、テーブル席とカウンター席に分けられている。

カウンターの向こうは厨房になっていてコックの格好をしているおっさんが1人黙々と料理を作っている。

カウンター席の端に座ると、とりあえず適当に料理とビールを注文する。

この国では16からは成人とされており、昨日付で成人になった俺は堂々と酒の類が飲めるのだ。


「ビールお待ち」


すぐにビールだけ出てくる、キンキンに冷えていたそれは親に隠れて時々ビールを飲んでいただけの俺でもかなり美味と感じられるレベルの美味さだった。

まあ、こんなこと母さんにばれたらかなり反対するだろうが。

そんなことを考えているとコトッと料理の盛った皿が出される。

1番美味い物と頼んだのだが、どうやらここのオススメはステーキのようだ、香ばしい匂いが食欲をそそる。


「いただきま~す!」


一口食べる、美味い。

いい具合に焼かれた肉は口の中で蕩け、ソースもオリジナルの物を使っているのか、かなり美味い。

しばらく無心で口と手を動かし続け、すぐに皿はカラになった。


「けぷっ、美味かった」


そして食後のビール、ああ、至福の瞬間。

だが、そんな至福の瞬間は文字通りすぐに終わりを迎える。


「なぁ、いいだろ?これからちっとばかし俺と遊ぶだけでいいんだからよぉ」


「い、嫌です、やめてください……」


唐突に響く下品な声と先ほどの少女の消え入りそうな声。

何事かと後ろを振り向くとウェイトレスの少女がスキンヘッドのムキムキ大男に絡まれている。

装備品などからして、あの大男は傭兵か何からしい。おそらく酔っているのだろう、顔が真っ赤だ。

周りの客はその大男の姿に恐れをなしているようで、目を逸らしたり知らんぷりをしていたり。


「アリシア!」


コックのおっちゃんが厨房から飛び出してくる。

どうやらあの少女はアリシアという名前らしい。


「お父さん!」


「お客様、どうかアリシアは離してやってくだせぇ」


コックのその言葉に大男は拳で答える。吹き飛ばされたコックのおっちゃんはテーブルや椅子をなぎ倒しながら飛んで行き、止まると動かなくなる。どうやら気絶したようだ。


「お父さん!い、嫌!やだ!誰か助けて!」


アリシアもジタバタ暴れてはいるがいかんせん、体格差があり過ぎてなんの抵抗にもなっていない。

周りの客も何時の間にか店の外に逃げ出している。

その様子に一度ため息をつくと、席を立ち上がり外に出ようとしている大男に声を掛ける。


「なあ、そこまでにしないか?」


大男がアークを振り向く。


「あぁん?なんだぁ?てめぇ」


睨みながらドスの効いた声でそう凄んでくるがそれらを無視し、アリシアに話しかける。


「あー、今から助けるから安心しな」


ひどく投げやりな言葉だが、アリシアは藁にも縋る思いなのだろう、涙目でコクコク頷く。


「チッ!てめぇ!俺様を無視するたぁ、いい度胸じゃねぇか!」


そう言って空いている方の手で殴りかかってくる大男。

ただ力任せに突っ込んで来ているだけだ、この位なら。


ゴッ!!ガシャァァン!!


刹那、吹き飛んでいく大男。

店先のガラスを突き破ってなお勢いが衰えず通りの反対側まで吹き飛んだ大男はピクリとも動かなくなる。

アリシアは大男を吹き飛ばす直前に右手で抱きとめている。

おそらく、遠目に見ていた見物人達も、すぐ近くにいたアリシアも、吹き飛ばされた本人の大男でさえも何が起こったか分からなかっただろう。

まあ、ただ殴っただけなんだが。

あんな奴にやられるほど柔な鍛え方はされていない。

だが、それでも悪漢が退治されたという事だけは分かったようで、周りは一気に歓声に包まれる。


「うぉぉぉ!!なんだ今の!!」


「かっこいいぜ兄ちゃん!!」


そこかしこから賞賛の声を受ける、さっきは助けもしなかったくせに全くいいご身分だ。

周りの歓声は無視し、腕の中にいるアリシアの無事を聞く。


「怪我ないか?」


だがアリシアは俯いたまま動かない。


「……ました」


「ん?なんだって?」


「見つけました!私の王子様!」


そう言って首に手を回され抱きつかれる。


「え?は?」


「あ、あの!お名前を教えてくださいませんか!?」


「は、あ、アークだけど」


アリシアのあまりの勢いに戸惑う。


「アークさん……うん、かっこいいお名前です!私の事はアリシアって呼んでくださいね!アークさん!」


「ああ、よろしく。アリシア」


そんな事をしているとようやく町の警備隊が駆けつける。

どうやら周りにいた奴らにも警備隊を呼ぶぐらいはする脳があったらしい。


「すみません、事情聴取を行いたいのでご同行願えますか?」


警備隊の1人がこちらに駆け寄ってくる。


「違うんです!この人は私を助けてくれたんです!」


すかさず前に出て俺を庇おうとするアリシア。


「大丈夫、大体の事情は聞いていますから。そちらの方にはちょっとした確認を取りたいだけです」


どうやら状況確認をしたいらしい、そういう事ならと俺は警備隊の駐屯所まで行き状況の説明をし、何故かお礼として貰った決して少なくない謝礼金を持ってその日の内に宿に戻れたのだった。

駐屯所で聞いた話だとあの大男は逮捕、気絶していたコックのおっちゃんも無事らしい。

宿に着くとさっさと大浴場に行き、部屋に戻る。

部屋が真っ暗なのでサイドテーブルの上にあるランタンのような装置を手に取り、発動キーを唱える。


光よ(ライト)


それなりに高価な物なのでシオン村の様な田舎ではまだ見られないが、大きめの町になるとほとんどの機器にこのライトのような魔道具が使われている。

魔道具の利点は、あらかじめその道具自体に魔力が込めて作られており発動キーを唱えれば魔法を習っていない者でも簡単に使う事が出来る所だろう。

ポウッという音と共に明る過ぎない光が部屋を包む。


「なかなか濃い一日だったな……ふぁ~ぁぁ……寝るか……」


目を閉じるとすぐに意識が沈んでいくのを感じた。そして、夢を見た。

夢を見ていると自覚できている、いわゆる明晰夢という物だ。


「これは……」


自分がいるのは遥か上空、眼下にはアルディア王国が見える。

そしてすぐに異変に気付く。


「何だ、あれは……影?」


何か黒くて巨大な物が王国を覆い始める。


「あれが、闇なのか?」


先日聞いた妖精の警告を思い出す。そうしている間も闇は王国を覆い続け、物の数秒で王国は闇に包まれた。

そして各所から火の手が巻き起こり、王国の木々を、村を、大地を焼き尽くしていく。

まさに地獄絵と呼ぶに相応しい光景だった。


「これが……この国の未来なのか?酷すぎる……」


夢はそこで終わる、起きると既に日が昇り始めていた。


「最っ悪の寝覚め……」


先ほどの夢を思い出すとどうしても気分が落ちてしまう。

あの悪夢も、これから起こる事を俺に伝えたかったのだろうか……


「はぁ、そろそろ行かなきゃな……」


気分が落ちたからと止まっているわけにもいかない、すぐに支度をして宿を出る。

外に出ると朝霧が出ていたが、空の様子を見るに雨は降らないだろう。

ソラを馬屋から出し、乗る。


「さあ、出発だ。行こう」


ソラに声をかけると一声嘶き、ゆっくりと歩き出す。

朝霧の中を進むと町の門が見えて来た、だがその門の前に人影。


「アリシア?」


その人影はアリシアだった、こちらに気付くと小走りで駆け寄ってくる。

ソラから降りるとちょうどこっちにたどり着いたようだ。


「アークさん、もう行ってしまうんですか?」


「ん?ああ、今から出るとこ。それにしても、もしかして待ってたのか?」


コクッと頷くアリシア。


「昨日はバタバタしてたから、ちゃんとお礼を言えなかったので。本当に、あの時は助けてくださってありがとうございました」


そう言ってペコリと頭を下げるアリシア。


「ああいうのは見過ごせなかっただけだから、気にしないでくれ」


「それでもです。本当、もうダメかと思ったんですよ?」


あのときの事を思い出したのか背筋を震わせるアリシア。


「まあ女の子からすればトラウマ物だろうな」


そう言ってアリシアの頭を撫でてやる。

俺が怖い夢を見たときなどは決まって母さんが頭を撫でてくれていたのを思い出したのだ。


「へ?あ、はふぅ……」


最初は驚いていたようだがだんだん体から緊張が抜けていく。


「それにしても、ずっとあの酒場で働いていたんだろう?今までにはああいうことなかったのか?」


ふと疑問に思った事を聞いてみる。


「誘われたりする事はあったんですけど、あんなに強引なのは初めてで……」


「そうだったのか。まあ、ここの警備隊は優秀だろうし今後はこういう事もないだろうがね。でも、気を付けるんだぞ?」


「はい、分かりました」


「うん、いい返事だ。じゃあ、行くな」


そう言ってソラを歩かせ始める。


「あの!また会えますか!?」


「ああ、まだ帰りもあるんだ。その時に必ず立ち寄るよ」


アリシアの問いかけに前を向いたまま答えると後ろから待ってますねという声。


「あの子も、魔王が復活すれば危険にさらされる……絶対に阻止しなければいけないよな」


アリシアとの会話そして新たな決意が沈み気味だった心に響く。


「さあソラ、今日も頑張って行こうか」


ソラの嘶きと共に昇りゆく太陽を背にまた走り始めるのだった。




と言うわけで早くもハーレムメンバー候補が2人も登場です、どうだったでしょうか?

楽しんでもらえればいいんですが。

お気付きの方もいるかもしれませんが、このお話は基本1話1日のペースで進んで行きます、なるべく時系列は分かりやすく書くつもりですが分かりにくかったりしたら言ってください。

それでは!ご意見ご感想もお待ちしておりますので!また次回!

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