プロローグ 物語の始まり、そして妖精の警告
オリジナル作品初投稿ですが、楽しんでもらえると嬉しいです!
プロローグ 物語の始まり、そして妖精の警告
とある世界にある大陸『アイディール大陸』
剣と魔法が力の象徴とされ、幻想の生物達が今なお生きづくその神秘の世界に『アルディア王国』と言う国があった。
広大な土地や豊かな自然。まさに、国の名の由来ともなった理想郷とも称される程の美しい王国。
王国を収める『エドワード・フランマース・アルディア王』も、まさに国を背負うに相応しい優しさと勇気を備えた王であり、国民から多大な支持を受けていた。
そしてそんな王国の東の端、『始まりの森』と呼ばれる広大な森の近くにある小さな田舎の村『シオン村』で育った1人の青年が16の誕生日を迎えた日からこの物語は始まる。
…………
シオン村のさらに東の端、始まりの森の入り口にその青年の家はあった。
「アーク!お父さんから手紙よ!」
母さんの呼ぶ声が二階の俺の部屋まで聞こえて来た。
作りかけだった木の置物を机に置き、急いで下に降りる。
「分かった、今行くよ母さん」
下に降りると、今届いたのであろう郵便物の束を抱えた母さんの姿。
「 はい、これ」
渡された物は白い封筒に王国の紋章入りの郵便。
父さんから届く手紙の証しだ。
その場で封筒を開け中の手紙を読む。
「あ~あ、父さん、また帰ってこれないみたい」
「本当に?全く、あの人ったら。大切な息子の誕生日ぐらいお仕事休めばいいのに」
ブツブツ父さんへの文句を言っている母さんに、思わず苦笑いをする。
「しょうがないよ、王都の騎士団隊長なんてそう休める仕事でも無いでしょ?」
そう、俺の父親、ジンは王都の守護騎士団の隊長をしていた。
「それに、俺は父さんの仕事、誇りに思ってるし。それに母さんがいてくれるから寂しくは無いよ?」
その言葉に思わず涙目になる母親。
「まあ……ふふっ、アークも大人になったのね?」
「当たり前だよ、もう俺16だよ?」
「そうだったわね?じゃあ、ちょっと早いけどお誕生日会始めましょうか」
そう言って手紙の束を棚の上に置き、先ほど作り終わったのだろう、いい匂いがするご馳走達をテーブルに置き始める。
「ああ、母さん、手伝うよ」
棚から取り皿を数枚取り、テーブルに並べる。
「ありがとうね。それじゃ、早速食べましょう?料理は温かいうちに食べるものよ」
「そうだね。じゃあ、いただきま~す」
そうして始まる2人だけの夕食。
昔は父さんも一緒の家族全員での食事だったのだが、父さんが王都の騎士団長に就任してからはそんな機会も無くなってしまった。
寂しくないと言えば嘘になるが、そこはしっかりと割り切っているつもりだ。
温かくそして絶品の夕食を食べ終わり風呂にも入った後は、いつもの日課にしているベットに寝そべって窓から見える星を眺めていた。
「今日は星がよく見えるな」
窓から見える星空は、見ているだけで空に引き込まれそうになる程広大で、まさに心を奪われるような光景だった。
「もうすぐ今日も終わりか……」
もうすでに夜も更けている。そろそろ寝るかと目を閉じた時、異変は起きた。
「……ク…ま……ーク様……起きて……さい」
ふと、頭の中に響いてくる僅かなノイズと女性の声。
軽く驚いて部屋の中を見渡すがそこには誰もいない。
「……ーク様…アーク様」
なおも聞こえる謎の声。ノイズがだんだんと収まり、声がしっかりと届き始める。
「アーク様、お伝えしなければならないことがあります。どうか妖精の泉に来てください……」
そう伝えると急にその声は聞こえなくなる。
「妖精の泉?……気になるし、行ってみるか」
そうと決めると、迅速に行動を始めた。
寝巻きから普段着ている布地の服に着替え、念のために部屋の隅に立てかけてあった木彫りの剣を背負う。
父親が騎士団ということもあり自身も剣術には少し自信があった。
「母さんを起こさないようにしないとな……」
音を立てないように家を出る、母屋から少し離れた所にある馬小屋から一頭のメスの馬を連れ出すとそれに跨る。
小さい頃から一緒にいる親友の馬だ。
「ゴメンなソラ?こんな時間に、でも大事な用なんだ。悪いけど付き合ってもらうぞ?」
俺の言葉に小さく嘶くソラ、そして暗い森を月明かりを頼りに走り出す。
目指す場所は始まりの森に入ってすぐの所にある水深も膝あたりまでしかない小さな泉。
『妖精の泉』と呼ばれるそこは、昔旅人がその泉で妖精に出会ったという話があった。
ソラで走ること数分、妖精の泉に辿り着いた。
「着いたが、人影は……ん?あれは……」
月明かりを受けて煌めく水面、泉の真ん中に薄く光る女性がこちらに背を向けて立っている。
耳が尖っている、エルフか?
「いや、妖精……」
よく見ると背中から透明な羽が生えている。
「来てくださいましたか……」
妖精の女性が発した声は、間違いなく自室で頭に響いてきたあの声だった。
女性が振り向く。
「あ…な……たは……?」
思わず声が途切れ途切れになってしまう程その女性は美しかった。
芸術品のように整った顔立ち、白い肌、深い緑色の瞳。髪は烏の濡れ羽色とでもいうのだろうか?煌めくような黒髪をしていた。
「始めまして、私の名はティタニア。妖精の一族の者です」
「ど、どうも、アークです。人間です」
ティタニアの美しい瞳に見つめられてどもってしまう。
「ふふっ、存じ上げております」
そう優しげに笑ったティタニアは先ほどと一変した真剣な表情をして話を切り出す。
「今回貴方をお呼びしたのは警告をするためです」
「警告?なんのですか?」
思わずそう聞いてしまう。
「闇が……深い闇が迫りつつあります」
「闇……ですか?」
「そう、闇。魔王が復活しつつある……」
その言葉に絶句してしまう。
魔王、その言葉には聞き覚えがあった。
大昔、この国を壊滅寸前まで追い込んだ魔なる物どもの王、その闇には通常の攻撃も魔法も届かなかったという。
では何故魔王は消え去ったのか?この国が滅びの危機に瀕した時、人々の中から救世の英雄と呼ばれる男が現れたのだ。
その男は輝く銀髪を風に靡かせ、白銀のオーラを纏ったそれは美しい大剣を背負っていたらしい。
そしてその大剣は魔王の纏う闇を切り裂き、未来への希望を示した。
その後、英雄はフラリと何処かに姿を消したと言う話だ。
この国に生まれた者なら誰もが聞いたことがある有名な御伽噺だ。
「でも、それは御伽噺なんじゃ?……」
昔母親に語ってもらったことがある。
「いいえ、あの話は真実です。かつて起きた魔族との戦争、救世の英雄の誕生、それらは全て本当に起きた事です。私達妖精も人と共に魔族と戦い、そして種の絶滅寸前まで陥ってしまいました」
ティタニアの話ではそのせいで、この始まりの森に隠れ住むしかなくなってしまったらしい。
この森の何処かに妖精の国があると言う伝説があったのだが、どうやらそれも事実だったらしいな。
「分かりました、この話をこの国の王様に伝えればいいんですね?」
「はい、どうかお願いします」
「大丈夫です、父が王宮に勤めていますから」
「そうですか……それではそのように……忘れないでください、魔王の闇はもうすぐそこまで迫っています……私達妖精も…気付くのが遅過ぎた……」
少しずつ輪郭がぼやけていくティタニア。
「ま、待ってください!1つだけ教えてください!なんで、なんで俺なんですか!?」
その問いかけにティタニアは途切れ途切れになってきた声で答える。
「それ…は………なたが、えい……の…まつ……から……」
またノイズが起こりほとんど声が聞こえなかった。
「はぁ、全然分からない。なんで俺なんだろう?いや、それよりもこの事を早く国王様に伝えないと……あの人のいう事が事実なら、これから大変な事になる」
いつまでもそこに突っ立っていてもしょうがない。急いで家に戻ったが、今が深夜だという事を思い出しその日は眠りに着くことにした。
歯車は回り始めた。舞台の幕が上がり、役者が舞台に揃い始める。
まだ物語は始まったばかり……
どうだったでしょうか?まだプロローグですが興味を持ってもらえたら幸いです!
次の投稿は未定ですが出来るだけ早くに上げたいと思います!
設定等わかりにくい場合がありましたらご指摘お願いします!
それ以外でも感想等お待ちしてます!
ではでは!また次回!