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Parasitic on Love.  作者: Koto
7/7

二人の距離


綾ちゃんと付き合い始めてから一週間。

(いや、本当は付き合ってるのか不明だけど)そこそこ穏やかな日々を送ってる。綾ちゃんとは相変わらず頻繁に会うし、メールも電話もする。でもお互いお兄ちゃんのことには触れないでいた。前まではよく電話したらお兄ちゃんの話題で持ちきりだったのに、いまはお兄ちゃんのおの字もない。今日会ったこととか、今度はいつ会おうかとか、恋人っぽいことを話してるきがする。


いつでもいいよ、と。

そして今日も授業中に綾ちゃんとメール。綾ちゃんは講義の合間とか、単位足りてる授業とかによくメールをくれる。それは昔とかわらないけど、でも前よりは格段に増えたかも。嬉しい反面、やっぱり複雑だけど……。


それでも綾ちゃんがそばにいてくれることが何より嬉しいから。



授業の終了のチャイムが鳴り、ホームルームが始まる。それと同時に震えた携帯はやはり綾ちゃんからで、たった一言外で待ってる、って。

(え、うそっ)

あたしはホームルームが終わるなり急いで玄関にむかった。ちらほらと生徒が帰る中、女の子たちがキャーキャーって騒いでる。ああ遅かったか……。がっくり肩を落としたけどもう遅い。あたしは恐る恐る女の子たちの視線の先に目をやると、そこにはラフな格好に身を包んだ綾ちゃんがいた。


「あ、ごめんね。彼女来たから」


そう言ってにっこり笑ってあたしの手を取る。

ましろ!?と友達の驚く声が聞こえるけど聞こえないふり。あー、明日の質問攻めが怖いなぁ、なんてぼんやり考えながら、あたしは綾ちゃんに手を引かれて歩き出す。



「いきなりでびっくりしたよ」

「ん、ごめん。ましろに会いたくて」


ちょっとはにかみながら笑う綾ちゃんに、あたしは赤面してしまう。

綾ちゃんはこういうことサラッと言えるからすごいと思う。あたしはそんなことなかなか言えるタイプじゃないから。


「ね、ましろは?」

「え?」

「ましろは会いたかった?」

「っ!」


そ、そんなことわざわざ言わせなくてもっ!!

あたしは困った顔で綾ちゃんを見上げれば、綾ちゃんはウキウキした表情でどうなの?って囁く。意地悪だ、本当に意地悪っ!!!


「あ、」

「あ?」

「あいたかった、よ……?」


上目づかいになりながらもしどろもどろに答えれば、綾ちゃんはふーんって言って前を向いてしまった。あんな恥ずかしい思いしたのにふーんって!!!あたしは綾ちゃんに文句を言うために前に回り込めば、顔を赤くして眉を寄せる綾ちゃんがいた。


「あ、綾ちゃん……?」

「っ!!み、見るなっ」


綾ちゃんは戸惑ったようにあたしの目を大きな手で慌てて隠した。自分で聞いといて照れるなんて変なのっ!って思いながらも、少しでも照れてもらえたことが嬉しくて顔がほころぶ。


「綾ちゃん、可愛い」

「う、うるさい。ほら行くよ」


すたすた歩き出す綾ちゃんはさっきよりも早足で、あたしも一生懸命ついて行った。でも綾ちゃんは優しいからすぐに歩みを緩めてあたしに合わせてくれる。そんな綾ちゃんが大好きだなって思うよ。


「ねぇ、どこ行くの?」

「……家だよ」

「綾ちゃんの家!?うわぁ、初めてっ!!」


きゃあきゃあ言いながら喜べば、綾ちゃんはくすっと笑ってオレンジジュースもハーゲンダッツもあるよって。それにまたテンションが上がれば、綾ちゃんはよしよしって頭を撫でてくれた。



「ほら、ぼさっとしないの」

「綾ちゃんの家か~……。キレイかな?」

「さあどうでしょう」


それから5分くらい歩いた先に綾ちゃんの住むアパートがあった。外観はすごくお洒落かも。なんか広そうだし……。

さぁどうぞって言われて入ればやっぱり中も広くてきれい。必要最低限しか置かれていない家具は暖色系をうまく使って温かみのある部屋だったし、観葉植物とかもキレイに並べられていた。


「綾ちゃんの部屋キレイだね」


そう言ってひょこっと寝室を覗けば、そこには




「く、く………くまあああぁあぁ!!!!!」




思わず抱き着いたのはこの間あたしが喉から手が出るほど欲しいと思ったくまちゃん青バージョンちょいでかめ。それがなんでここに!!??


「ましろ喜ぶかなって。ほら、ここに来たらいつでも会えるよ?」

「いっぱい来てもいい??くまちゃん連れて会いにきたいっ!」

「いいよ、おいで」


そう言って綾ちゃんもベッドに座ってあたしの頭を撫でた。


「あ、あやちゃ「ましろ」っ」


にっこり笑っておいでと両手を広げる綾ちゃん。顔が熱くなるのがわかる。でも恐る恐る腕の中に納まれば、いいこ、と言って優しくキスをおでこにしてくれた。あれ以来綾ちゃんは唇にキスをしてくれない。


「い……っ」


けれど、それに反してあたしの首筋の見えるところぎりぎりにシルシをつけるの。毎回、それも同じ場所に。



「俺のだよ、ましろ」



ぎゅっと抱きしめた腕の力は、今日も強い。

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