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Parasitic on Love.  作者: Koto
3/7

到底勝てそうにない


時々、本当にこの家があたしの家なのかと一瞬疑問に思う時がある。

例えば、そう例えば今日見たいに我が家の住民以外の人がソファでくつろぎながらお母さんと楽しそうに会話して、帰ってきたあたしに気付いたお母さんと一緒におかえり、なんて言っちゃったりして。しかもおまけに自分の隣に座る様に催促したりなんかして(2人がけのソファを横に座るようにポンポン叩いてた)。

ここ、あたしの家ですよね?

我が家にすっかり馴染んで溶け込んでる綾ちゃんに苦笑しつつ、あたしはカバンを椅子に置き、催促する綾ちゃんの隣に腰をおろした。


「おかえり、ましろ」

「あ、うん。ただいま」


お母さんがにこにこ微笑みながら、相変わらず仲良しね、なんてほのぼの呟く。それに同調して綾ちゃんも仲良しだねー、とか言ってあたしにピタッとくっついた。うん、やめてほしい。


「おい、ましろ。なんか飲むか?」


お兄ちゃんが冷蔵庫の中をあさりながら聞く。お行儀の悪い兄だな、なんて思いつつ、オレンジジュース!と返せば、了解と返ってきた。

もはや家に帰ってきてオレンジジュースを飲むことは習慣化してるから飲まないと落ち着かない気もするほどあたしはオレンジジュースを崇拝している(ちょっと大げさ?)。


「あ。母さん、オレンジジュースねぇよ」

「あらやだ。買い忘れちゃった。ごめんね、ましろ」

「や、別にいいよ」


困ったように眉を下げるお母さんに苦笑する。いくら崇拝するほど好きでも我慢くらいできますよ。いつまでたっても子供扱いなんだよなぁ、なんて遠い目をしていると、綾ちゃんがねぇ、とあたしの肩を叩いた。


「なぁに?」

「じゃあ俺と買いにいこっか」

「...へ?」


急な申し出にポカンと口を開けていると、お母さんが嬉しそうに、お願いできる??と綾ちゃんにお伺いをたてていた。


「良いですよ。ほら、ましろ。行くぞ」

「あ、う、うん」

「孝仁はなんかいる?」

「...いや、いい」


綾ちゃんがあたしの手を掴んで立ち上がった。あたしは引きずられるように綾ちゃんに連れて行かれた。

繋がれた手が思いのほか大きいとか、あったかいとか、そんなことばかり頭の中をぐるぐるまわって一瞬言葉を詰まらせてしまう。

そんなあたしに知ってか知らずか、綾ちゃんはニヤニヤ笑って初々しいね、ってそう言って大きな手を離してしまった。ほっとしたような残念なようや気持ちが胸に残った。


「別に、初々しくなんかっ」

「はいはい。別に手繋いだって戸惑ったりしないもんねぇ」

「っ!」


くすくす笑う綾ちゃんにあたしはそっぽ向けば、綾ちゃんはごめんって、と謝ってあたしの頭を撫でた。

あたしがこういうことされるの慣れてなくて、すぐに赤面したりするのを知ってるから綾ちゃんは時折こうやってからかってくる。あたしとしてはドキドキしたりして赤面しても、ただ照れて、慣れなくてそうなってると思われてるから都合がいいけど。

でも複雑だなぁ。

だって本当は綾ちゃんが好きで、ドキドキして、こうやって赤面してるんだから。


「寒い...」


そう言って赤くなったほっぺを手で包めば、綾ちゃんはそうねって言って前を向いた。


綾ちゃんはいつもお兄ちゃんの前とかじゃあちょっと優しいお兄さん的な口調なのに、あたしと2人の時はちょっとお姉っぽい口調になる。

なんだか2人だけの秘密っぽくてあたしは好き。


「綾ちゃん、お兄ちゃんと何かあったの?」

「え、なんで?」

「え?だって何かあったからコンビニ誘ったんでしょ?」


キョトンとした顔で綾ちゃんを眺めると、綾ちゃんは笑って首をふった。


「今日はましろにいつものお礼、しようと思っただけ」

「お礼?」

「いつも何かあったら慰めてくれるでしょ?」


ありがとね、って綾ちゃんがキレイに笑った。思わずあたしの胸が不意を突かれた様にどきりと音を立てた。


ズルい。

本当にズルいよっ。

そうやってあたしの心を魅力して離さないんだから......。


あたしは慌ててうつむき、こくりと頷いた。だって今、きっと、今までにないくらい顔が赤いから。


「ハーゲンダッツ...」

「ん?」

「バニラが食べたい」


ぷっと、噴き出す声が聞こえた。綾ちゃんはちょっと笑って何個でも買ってあげるって。


精一杯誤魔化そうとしたらアイスおねだりってどんだけお子様なのよ。自分の言動にに肩をがっくりおとした。


「オレンジジュースは100%ね」

「はいはい、わかってるって。ましろってばいつもあそこのコンビニのあのオレンジジュースしか飲まないもんね」


その言葉に目を丸めた。

なんで綾ちゃん、知ってるの?


「あー。なんで知ってるのって顔ね」


こくこくと頷けば、綾ちゃんはいたずらに笑って顔をぐっと近づけた。


「いつも見てるから」


なーんてね。

そう言って歩先をく綾ちゃんに、あたしは到底勝てそうにないと思った。

でも、やっぱり綾ちゃんはズルいよ。


「綾ちゃんのストーカー!」

「何おぅっ?!」


余計好きになっちゃうじゃないか。

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