第六話
「なんでだよ。俺は、ふさわしいとは思えないぞ」
「ええ、ふさわしくはありませんが貴方にはお嬢様に会ってもらいます」
どうやら、俺に選択権は無いらしい。
がんばれば、こいつぐらいなら振りきれるかもしれないが、実力が分からないのでやめておこう。
まだ、死にたくはない。それに、メイドも一緒にいるし。
「で、あいつはもう結婚したのか?」
クロスは仰向けに寝そべって聞く。
「いえ」
「じゃー俺なんかが行ったらまずいんじゃねぇのかー?」
「お嬢様はもう、一生独り身です」
ヴェガは淡々と何度も繰り返した言葉のように言った。
そんなはずはない。確かに昔、こいつは言ったはずだ。
「お嬢様は無誰にも求められませんよ。その血筋と財産があったとしても」
クロスは鼻で笑った。
「じゃ、なんだよ……。俺を婚約者にするつもりか……?」
「いえ、貴方の様な屑で野蛮な人間、お嬢様が選んだとしても引き離しますよ」
散々な言われようだ。婚約者なわけ無いとは思っていたが、ここまで言われるとも思っていない。
しかし、このぐらいではクロスの心はおれなかった。
「じゃ、何のために俺は連れて行かれるんだ」
「お嬢様がもう、意味のない存在になってしまったので自由にしてあげようと」
そのあと、しばらく馬車に揺られ、見覚えのある屋敷が見えた。
「さぁ、着きましたよクロス」
クロスは馬車から降りる。リリーがクロスの先を歩き、ヴェガが後ろを歩いた。
そして、ドアの前まで行くとリリーがドアを開けた。
「どうぞ、お入りください。クロス」
昔のようなしゃべり方ではなく、標準語でリリーは言った。
クロスは軽く頷き中へ入る。
「ほんとに変わってないんだな……」
「ええ、変わるのは生き物だけですよ」
ヴェガがドアを閉めながら言う。
「こちらです」
ヴェガが案内するのは二階の部屋だった。
クロスは行ったことのない場所。ヴェガの後ろをついていく。
そして、他の扉とは見分けがつかないがどうやらここがシェーラの部屋らしい。
「入って……いいのか?」
「ええ、もう貴方達はただのシェーラとクロス、という関係ですから規制する理由がありません」
クロスはゆっくり扉を押した。
再び、彼らは出会い物語は始まる……。




