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婚約者の初恋を応援したら、なぜか王太子妃候補に戻されました

作者: 入河 珈一
掲載日:2026/05/30

応援しただけなのに、評価が上がりました。

 婚約者には初恋の人がいた。


 再会した二人の目を見れば、わたしが入る隙間などない。だからマリアは、静かに身を引く準備を始めた。


 ただし、社交界で突然婚約を解消すれば、相手の令嬢が傷つく。そこで噂の順番を整え、両家の面子を守り、王妃様へ事前報告を出した。


「君は怒らないのか」


 婚約者は戸惑っていた。


「怒るより、式次第の修正が先です」


 初恋の令嬢は泣いて礼を言った。わたしは祝福した。これで終わりのはずだった。


 翌日、王妃様に呼ばれた。


「マリア。あなたを王太子妃候補へ戻します」


「なぜですか」


「恋敵を潰さず、家同士を荒らさず、噂を制御し、式典予算まで削った。国政向きです」


 婚約者は初恋を選び、わたしは国を選ぶことになった。


 しばらくして、元婚約者の家は式典費の見積もりをわたしに頼みに来た。わたしは笑顔で王宮会計課を紹介した。


 王太子殿下は、執務机の向こうで言う。


「君は恋を諦めたのではなく、仕事を選んだのだな」


「はい。ですが、仕事のできる方との恋なら考えます」


 殿下は書類を一枚差し出した。


「では、まず私の予算案を見てほしい」


 悪くない求婚だった。

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