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魔導技師商人-魔道具を作って売って世界を旅します  作者: ふみぃ


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第一話

 

 金色に輝く広大な草原の中を、一台の馬車が一定の速度で走っている。


 御者台(ぎょしゃだい)では不満そうな顔をした男が、黒い短髪を()きながら操縦(そうじゅう)の綱を握りしめていた。


 荷台の屋根では一人少年が晴れた空のような天色(あまいろ)の髪を(なび)かせ、自らと同じ色をした晴れ渡る青空を見上げていた。


「あー、極上の昼寝日和(びより)……」


 両腕を天に向かって伸ばして上体の柔軟(じゅうなん)をすると、比較的柔らかい方の荷袋を枕代わりにして眠る体勢になる。


「寝るのは別に構わねえけどよ!用心棒(ようじんぼう)として乗せたんだから、いざって時はちゃんと働いてくれよ!」


「任せてくださーい」


 (やと)い主である御者(ぎょしゃ)は振り返りながら(さけ)ぶが、少年は(ほとん)ど眠ったような返事だけをすると(おだ)やかな睡眠へ突入してしまった。


 御者は大きな溜め息を吐きながら前へ向きなおる。


「格安だからって依頼したが、やっぱ失敗だったな……」


 後悔という感情を隠さずに出しながら、荷馬車を引く四足の竜に(つな)がれた綱を(むち)のようにしならせる。


「オラもっと速度出せ!日が暮れるまでに着かなかったら干し肉にしちまうぞ!」


 竜は返事をするように低く鳴くと、走る足をさらに急がせた。


 ———————


 眠っていた少年が何かが鼻に()れた感覚で目を覚ますと、綺麗な青空ではなく深い緑と焦げた茶色の天井が広がっていた。


「森の中に入ったんだ……」


 枝葉(えだは)の隙間から差す木漏(こも)れ日は僅かに赤みを帯びており、今が夕暮(ゆうぐ)れ時だという事を教えてくれている。


 身体を起こし上体を伸ばせば背骨が軽快な音を鳴らす。


「ふわぁ……、仮眠のつもりが結構寝ちゃったな」


 少年は腰から下げた水筒(すいとう)(うた)を外して(のど)(うるお)すと、屋根から御者を(のぞ)き込む。


「寝てる間に魔物に襲われたりしませんでしたかー?」


 少年が聞こえるようにやや大きな声で話しかけると、御者は大きく肩を跳ねさせた。


「……なんだ起きたのか、まったく」


 御者は深呼吸を繰り返して心臓の激しい鼓動(こどう)を落ち着かせてから、眉根(まゆね)を潜めて振り返る。


「珍しい事に一回も遭遇(そうぐう)してねえな、だがもうすぐ野盗が出る地域だからよ、準備はしといてくれよ?」


「了解、……ちゃんと効果は発揮してくれてるな、よし」


 少年は数ある首飾りの一つを握ると、秘かに微笑む。


「さて、もう一個の本実験もさせて貰おうかなっと」


 首飾りを服の内側にしまい、腰に巻いた革製の固定具から鉤型(かぎがた)の塊を手に取って前方に構える。


「人間相手に使うのは初めてだし、ちょっと威力(いりょく)弱めの方が良いかな」


 武器の構えを解き側面の突起を押すと、武器の下部から直方体の箱が滑り落ちる。


 中には様々な色をした輝く石が詰められており、少年をそれを掴み足に巻いた革製のホルダーにしまい、新たに取り出した別の箱を武器の下部に差し込む。


「属性弾かつ威力弱めのやつならまあ死にはしないでしょ」


 中指に()めていた指輪を外し武器の上部の前から滑らせるようにして装着すると、輪の内側に魔法陣が浮かび上がってから消え、中央に赤い光が浮かびあがる。


 最後に本体と細い(くさり)で繋がれた銀色の板を側面に(かざ)すと魔法陣が浮かび上がり、本体上部に青く光る戦が走る。


「安全装置も正常に作動してるし、装填時の突っ掛かりも無いな」


「さっきからなにやってんんだ?」


 一部始終を見ていた御者が、見知らぬ道具に疑問を口にする。


「もちろん戦闘の準備を」


 手の中で回転させ再び前方に構えると、当たり前という風に返答する。


「まあ見ててくださいって、貴方の事はちゃんと護りますから」


「頼むぞ本当に、大事なモン積んでんだからな」


「分かってますよ、あ、それよりも首飾りちゃんとつけてます?コレ」


 少年が服の内側から緑の石がはめ込まれた首飾りを取り出して見せると、御者の顔が微妙そうに歪む。


「お前、同じ首飾りってお前……、おそろいにしてるみたいになってるじゃねえかよ!」


「旅の仲間だし同じの着けてても良いと思いますけどね、あと竜くんもおそろいですよ」


「お前勝手にっ……!」


 御者が前へ向き直り竜を覗き込むと、まったく同じ首飾りが揺れていた。


 半ば逆切れのように綱を竜に打ち付け馬車をさらに加速させた瞬間、風を切り裂く音と共に木々の隙間(すきま)から飛来した矢が、御者の蟀谷(こめかみ)(せま)る。


 だが、その矢が到達する事はなく、半透明の壁に(はば)まれ(やじり)の先から砕け散った。


「な、なんだっ!?」


「盗賊から撃たれた矢ですね、それをくらいなら首飾りで防げるんで安心してください」


 少年は武器を構えながら周囲を警戒する、そこに先程までのどこかゆるい雰囲気はなく冷静な顔付をしていた。


「……このまま進んでいいんだな!」


「道は(ふさ)がせませんから、任せてください」


 余りの違いに困惑しながらも手綱(たづな)を握りしめる、どこか安心感があるのは確かだからだ。


「前方に五人、武器は剣が二人に弓が三人」


 言われて前方に目を()らすが、かろうじて人数が分かる程度であり、それぞれが何を持っているかなどは一切分からない。


(魔術で視力を強化してるのか?それともあの武器らしきモノに秘密が……)


「先生して道を開けさせます、(おどろ)いて手綱を離さないでくださいよ?」


「それはどういう……」


 聞き返そうとした直後、金属同士を打ち付け合ったような高い音に言葉を中断させられる。


 そして前方に居た賊の一人が後ろに倒れ込み藻掻(もが)き始めた。


「一発命中、これでどいて欲しいけど……」


 指輪の内側を覗き込むと、倒れ藻掻く賊とそれを見て慌てふためく賊が助け起こそうとしている。


「元気に動いてるし命に別状は無さそうだ、弓をもう一人潰せば撤退(てったい)するかな」


 未だに弓を構えている賊の肩を狙い、標準を合わせ指を引く。


 金属音と共に武器の先から再び青く輝く石が飛び出し、瞬く間に盗賊の肩に突き刺さり凍りつかせた。


「よし命中、連続でも照準(しょうじゅん)にズレ無し、中距離以上でもある程度なら減衰(げんすい)も無さそうだな」


 仲間を森へ引き摺って行く賊の姿を照準で見送り、ようやく構えを()いた。


「すげえなそりゃ、魔武器ってやつか?」


「まあ、そうですね」


「どこで手に入れたんだ?」


「手に入れたって言うか、自分で作ったんですよ」


「自分で……?お前さんもしかして魔導技師か」


「まあ趣味で作った奴ですけどねこれは」


 手に持った魔武器をいじり始める少年を一瞥(いちべつ)してから、御者は前へ向き直り考える。


(もしかしたらこいつはとんでもないやつなんじゃいか?)


「なあ、俺と……」


「売らないですよ、これは特に」


 (さえぎ)るように少年が断ると、御者は目を丸くさせる。


「待て、まだ何も言ってないだろう」


 焦って言葉を取り(つくろ)うが、少年は金色の瞳でただ見つめ返す。


「……悪い、つい思いついちまってよ」


 バツが悪そうに前を向き直り、謝罪を口にする御者。


「商人だし仕方ないとは思いますけど、まあ気にしないでください」


「ああ……」


 竜の足音、車輪、魔武器を手入れする音だけが響いていた、

 

————


 無事に危険地帯を抜けた一行。


 少年は魔武器に金属板を当て安全装置を掛けると、側面の突起を押して箱を取り出して箱に弾を二つ込めると再び中へ戻す。


 取り付けていた指輪を前に滑らせて外し中指へ戻し、腰の固定具へ本体を収納する。


「お前のそれ、名前はなんて言うんだ?」


「総称で言うと『銃』とか、あと『射出機』とも呼ばれてますね」


「銃か……、俺の周辺じゃ見た事無いが、普通に出回ってる物なのか?」


「うーん、出回ってはいるけど値段が高いとかで、剣とかみたいに気軽に手に入るもんではないですね」


「まあそりゃそうか、そんなもんが安く手に入っちゃ怖くてしょうがねえ」


 盗賊が銃を抱えて襲撃してくる想像をして御者は寒気を覚える。


「これみたいなのは多分無いですけどね」


 少年は屋根の上から馬車の中に入ると、荷物から本を取り出すと読み始める。


「魔力障壁で防げたり甲殻(こうかく)皮膚(ひふ)が分厚い相手だと効かないんですけどね、まあ出回って欲しくないってのは同感です」


「お前、名前はなんて言うんだ?」


「……依頼を受ける時に自己紹介しましたよね」


 流石におかしいと思ったのか、少年は御者の背中を半目で見つめる。


「期待してない奴の名前は覚えらんねえんだよ……」


「割と失礼ですねそれ……、まあいいですけど」


 少年は呆れながらも、一度本を閉じる。


「俺の名前はレイ=オブディシア、冒険者です、ちゃんと覚えて下さいね」



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