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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十章 動き出した魔神

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助ける方法

「そのようなことを仰られても、魔性のこんな状態を見るのは私も初めてのことですし……」


 ベッドに横たわる青麻の前で、青氷の魔神に縋るような瞳を向けられた闇は、困ったように眉尻を下げる。


 これまで様々な知識を学び、詰め込み、数多いる魔性の中で一、二を争う知識量を有していると自負のある闇ではあるが、それでも今の青麻の症状に、答えを導き出すことはできなかった。


 敢えて言うなら、人間のウイルス性の風邪に似たような症状──。


 だが魔性は風邪など引かないし、人間と同じ薬を投与したところで効果があるはずもない。ならばどうするか──どうしようもない……というのが今回闇の出した答えだ。


 決して青麻を見捨てたいわけではない。闇とて青麻は顔見知りであるため、できることなら助けたいと思っている。


 たとえ主人が違えども、お互いに側近同士という間柄。派閥的なものを考えれば大っぴらに仲良くはできないにしても、同じような苦労を共有し、愚痴りあったことは過去に数え切れないほどある。


 そんなかけがえのない相手を、このような原因不明の病で失うなんて冗談ではない。だが、解決方法を早急に見つけなければ、どんなに助けたいと願ったところで、どうしようもないのだ。


「一体どうして、こんなことに……」


 せめて、こうなった原因が分かれば何とかしようもあるかもしれない。


 そうは思うものの、青麻は既に意識が朦朧としていて話を聞ける状態ではないため、情報を得るのは難しそうだ。


 しかし、ほんの僅かなとっかかりでも良い。彼がこうなったきっかけのようなものでも分かれば──。ほんの些細な塵のようなものでも構わないから。


 それさえ分かれば何とかしようもあるかもしれないと、闇は青氷の魔神に尋ねる。


「何か……何かないのですか? 青氷の魔神殿。彼は貴方の配下なのでしょう? 彼が今までどこにいて、何をしていたかなど……少しぐらい情報はないのですか?」


 闇に問われ、ひたすら氷で青麻の頭を冷やすことに専念していた魔神が、考え込むような表情になった。


「そうは言われても……実のところ、余も最近では青麻を探していたぐらいであるし……」


「ちなみに、余のことは名前で呼べと以前言わなかったか?」という言葉は綺麗に無視して、闇は内心(この方は本当に使えないな……)などと、本人が知れば烈火のごとく怒りそうなことを考えていた。


 そんな時──。


 二人の背後からそっと近づき、青麻の姿を覗き込むようにして見たラズリが、途端に「あれ?」と声を出した。


「ラズリ殿、どうかなさいましたか?」


 すぐに気付いた闇が場所を開け、ラズリをベッドの側へと招き入れる。


「この女は──」

「黙ってください」


 言葉を発しようとした青氷の魔神を食い気味に黙らせると、闇は静かにラズリの次の言葉を待った。


 あのような秘密を持つ彼女なら、青麻殿の症状について、何か分かることがあるかもしれない……。


 僅かな期待を持ちつつ、けれど裏切られた時に落ち込まないよう、自制しながらラズリを見つめる。


 すると彼女は、おもむろに青麻の背中を指差し、こう言った。


「これって、さっきの女魔性に貼られていたものと同じじゃない? 色はなんだか、こっちの方が禍々しいっていうか、混ざり合って変な色になってるっていうか、ちょっと気持ち悪い感じがするけど……」


 言われてみれば、その通りで。


 青麻の熱に浮かされたような状態に慌てるばかりで、身体の方まで目をやっていなかった。


 とにかく少しでも熱を下げなければ。原因を取り除かなければと、そればかりで。


 改めて見てみると、なるほどラズリの言った通り、青麻の背中には氷依と同じような札が貼り付けられていて、青と黒のマダラ模様が札の内部で生き物のように蠢いていた。


「なんだ、これは……」


 大きく目を見開いて札を見つめる青氷の魔神。だが気持ちは分かる。闇も初めてこの札を見た時は、目を疑ったのだから。


「ラズリ殿、この札……剥がしていただけますか?」


 自分と青氷の魔神は札に触ることができないが、ラズリであれば可能だ。故に闇は彼女にそう頼んだのだが──。


 何故かラズリは、それに対し顔を青ざめさせると動きを止めた。


 









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