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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十章 動き出した魔神

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失礼な態度

 え……なに?


 と、ラズリが疑問に思う暇もなく、青氷の魔神は険しい表情そのままに口を開いた。


「おい、奏! 貴様のところの配下教育はどうなっている⁉︎」

「へえっ⁉︎」


 完全なる第三者として青氷の魔神と闇の話にただただ耳を傾けていた奏の口から、素頓狂な声が飛び出す。


 だがそれは、無理からぬことだった。青氷の魔神と闇の話に自分達は何の関係もないと傍観者を決め込んでいたのに、突然睨まれたばかりか、咎めるようなことを言われたのだから。


 二人の話を聞いていた限りでは、特にこれといって話を振られるような内容はなかったはずなのに、どうして突然巻き込まれたのか。


 それに、配下教育というものの内容だって、奏に聞かずとも闇に聞けば分かりそうなものなのに、何故そうしないのか。


 訳が分からず、ラズリは奏と闇とに交互に視線を走らせる。


 すると──闇はラズリに向かい、ほんの少し表情を緩めて微笑んだ後、未だ奏に向かって怖い顔をしている青氷の魔神の髪の毛を無造作に掴むと、力任せに思い切り引いた。


「いっ……たたたたたたたたっ!」


 なんの前触れもなく、いきなり髪の毛を引っ張られた魔神は、大声を上げて後ろへ仰け反る。


 そして、のけぞった拍子に自分の髪を掴んでいる闇が目に入ったのだろう。器用に身体を反転させて、髪を引っ張る闇の手を、上からしっかり押さえつけた。


「闇……そなた、余に何か恨みでもあるのか? 何故急に髪を引っ張る?」


 この世のものとは思えない美貌を歪めつつ、青氷の魔神がゆっくりと闇の手から、自分の髪を引き抜きながら問う。


「余は基本そなたには怒ったりなどしないつもりだが、あまりにも()()()が過ぎると、流石にそれも難しくなるぞ?」


 その言い方は先ほど彼が奏を問い詰めた時に比べ、格段に優しいものであったが──対する闇の返答は、その優しさに到底そぐわないものだった。


「私は別に『優しくしてください』などと貴方に頼んだ覚えはありませんし、そもそも今、貴方が私に髪を引っ張られた原因がご自身にあることを、正しくご理解なさっていますか?」

「え……?」


 そこでポカンとした表情をする青氷の魔神を見て、闇はやれやれとばかりに大きなため息を吐く。


「……あのですね、貴方は私と話している最中だったのですよ? なのにいきなりそれを無視して奏に話しかけにいくなど……失礼だと思わないのですか?」


 言われて、魔神も自分の犯した失礼な行動に気付いたのだろう。


 一瞬気まずげな表情をして、ぺこりと素直に頭を下げる。


「それについては……確かにそうだな。すまなかった」


 しかし、闇の口撃はそれだけで終わらなかった。


「分かっていただけたのなら良いのですが……貴方はどうも昔から、反論が難しい内容については話を聞かずに逃げるところがありますよね。魔神としてそれはどうなのかと、実は以前から思っておりました。先ほどのことについても……──」

「………………」


 クドクドと説教を始めた闇からそっと視線を外し、青氷の魔神が助けを求めるかのように、ラズリと奏を見つめてくる。


 けれど、ついさっき闇の追及から逃れるために責められかけた奏は当然助けるつもりなどなく。ラズリはラズリで魔神に何の感情も抱いてはいなかったものの、闇の話に口を出す勇気があるわけもなく。


 結果、二人の視線がそっと逸らされたことにより、青氷の魔神は絶望に突き落とされた。


「そんな……っ」

「人の話を聞いていますか?」

「あ……はい、すみません……」


 闇によるお説教は、もう暫く続きそうだった──。


 






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