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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十章 動き出した魔神

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青氷の魔神

「青氷の魔神ともあろうお方が、それぐらいの術に気づくことすらできないなんて……なんとも嘆かわしいことですね」


 大仰にため息を吐いて肩をすくめる闇の言葉に、青い髪の人物がぱっと奏から手を離す。


 彼によって宙へと足が浮いていた奏は、いきなり手が離されたことでドタッと音を立てて床に落ち、尻餅をついたらしく、「いてぇ!」と大声をあげた。


「奏、大丈夫?」


 慌てて奏に駆け寄りながら尋ねたラズリは、心配するような素振りをしつつ、彼が再び声を発することができるようになっていることよりも、突然現れた人物に意識を集中させてしまう。


 けれどそれは当然だろう。


 何故なら闇は青い髪の人物を『青氷の魔神』と呼んだのだから──。


 青氷の魔神? ということは、彼は世界に数人しかいないと言われる幻の存在の一人だということなの?


 どうしてそんな人物が、自分達の前へと姿を現したのだろうか。


 いや、どう見ても奏に用事があるようだったから、彼に会うためにここへ訪れたのかもしれない。


 そういえば、青麻がどうとか言っていたような……?


 そんな風に考えるラズリの思考を読んででもいるかのように、そこでタイミング良く闇がこう口にした。


「……で? 貴方のところの側近がどうかしたのですか?」

「んなことより闇! お前! よくも俺の声を封じやがったな⁉︎」


 青氷の魔神なる人物に質問をぶつける闇の声を遮り、奏が怒り心頭といった様子で闇の前へと立ちはだかる。しかしながら、闇はそれに一言「あの程度、ご自分で解除できると思いましたので」と返したのみで、奏を黙らせてしまった。


「うっ! うう……」


 何故かそれ以上言い返さない奏を見る限り、闇の言うとおりだったのだろう。けれど何らかの事情によって奏は自分で解除できず、結果、口パクせざるを得なかったのかもしれない。だから今は悔し気に唇を噛んで耐えている。そんなところだろうか。


 だったら奏を元に戻してくれたのは、青氷の魔神ということになる。


 ここに現れるなり即座に奏の胸ぐらを掴んだのには驚いたけど、闇にたった一言言われただけで一瞬のうちに彼の術を解除するなんて、やっぱり魔神は格が違うということなのだろうか。


 さすがと言うかなんというか、醸し出す雰囲気もすごく威圧的なものを感じるし、顔の造作だって青い髪の人物は闇といい勝負だ。そういった観点から言うと──残念ながら奏の見た目は能力通りというか、見た目通りの能力というか、そういうことになるんだろう。とはいえ、奏とて人間に比べれば奇跡的な美貌を有しているわけなのだが。


「ねぇ奏、ここは大人しく、二人の話を聞くことにしない?」


 拗ねたように口を閉じ、闇と青氷の魔神を睨みつけている奏をベッドへと促せば、彼は渋々ながらもうなずいてくれた。


 二人でベッドへと並んで腰を下ろし、それから緋色と青という対極的な色味を纏った二人の青年を無言で見つめる。


 これからあの二人は何を話すんだろう? 奏に対してはともかく、闇に対してはものすごく好意的な感じが見て取れたから、あの二人であればまずいことにはならないと思うけど。


 ドキドキしながら会話が始まるのを待っていると、闇が一瞬だけ奏へと視線を向けてから、ゆっくりと口を開くのが見えた。


「一つお聞きしたいのですが……貴方は、氷依という名の女魔性をご存知ですか?」









 

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