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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第三章 再出発

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毒キノコの見分け方

 街を出て、数日歩いた先にあった森の中。


 沢山のキノコを両腕いっぱいに抱えたラズリは、満面の笑みを浮かべていた。


「ラズリは本当に食いもんが好きだよなぁ」


 食べられそうな木の実を次から次へと毟り取りながら、奏が呆れたように呟く。


「だって、住んでた村では決まったものしか食べられなかったから、こんなにも色んな種類の食べ物があるなんて知らなかったんだもん」


 村の周りは森に囲まれていたものの、森へ行くことは基本禁じられていた為、ラズリは森で採れたものを殆ど口にしたことがなかった。


 唯一口にしたことがあるものといえば、村人であるウォルターが密やかに森から採ってきていたキノコぐらいで。


 あのキノコがもの凄く美味しくて大好きだったから、この森でキノコを見つけた時、嬉しくなって採りまくってしまったのだが──問題が一つあった。


「ねぇ奏、キノコって毒があったりするのよね? この中で、どれが安全なやつだか分かる?」


 調子にのって見つけたキノコをもれなく全部収穫したラズリだったが、キノコに関する知識が皆無だったのだ。


 それは当然キノコだけでなく、食べ物全般に関することだったけれど。


 そして最悪なことに、食事を必要としない奏も勿論、食の知識なんて持っている筈がなくて。


「う~ん……試しに俺が全種類食べてみても良いが、毒って……俺に効くのか?」


 なんて事を言い出す始末。


 たとえば毒キノコを食べたところで、人間なら死ぬかもしれない危険なものでも、魔性である奏には何の異常も顕れないかもしれないと。であれば、奏に毒味してもらっても、なんの意味もないわけで。


「だったらこの大量のキノコ、どうしたらいいの?」


 泣きそうな顔でラズリは問うが、奏はそれに肩を竦めることしかできない。


 闇ならきっとどれが危なくてどれが安全か分かるだろうけれど、彼は今、ここにはいないのだ。


「奏がもうちょっと頼りになれば良いのに……」


 だからラズリが思わずそう呟いてしまっても、仕方のないことだったろう。


 こんなにも沢山のキノコがあるのに、どれが安全か分からなければ、一つだって手をつけることはできないのだ。


 試しに食べた一つが猛毒を含んでいたら、そこで人生が終わってしまう。どんなにキノコが好きでも、流石にそんな危険を冒してまで食べる気にはなれず、ラズリはしょんぼりと下を向いた。


「じゃあさ、キノコは諦めて木の実でも食うか? 取り敢えず目についたやつは全部毟っておいたからさ」


 落ち込んだラズリを元気づけようと、奏が集めた木の実をバラバラとその場に広げる。


「そうね、木の実だったら危ないものはなさそうだし──」


 と手を伸ばしかけて、ラズリは途中で動きを止めた。


 奏が広げた木の実の中に、如何にもといった感じの毒々しい色のものが混ざっていたからだ。


 これは、さすがにヤバいんじゃ……。


「ラズリどうした?」


 動きを止めたラズリを不審に思ったらしい奏が首を傾げ、よりにもよって毒々しい色の木の実を摘み、ポイっと自分の口の中へと放り込む。


「あっ!」


 驚くラズリと見つめ合いながら、奏は眉間に皺を寄せつつそれを咀嚼し、やがてゴクリと飲み込んだ。


「そ、奏、大丈夫?」


 眉間に皺を寄せていたことから、奏が何かの違和感を覚えたのかと思い、心配したラズリだったが。


「やっぱ、味も何も特に感じるものはねぇな」


 返ってきたのは、そんな能天気とも思える言葉で。


 やっぱり魔性に食べ物に含まれる毒は害を及ぼさないのだということに安堵しつつも、心配した気持ちを返せとも思い、ラズリは持っていたキノコを、詰め込めるだけ奏の口に詰め込んだ。


ひゃふり(ラズリ)? ふゃひひゅりゅんびゃ(なにするんだ)!?」

「うるさい! ちょっと黙ってて!」


 目を白黒させている奏を放置し、ラズリはぷんぷんと肩を怒らせながら、森の奥へと足を進める。


 取り敢えず採ったキノコは全て奏に保管してもらって、闇に会えた時に鑑定してもらおうかな。毒のあるキノコは、全部奏に食べてもらえば良いし……。


 考え無しの奏の行いのせいで、いらぬ心配をさせられたのだから、意趣返しにそれぐらいしたって許されるだろう。


 腹が立ったとはいえ、手に持っていたキノコを全部奏の口に突っ込んだのはやり過ぎだった──勿体ないことをした──と思いつつ、ラズリは新たに見つけたキノコへと手を伸ばしたのだった。






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