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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
最終章 飛翔

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大きくなったピーちゃん

「奏……大丈夫?」


 ラズリの声と、目の前でひらひらと手を振られていることに気づいた奏は、ハッとして何度か瞬きをした。


「あ、ああ……大丈夫だ。あまりにも驚いたもんだから、ちょっと意識がどっか行ってた」

「そうだよね……。私がお札を使って無理やり闇を眠らせたなんてショックだったよね。でもあの時はそうするしかなくて……ごめんなさい」


 下から見上げるようにして謝ってくるが、謝る点を完全に間違えている。というか、ラズリが謝る必要は全くないのだが、彼女はそれに気付いていない。


 だったらここは利用させてもらうか。


 奏は内心でニヤリと笑うと、自分の頬をラズリの目の前へと差し出した。


「……え? 何?」


 当然ながら戸惑うラズリに、奏はちょいちょいと自分の頬をつついてみせる。


「俺に悪いと思ってるなら、お詫びに口づけてもらおうかな? と思ってさ。そしたら今回のことは不問にするし。……どうだ?」


 にやにやと笑いそうになる口元を引き締めながら、じっとラズリの反応を待つ。


 しかし──次の瞬間もたらされたのは、ラズリからの甘い口づけではなく、痛くも激しい衝撃だった。


「奏の馬鹿ああああああああ‼︎」


 バッチーン!


 思い切りよく叩かれて、奏は情けなくも「ブヘッ」と間抜けな声を出す羽目になったのである。


 ラズリの()()を甘く見た、彼の完全なる自業自得であった──。





※※※※





「私が眠っている間に、なんともまあ素敵な痕がついたものですね」


 ラズリの気持ちと体調がなんとか落ち着き、急ぎ闇を目覚めさせた後──奏の顔を見た闇は、開口一番そう言った。


「誰がやったのかは……まあ見当がつきますので詳しくは追究しないでおきますが……一度は振られかけて絶望のあまり自殺までしようとしたくせに、よくまあすぐにそのような痕ができるようなことを言ったりやったりする気になりますね」


 呆れを通り越して、もはや尊敬いたします……。


 と呟かれ、奏は憮然とした表情をする。


 奏とて好んで叩かれたわけではないが、調子に乗りすぎたせいで強烈な平手打ちをされたことは事実であるし、消滅しようと考えたことも嘘ではないから、反論できない。


 こいつ、やっぱり眠らせたままにしておけば良かったか?


 そんな危ない思考が脳裏をよぎるも、闇がいなければ友人が一人もいないという寂しい状況なのは確かであり、自分を命懸けで守ってくれた闇が大切な存在であるということに変わりはないため、仕方なく口を噤む。


 ここはさっさと話を逸らしたほうが得策だよな?


 と奏が考えたとき、うまい具合に闇が別の話題を口にした。


「ところで……その、ラズリ殿の肩に乗っている〝ピーちゃん“ですが、なんだか大きくなっていませんか?」


 言われて、改めてピーちゃんを凝視してみれば──なるほど、確かに一回り大きくなっている……ような気がする。


「俺は最初からそんなに気にしてなかったから特に気付かなかったが……ラズリ、そうなのか?」


 尋ねれば、彼女は軽く肩をすくめた。


「兄の能力を奪った時にね、なんかこう……黒い嫌なものも身体に流れ込んでくるのを感じたんだけど、そういった嫌なものは全部ピーちゃんが引き受けてくれて、気付いたらちょっと大きくなってたの」

「私から言わせてもらうと、とても〝ちょっと“という大きさではないような気がしますが……」


 もはやカラスとは呼べない大きさになっている()()を観察しながら、闇は数歩後ずさる。


 どうやら、近くから遠くから、右から左から──危険がないか、様々な角度から確認しているようだ。


 そんな闇を見て、ラズリは楽しげに笑い声を上げた。


「もう闇ったら。そんなに心配しなくても大丈夫だってば。ピーちゃんは私の味方。絶対に私を害したりしないよ」


 そう言いながら、ピーちゃんに頬擦りするラズリ。ピーちゃんも嬉しそうに『ピー』と声をあげて頬擦りし返している。


「ぐぬぅ……たかが鳥のくせに、許すまじ……」


 そんな二人──一人と一羽──を見つめながら、拳を握りしめる奏。


 彼一人、他の二人とは違うことを考えていたのだった──。



 









 

 

 


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