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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
最終章 飛翔

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決意

 ラズリがルーチェの頭にそっと両手を添えると、彼の身体から力の奔流のようなものが流れ込んでくるのを感じた。


 それは優しく暖かく、ささくれ立ったラズリの心を少しずつ癒していくようで──。


『ああ、あったかい……』


 あまりの心地良さに、思わず言葉が口をついて出た。しかし、力を奪われる側のルーチェはというと──。


「やめろ! やめろって言ってるだろ⁉︎ 僕の声が聞こえないのか? やめろぉぉぉぉ!」


 と──大声を張り上げながら両手を激しく振り回し、なんとかラズリの腕から逃れようと必死になってもがいていた。といっても、精神体であるラズリにルーチェが触れられるはずはなく、ただただ空を掻く結果となってしまっていたが。


 そんなルーチェを見つめながら、ラズリは両手に力を込める。


 この人から、能力を完全に奪ってしまわないと──。


 でなければ、また妙なことをするかもしれない。他者を魅了し、その人の人生を狂わせてしまうかもしれない。


 自分と血の繋がった双子の兄が、他人の人生を平気で踏みにじるような性格だったなんて──。


 それを知った時、ラズリは深い絶望を覚えた。


 初めて顔を見た時から、彼には違和感のようなものを感じていたけれど、それがなんなのかは分からなかった。でも今、その正体がようやく分かったような気がする。


 天使のような見た目の中に潜む、真っ黒な悪意──それが、違和感の正体だったのだ。


 思えば最初から、彼はどこかおかしかった。


 魔性のことを協力者と呼びながら、その実偉そうな態度で命令する。自分に同情する振りをしながら、裏でたくさんの人達を操り、村を焼き、自分を孤独へと追い込んだ。しかもそれを指摘した途端に激昂し、問答無用で魅了しようとしながら、天使としての能力を奪った。


 どう考えても、生き別れた妹のことを心配し、探し続けていた兄の態度ではない。むしろ妹を見つけたら上手く利用し、利用できないのならその能力を奪い取り、好きにしてしまおう──そんな思惑が透けて見え、天使のように整った兄の顔が、悪魔のようにさえ見えた。


 見た目が天使そのものに見える分、騙されて従ってしまう人が多いことを考えると──このまま放置するのは危険すぎる。


 しかも彼は、ミースヴァル島の最高権力者という地位までも持っているのだ。


 せめて魅了の能力だけでも奪っておかなければ、今後は村一つどころか、気に入らない者達を次々と排除していくかもしれない。いや、彼が今まで氷依や死灰栖といった魔性を従わせていたことを考えると、既に手遅れであるかもしれないが。


 どちらにしろ、兄の能力を奪うことができれば、今後の悲劇は、ある程度避けられる。


 ある程度──としか言うことができないのは、いくら能力を奪ったところで、見た目を変えることはできないからだ。たとえ無力な存在になったとしても、彼の美貌に惑わされる人達は、少なからず存在するだろうから。


 それでも今のままよりはかなりマシになるはずだし、奏だって、兄の能力を奪うために自分を犠牲にする必要はなくなるのだ。

 

 ミースヴァル島の人達のためにも、奏のためにも、自分が役にたつことができるのなら──。


 この先一生、兄に恨まれようともかまわない──とラズリは思った。


『奏……私、やり遂げてみせるわ』


 呟き、決意新たにラズリが大きく目を見開くと同時に、彼女の全身が眩しいぐらいに発光し、室内は大量の光に満たされた──。












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