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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
最終章 飛翔

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後悔

 魔性は魔性、天使は天使、人間は人間──。


 大多数の者達が、お互いに結ばれる相手は同種族同士であるべきと考えるなか、常に奏だけは「なんで皆そんなにも種族にこだわるんだ?」と考えていた。


 その辺りのことについては闇も他の者達と考えは同じようだったが、さすがというか何というか、自分の主が人間の少女に心を砕いても、それを口に出して諫めるようなことはしてこなかった。


 無論、そのようなことをしようものなら、奏は即、闇との主従関係を破棄していたに違いないが。


 天使の持つ〝魅了の能力”。


 個体によって強さは様々に違うらしいが、それは状況によっても変わるものなのだと耳にしたことがあった。


 人間は生きるか死ぬかの境目にいる時、三途の川と呼ばれる川の向こう側に、天使の姿を見るという。


 その時、生に対する思いが強い場合はほぼ何も感じることはないが、死に対する思いが強い場合──若しくはどう頑張っても逃れられない場合などは天使の姿がこれ以上ないほど魅力的に見え、まるで引き寄せられるかのように三途の川を渡ってしまうのだと。


 しかも、意思が弱い者ほど天使の魅了にかかりやすいとなれば、ミースヴァル島の人間達がそこに住む天使達をまるで神のように崇拝していたのも、無理からぬことだったろう。


 しかし逆に、魔力の強さと意思の強さが比例する魔性には、当然ながら天使の魅了はほぼ効果がなかった。否、魔使などの弱い魔性には効果があったようだが、魔神はもちろんのこと、魔人でさえもほぼ魅了されなかったため、戦いが長期化したのだ。


 そんな風に、魔性に対してはほぼ無意味ともいえる能力で、自分がラズリに魅了されたのは何が原因だったのか──と奏はこれまで何度も考えた。


 自分の意思が弱いとは思えないし、何より出会った時のラズリは年端もいかない子供であった。となれば当然、自分の意思で魅了を発動することなどできなかったはずだ。


 なのに自分は捕まった。


 それから以後は彼女の傍にいなくとも、たとえ意識を他へと向けていても、いつも心のどこかで彼女のことが気になった。気にしたくなどない、誰か一人に心を縛られるなど真っ平ごめんだ──そう思い、自分の心に抵抗したこともあったが、どんなに否定的な考えを抱いても、ラズリのことを考えないようにしても、ふとした時に思い出してしまう。


 そんなことが数え切れないほどあって、その矢先──ラズリの住む村に張っておいた自分の結界が壊される音が聞こえた。


 行こうと思えば、その時点ですぐにラズリのもとへと行くことができた。だがそうしなかったのは、自分のくだらない自尊心のためだ。


 後悔など、ほぼすることなく生きてきた奏が、少しばかりの後悔を抱くこと──それは間違いなく、この時すぐに動かなかったことだった。


 ラズリの村に結界を張り直す──あるいはラズリに会いに行くことを躊躇した結果、村は焼かれ、彼女の心は大きな傷を負うことになったのだ。


 結界が壊された時点ですぐさま奏がそれを張り直していたら、そんなことにはならなかっただろうに。

 

 意識的にラズリから気を逸らしていた奏は、彼女が心底からの叫び声を上げるまで、その身に起きた悲劇に気付かなかった。


 気付いて向かった時には、全てが終わっていた。


 そこで大人になったラズリと再会して、襲われた悲劇に挫けそうになりながらも気丈に振る舞う彼女の姿を目の当たりにした時──何とも言えない胸の高鳴りを感じた。同時に、愛しい──とも思った。


 無力で、一人では何もできない、身体の奥底に眩しいほどの輝きを秘めた人間の少女。


 縛られるのではない。むしろ、自分が彼女を自分に縛りつければいいのだと考えを転換した。その瞬間、急に心が解放されたような気がして、同時に奏はラズリへの遠慮をなくしたのだ。


 この女は俺のものだ。


 この先何があろうとも、絶対誰にも渡さない──。 


 


 

 




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