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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
最終章 飛翔

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運命の交わり

 奏の配下となってからというもの、闇は最初の言葉通りにひたすら献身を示してくれた。


 それこそ、主である奏本人が「やりすぎだ」と言いたくなってしまうほどに──。


「あのさ、あまりにもお前の態度が露骨だと、俺が赤闇の魔神だってバレるかもしれないだろ? だから、あんまりこう……〝主従関係”みたいな空気を出さないで欲しいんだけど」 


 奏の一番の願いは、〝何者にも縛られない自由を満喫して生きること”だ。

 

 闇に言われるがまま自分の能力を封印することで、元のような自由を取り戻すことは取り敢えずできた。が──それも束の間、ほぼ闇と一緒にいることと、同じような色彩を身に纏っていることから、『あいつも赤闇の魔神の配下なのか?』と他の魔性達から妙な関心を持たれ始めつつある。


 それに加えて問題なのが、闇の自分に対する丁寧すぎる態度だ。


 基本的に全ての相手に対し〝塩対応”というより〝極寒対応”の闇は、わざとらしいまでに表面上の敬意しか払わない。そんな闇が時間の許す限り自主的に一緒にいて、敬意を払う相手となると──いくら見た目的に今の奏が魔神に見えないとはいえ、怪しまれるのは当然といえば当然で。


「ですが、実際に私は貴方の配下であるわけですし……」


 大人しく言うことを聞いてくれればいいのに、存外に頭の固い闇は、意外にもそう言って難色を示す。


 しかし、奏とて自分の穏やかな生活のために、ここで引くわけにはいかなかった。


「だったら俺は、お前の主として命令する。たった今から俺とお前は〝主従”ではなく〝友人”だ。だから俺に対する態度をそのように改めろ!」

「そんな……! それはあまりにも……」

「反論は認めない。もしできないと言うのなら、俺達の主従関係は破棄する。……言っておくが、俺は本気だからな」


 できることなら、奏だってこんなことを言いたくはなかった。


 だが、そうしなければ自分の存在が露見してしまう可能性があるし、そうなったが最後、自由など確実に失われてしまうだろう。それに最悪、闇にも火の粉が降りかかってしまうかもしれないのだ。

 

 そのため心を鬼にし、滅多にしない真剣な眼差しを闇へと向ければ、流石に本気であることが伝わったのか、闇は黙って唇を噛んだ。


 正直な話、闇には本当に感謝している。彼の助言が無かったら、おそらく自分は今も赤闇の魔神を探す者達から逃げ続けていただろうから。けれど現状、闇の態度が原因で要らぬ疑いを持たれていることもまた事実なのだ。


 二度と自分の〝自由”が侵されないよう、対策はしなければならない。


「承知……しました」


 悩みに悩んだ末、闇は結局奏の申し出を受け入れた。


 彼の表情を見れば苦渋の決断であったことは明らかだったが、それ以上に、今更主従関係を破棄されるのが嫌だったのだろう。


 何せ奏は、闇曰く『初めて下心なく自分に近づいてきた相手』だったらしいから。


 それを聞いた時、(いや、俺はそもそも自分からお前に近づいた覚えはないんだけどな?)と奏は思わずにいられなかったが、言うと面倒なことになりそうだったため「まぁ俺は、そもそも自分以外に興味を持ったことなんて一度もないし?」と誤魔化しておいた。


 無論それは彼の心からの本心であり、嘘など一つもなかったのだが。


 そんな矢先──奏は、ある一人の少女を見つけた。


 最初は、どこからか妙な気配を感じる……そういった類の感覚的なものだったと思う。


 ふとした時に感じる、なのに気配が弱すぎて辿れない──大元に辿り着けない、そんな微弱な気配。


 イライラした──自分の心を乱す、それに。気にしたくもないのに、気づけばその気配を辿ろうとしている自分自身に。


 何度も何度も振り払おうとして、でもできず、かといって気配の元を探すのも自分が負けたような気がして嫌だった。けれど──。


 最終的に、奏は諦めた。


 抗い続けて疲弊するぐらいなら、腹を括って探してやろうと。そしてその気配の元を見つけた時に、報復をしてやればいいのだと。


 決意した後の奏の行動は早かった。ありとあらゆる手を尽くし、闇にも情報を探らせ、時にはこっそりと本来の能力を使ったりもした。


 そうして、ようやく見つけた一人の少女。


 まだ年端も行かない幼子だったその娘を一目見た瞬間、何故か奏の心は揺さぶられた。


 相手はただの子供であるというのに、まるで心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃を覚えたのだ。


「お前は……一体……」


 目が、離せなかった。娘の体内の奥深くにある、測り知れない輝きから。


 魅了された、捕まった、と観念せざるを得なかった。


 それが、奏とラズリの運命が交わった瞬間であったのだ──。









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