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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十二章 双子

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半天使

「ふ、ふざけるなあぁぁぁ‼︎」


 激しい怒りによって声を荒げたルーチェは、勢いよく赤い髪の魔性へと掴みかかった。


 だが、口元にうっすらと笑みを浮かべた男に軽やかな動きでもってかわされ、その手は虚しく空をつかむ。


「あれぇ? 怒っちゃった? ごめんなぁ」


 口では謝罪の言葉を述べつつ、全く謝罪の意思が伝わらない言い方をする男に、ルーチェは更に怒りを募らせる。


 何故、彼女はこんな男と一緒にいたのだろう。何故、この男はこうも彼女に関わるのか。


 こいつさえいなければ、もっと円滑にことを進めることができていたのに。それどころか、もっと早くに彼女を捕らえることさえ可能だっただろう。


 けれど、それらが全て──。


「お前のせいでぇぇぇ!」


 ルーチェが思わず怒りの感情を爆発させた瞬間、男の動きがピタリと止まった。


 まさか⁉︎


 何度となく覚えのある感覚に、ルーチェの口の端がニヤリと上がる。


 どうやら期せずして、男を魅了することに成功したようだ。ならば後は、札を貼り付けて弱らせるだけでことは済む。


「残念だったね。これで君も僕の駒の仲間入りだよ」


 途端に余裕を取り戻し、男に貼り付ける札を探そうと、ルーチェが床に目を向けた刹那──。 


 魔性の男は、瞬時にその場から移動していた。


「なっ! なんで……⁉︎」


 ルーチェによって魅了された者は、基本的に命令なしで動くことはできなくなる。つまり、命令していないのに動いた時点で、男は魅了されていなかったということだ。


 先ほど不自然に身体を強張らせたから、てっきり魅了にかけられたと思ったのに。


 チッと大きく舌打ちし、ルーチェは憎々しげに魔性の男を睨みつけた。


 本当に……行動から何から全て気に入らない。こんな男が自分の邪魔をしているなんて。


 しかし男はそれを気にする様子もなく、ペロリと舌を出して頭をかく。


「あっぶねー。流石の俺も、今のはちょっとマジで危なかったわ。ちょい油断しすぎたな……こっからは気ぃつけねえと」


 よし! と、わざとらしく気合を入れる姿に、腹が立って仕方がない。


 この男は、どうしてこうもこちらの神経を逆撫でしてくるのだろう。


 ギラギラした瞳で魔性の男を睨みつけるルーチェと、それとは逆に、些か楽しげな瞳をした男。


 二人の目が再び合いそうになった瞬間──絶妙に逸らされ、内心で歯噛みしたルーチェに、男は笑いながらこう言った。

 

「そもそもお前の魅了が魔性に効きにくいことは、青麻……じゃない、ミルドの時に分かってただろ? ミルドは人間に擬態するために魔力を抑えてたぶん効きが良かったかもしれねぇけど、俺は擬態なんてしてねぇし、お前みたいな半人半天使? っていう中途半端な存在でもないからな」


 分かりやすく言うと、純粋種?


 だから〝半端者”のお前に勝てるはずはないのだ、と言外から告げてくる。


 それに再度頭へ血を上らせたルーチェは、足元にあったものを思わず投げつけようとつかみ──動きを止めた。


「これは……」


 何とそれは、死灰栖の魔力を封じ込めたままの札だった。


 この札から死灰栖に少しでも魔力を戻そうとして──でもできなかった、黒い札。

 

 死灰栖の腕にまだ札が貼りついていたとき、彼の身体から際限なく奪われ続けていた魔力。その魔力が詰まった、二枚の札。


 札一枚分はミルドに貼り付けたせいで行方不明となってしまったが、少なくとも札ニ枚分の死灰栖の元の魔力は()()()()()()


「これを使えば、もしかして……?」


 ルーチェの瞳に、微かな希望の光が宿る。


 少し前までの自分なら、札に吸い取った魔力を魔性本体に返すことなど到底無理なことだった。けれど、札を介して死灰栖の魔力を奪っていた少女であれば──その能力を彼女自身から奪い取った〝今の自分”なら、同じことができるはずだった。


 死灰栖は既に自分の完全な傀儡となっている。だったら彼に魔力を戻したところで、今更脅威にはなり得ないだろう。それなら──!


 たとえ相打ちとなろうとも、厄介な赤い髪の男を消すことが優先だ。


 あの男以上の脅威は今の所ないのだし、たとえ死灰栖を失うことになろうとも、強くなった魅了の力で今後は以前より楽に魔性を従えさせられるだろうから。


 〝今”を何とかしなければ、未来などあり得ないのだから──。

 


 



 




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