表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十二章 双子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/163

平手打ち

 目の前で肩を落とす、悲痛な顔をした青年。


 彼とどう接すればいいのかを決めかね、ラズリは頭を悩ませていた。


 自分の顔を見るなり『僕の半身』などと宣った、少し頭のおかしい──と最初は思った──ルーチェと名乗った青年。


 けれど話を聞いてみると、彼は幼い頃に生き別れた妹がいると知ってから、ずっと自分を探し続けてくれていたらしい。そんなこと初耳であるし、そもそも彼はどうやって自分を妹だと結論付けたのだろうか。


 薄茶色の髪、同色の瞳は確かに自分の持つ色彩と同じものであり、そこを否定するつもりはない。けれど、たったそれだけの理由で〝兄妹”だと言われても、俄には信じ難いものがあるのも確かだ。それに──彼の見た目と自分の見た目は、おそろしいほどに似ていない。


 魔性もかくやというほどの美貌を持つ青年と、平凡たる容姿の自分。どう考えても血が繋がっているとは思えないのに、彼は妙な確信を得ているようで、心底嬉しそうな目を向けてくる。薄茶色の髪と瞳の持ち主なんて、この世界には数え切れないほど沢山いるのに、その中から彼はどうやって自分を妹だと判断したのか。


 それとも、彼が自分達を兄妹だと確信するに至った理由は、何か別のものなのだろうか?


 例えば、お互い魔性に騙されたことがあるからだとか──いや、自分が奏に騙されたことなど、彼は知らなかったはずだ。その証拠に、先ほど「あなたも騙されたの?」と聞いた時、驚いた顔をしていた。だから、この線は違う。


 ならば、他にどういった理由がある?


 考えようとして意識を集中させたラズリは、ふと引っ掛かりを覚えて目線を上げた。


「どうかしたのかい?」


 未だ悲痛な顔をしている青年は、傍から見れば魔性に騙された者同士、ラズリの心の痛みに寄り添おうとしているように見える。


 けれど先ほど灰色の魔性を下がらせた時の態度は、明らかに騙された者のそれではなかった。


 どちらかというと、魔性より彼の方が立場が上であるような──。


 しかも、彼が島全土を治める王だというならば、王宮騎士であるミルド達は、当然彼の命令によって動いていたということになる。つまり、自分を探しに村へとやって来たのも、その村に火を放って焼き払ったのも──。


「全て、あなたが命令したということになるわよね……?」

「え? 何が?」


 いきなり話の内容が変わったためか、青年の表情が若干とぼけたものへと変わる。


 けれどラズリの追及は止まらない。


「あなたが……村を?」


 大切な村を、大好きな人達を殺したのは誰なのか。それはミルド達王宮騎士だ。間違いない。それは分かっている。


 だけど彼らは、主君の命令でやらざるを得なかったと言っていた。


 ならば、そうするための命令を発したのは誰なのか。確かめずにはいられず、先ほどまで逃げようとしていたことが嘘のように、ラズリは少しずつ自分から青年へと近づいて行った。


「……ねえ、教えて? 私の住んでいた村に火をつけるように言ったのは……あなたなの?」


 纏う雰囲気を徐々に不穏なものへと変化させ、眇めた目で青年を見つめながら、ラズリはゆっくりと歩を進める。


 それに慌てたのは青年だ。


「ち、ちょっと落ち着こうよ。今僕達が話してたのって、お互い魔性に騙されて大変だったねって話じゃ──」

「そんなことどうでもいいわ!」


 大声で一喝され、さすがのルーチェもびくりと肩を震わせた。


「あ、あの、僕は……」

 

 それでも言葉を紡ごうとする彼に──。


 ラズリは力一杯平手打ちをお見舞いした。

 


 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ