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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十二章 双子

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三対一

 一方、一瞬の間にラズリを攫われてしまった奏達はというと──。


「離せ! 俺はラズリを助けに行くんだ! 俺が行かなくちゃいけねぇんだよ!」


 と騒ぎ、暴れまくる奏を押さえつけるのに、透耶と闇──透耶だけでは手に負えず、呼び出された──が四苦八苦していた。


「奏! どうか落ち着いてください! 何の策もなしに助けに行ってどうするというのです? あちらとて無策の状態でラズリ殿をさらったわけではないでしょうし、闇雲に向かったところで貴方まで危険に晒されるだけだと何故分からないのですか?」

「ウルセェ! 危険だろうがなんだろうが、俺はラズリを助けに行くんだ。俺はもう二度とあいつを一人にしないって決めたんだよ!」


 闇が冷静に諭しても、奏は一向に聞く耳を持たない。


 ただ「ラズリを助けに行く」の一点張りで、二人の拘束を解こうと暴れるだけだ。


「だから……少し落ち着けと言っているだろう⁉︎ 余も闇も、このままあの娘を見捨てるとは一言も言っていない。青麻の命が助かったのはあの娘のおかげであるし、余もそこまで薄情ではないつもりであるから……こら奏! 言うことを聞け!」

「策なんか練ってる間に、あいつに何かあったらどうするつもりだ? そしたら俺は自分で自分が許せねぇ! だから離せ! 離せぇぇぇ!」


 力の限り暴れる奏と、それを必死に抑える二人。


 そんな三人の構図をベッドの上から冷静に眺めながら、青麻はポツリと呟く。


「奏殿が助けに行ったところで、彼女は素直に戻ってくるのでしょうか……?」


 その言葉に、奏の動きがピタリと止まった。


「青麻……それは一体どういう意味だ? 事と次第によっちゃ許さねぇぞ」


 二人がかりで床に押さえ付けられながらも、奏は頭だけ起こして青麻を睨みつける。


「青麻、今はあまり此奴を──」


 刺激するな、と透耶は言いかけたのだが。


 当の本人である青麻は何事かを考えるかのように顎に手を当てると、ポツ、ポツとその時のことを思い出しながら言葉を紡いだ。


「あの時ラズリ殿は、『分かり合えない』と仰っていました。そして、『やっぱり違う』とも……」


 言われた言葉に、奏が即座に噛みつく。


「だから何だって言うんだよ⁉︎ 俺とあいつじゃそもそもの種族が違うんだから、分かり合えないのは当然じゃねぇか!」


 んなことも分からねぇのか⁉︎


 そんな奏の叫びに、青麻だけでなく闇も透耶もため息を溢す。


 自分以外の三人に全く同じ反応をされたことで、流石の奏も何か間違ったことを言ったと思ったのか、若干だが頭が冷えたようだった。


「な、何だよ……。俺の言ったこと、何か間違ってたとでも言うのかよ……」


 その問いに、三人は揃って大きく頷く。そうして、やや大人しくなった奏に対し、闇が言い聞かせるようにこう言った。


「私達とラズリ殿では確かに貴方の言う通り、そもそもの種族が違うのですから分かり合えないのは当然です。ですがそんなことを言っていたら、そもそも仲良くなることなど不可能ですし、表面上のみの浅い、騙し合いのような付き合い方しかできないでしょう?」


 どうですか? とばかりに詰め寄られ、奏は小さく何度も頷く。


「あ、ああ。確かに」

「ですが貴方は、ラズリ殿とはそれ以上の関係になることを望んでいたのではないのですか? ラズリ殿の寿命が尽きるまで、共にいたいと思っていたのでは?」

「それは……確かに、そうだけど……」


 だからこそ、もう一人にしないと決めていたのに。


 結局さらわれ、また彼女を一人にしてしまった。


「私が思うに、今のままでは例えラズリ殿を無事に取り戻したとしても、貴方が一緒にいることはできません。おそらく彼女から拒まれることでしょう」

「んなことあるわけ──」

「いや、あるぞ! 余もそう思う」


 突如として会話に参加してきた透耶に、奏は驚いた瞳を向ける。


「そうですね……。私も闇殿の意見に賛成です」


 ベッドの上にいる青麻まで。


「なんだよ、お前達。一体なんなんだよ……」


 三対一なうえ、口の上手い闇と青麻が相手方にいる以上、言い合いで勝てる要素はなく。


 奏は諦めたように全身から力を抜き、その場に寝転がったのだった。










 

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