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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十二章 双子

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おぞましい相手

「ああ……なるほど。()のことが気になるんだね? でも大丈夫。彼は決して僕達に危害を加えたりはしないよ」


 少女の視線の先にいたのは、先ほどからずっと黙って立ち尽くしている死灰栖だった。


 彼は今や完全にルーチェの支配下に置かれ、命令がなければ喋ることも動くこともできない生きる人形と成り果てている。魅了する際に抵抗しなければ──もしくは氷依のように途中で自らルーチェを受け入れていれば自我を残すこともできたのだが、死灰栖は最後まで全力で抵抗してきたため、自我を奪わざるを得なかった。

 

 こうなってしまうともう自発的に喋ることはできないし、動くことだって不可能だ。 


 ただただルーチェからの命令に従い、それに沿って動くだけの人形──それが今の死灰栖だった。

 

「あの人は……何? どうしてあなたと一緒にいるの?」


 どうして──と言われても、利用するために必要だった……とは、口が裂けても言えない。


 かといって、下手なことを言うと不要な警戒心を抱かせてしまう危険性もある。


 しばらく考えた後、ルーチェは死灰栖のことについて、こう説明することにした。


「彼は、僕の考えに賛同してくれた協力者なんだ」


 間違っても傀儡などと言って彼女を怯えさせてはいけないため、協力者と言って取り繕う。


 我ながら、上手い言い訳を思いついたものだ。これなら彼女も素直に聞き入れるに違いない。


 そう思っていたのだけれど、彼女にとってその説明は、どうやら悪手であったらしい。それを聞くなり更に二、三歩、後方へ下がられ、距離を取られた。


「えっ……待って、なんで⁉︎ どうして僕から距離を取るのさ?」


 焦ったルーチェは慌てて前へ踏み出そうとするも、少女が明らかに怯えた表情をするのを見て、足を止める。


「僕達は確かに初対面かもしれないけれど、それでも双子の兄妹であることは間違いないんだよ? なのにどうして歩み寄ってくれないんだい?」


 ここからでは流石に距離が遠すぎて、彼女へと手を伸ばすことができない。


 死灰栖に命じれば簡単なことは分かっていたが、今の状況でそれをするほどルーチェは頭が悪くもなかった。


 この場所へ現れた当時より、かなり離れた場所へと移動した少女は、困惑も露わに叫ぶ。


「無理……無理よ! いくら兄妹だって言われても、いきなりそんなこと信じられるわけがないし、それに……」


 一度そこで言葉を切り、少女は再び死灰栖へと目を向ける。


 まさか、二人の間に何かあったのか? とルーチェが思う間もなく、彼女は次の言葉を放った。


「それにその人は、私の身体の中に妙な力を仕込んでいたのよ? そんな気持ちの悪いことをされた相手が協力者として側にいるなんて……私とあなたがたとえ本当の兄妹だったとしても、おぞましくて近寄りたくもないわ」

「なっ……!」


 驚愕の事実に、ルーチェは思わず言葉を失う。


 まさか死灰栖が彼女に過去そんなことをしていたとは思わなかった。と同時に、彼女がそれに気づいていたことにも驚きだ。


 たとえ体内が魔性に侵されていたとしても、余程そういったことが苦手な魔性のしたことでなければ、本人にバレることはまずないはずなのに。


「死灰栖、貴様! 彼女の言ったことは本当なのか?」


 黄金色に煌く瞳で睨むように問い詰めれば、死灰栖は無表情のままコクリと首を縦に振る。


「あの娘は幼い頃、とても不幸だった。毎日毎日、生きているのが不思議なぐらいな目に遭わされ、それでも懸命に生きていた。だから……力を仕込んで遊ぶには最適な玩具だと思った。それだけだ」

「それだけって……」


 


 





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