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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十一章 譲れないもの

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新しい能力

 両目に全神経を集中させる。


 本来なら目を開けた状態でやらなければいけないらしいが、ラズリはまだ目を開けたまま意識を集中させるのが難しいため、ギリギリまで瞼を閉じたまま意識を集中させていく。


「そう……そうだ。いい感じだぞ」


 外から見ていてラズリの集中している様子が分かるのか、奏が優しく声をかけてくれる。


「もう少し……もう少しだ。目を開けたら『言うことを聞け』と札に向かって念じればいい」


 そんな命令口調では言えない──と思うものの、今はただ意識を集中することだけを考え、ラズリは雑念を追い払う。


 目に集中、集中、集中、集中──。


「今だ、目を開けろ!」


『お願い、私に応えて──‼︎』


 奏の言葉と共に目を開き、その時頭に浮かんだ言葉を、叫ぶように口にする。


 しかし、札はすぐには反応を示さなかった。


 なんの反応も示さなかったわけではない。水色の模様が札の中で渦を巻き、ぐるぐると回転をし始めた。これはこれで成功と思ってもいいのかもしれない。


 だが、奏の求める反応とは違う。だから、これではない。


 自分達が求めている反応は、これとは違うものなのだ。


「やっぱり、私なんかじゃ……」


 諦めかけて、ラズリは札から目を逸らそうとする。


 刹那、鋭い奏の声が飛んだ。


「ラズリ、そのままもう一度集中しろ!」

「は、はい!」


 思わず丁寧な返事をして、目に〝これでもか”というほどに力を込める。


 正直「集中した」というより「目力を強くした」という方が正しい。


 それなのに今度は、明らかに札の中の様子が変わった。


 札の中に閉じ込められていた水色の模様が表面へと浮き上がり、外へ出てこようとしている。


 自分の仕事はそれを手助けし、出てきた魔力をピーちゃんのような鳥の姿に変えることだ。


『おいで……』


 無意識に、声が漏れていた。


『おいで……。そして、私の声に応えて……』


 完全に無意識だった。


 札の中から必死に抜け出そうとしている魔力を見ていたら、勝手に口から漏れていた言葉。


 けれどそれは、大いに役立ったらしい。


 気づけばその声に誘発されるかのように水色の模様は全て綺麗に札の中から抜け出し、オオルリの姿を形どっていた。


「おおっ! すごいな……」


 少し離れた場所で透耶が感嘆の声を上げ、ラズリの傍にいた奏も、満足気な笑みを浮かべる。


「よし……後はその鳥を青麻にぶつければ終了だ」

「分かった」


 頷き、ラズリが改めてオオルリに命じようとした瞬間──。


「ち、ちょっと待て!」


 透耶から「待った」”がかかった。


「あの……その……だな、本当にそれを青麻にぶつけても大丈夫なのか? 青麻は大事な余の側近であるからして、万が一のことがあっては非常に困ったことになるのだが……」


 彼の不安がる気持ちは、ラズリにも手に取るようによく分かる。


 何故ならラズリも、たとえ奏の言ったこととはいえ、少なからず不安を覚えていたからだ。


 札から取り出した女魔性の魔力を、別の魔性に注入するなんて──下手したら、青麻が宿屋に現れたばかりの状態にならないだろうか? また苦しむことになりはしないだろうか? と。


 しかも今度は、札を剥がした時とは違い、彼が苦しむ羽目になっても何もしてあげることができないのだ。


 自分の身体から異物であった魔性の魔力を排出することはできても、魔性の身体から本人のものとは違う魔力を排出するなんてこと、ラズリは絶対にできるわけがないと思った。


「けどこのままじゃ、青麻は一生目覚めないかもしれないぞ? それはそれで困るんじゃねえのか?」

「そ……れは、そうなの……だが」


 腕を組んだ奏が横目で見つつ問い掛ければ、透耶は言葉に詰まってしまう。


「だ、だが! 目覚めない〝かも”しれないことと、目覚めなくなることは圧倒的に違いが──」

「ラズリ、やれ」


 透耶の言葉をぶった切って下した奏の言葉に──。


「ご、ごめんなさい!」


 ラズリは透耶に謝りながらも従うことしかできなかった。




 



 

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