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平凡な私のどこに、奪い合う価値があるのでしょうか?  作者: 迦陵れん
第十一章 譲れないもの

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小気味良い音

 室内にいる全員の視線が集められる中、ラズリは今度こそ青麻に貼り付けられていた札を剥がした。


 途端に彼を覆っていた黒い靄が札の中へと吸い込まれ、刹那、青麻の身体が苦しみから解放されたかのように力をなくし、ベッドへと沈み込む。


「青麻⁉︎ おい、青麻!」


 魔性が意識を失うなどありえないことから、青氷の魔神は不安になって名前を呼び、青麻の肩を揺さぶるが、彼の目は開かない。


 それを見て札を剥がした張本人であるラズリも不安になり、思わず手の中にある札を見ようとするも──青氷の魔神に恐ろしい目で射竦められ、全身が凍りついたかのように動けなくなった。


「……おい、本当に大丈夫なのであろうな?」


 青麻からラズリへと視線を移した魔神が、ゆっくりと近付いてくる。


 大丈夫かどうかなんて、正直なところラズリには分からなかった。


 何故なら自分は、奏と闇に言われた通りに札を剥がしただけなのだから。


 ただ、札を剥がしても青麻の姿は女魔性のように消滅しなかったことから、その行為自体は成功したのだと思っていた。少なくとも、魔力切れによる消滅だけは避けられたのだと──。


 なのに、青氷の魔神の、この反応。


 これ以上を求められても、どうしようもできないし、しようがない。それともまさか、彼の側近が目を覚ますところまで請け負えとでも言うのだろうか。そんなこと、どう考えても不可能なのに。


 自分はただの人間であって、魔性のように不可思議な能力など何も持ってはいないのだ。そこを考慮して欲しい。


「わ……たし……」


 それでも、何か口にしなければ──とラズリが言葉を発しようとした刹那。不意に姿を現した奏が、小気味良い音を立てて青氷の魔神の頭をぶっ叩いた!


 スパーン‼︎


 なんとも気持ちの良い音が宿屋の室内に響き渡る。が、叩かれた本人は無論、それどころではなかった。


「いっ……つつ! 誰だっ⁉︎ 貴様……そ、奏! 貴様、一体全体誰の許可を得て余の頭を叩いたのだ⁉︎」


 上から下まで全身青色づくめの魔神が、顔だけを怒りによって真っ赤に染め上げ、奏にくってかかる。だが、肝心の奏はどこ吹く風。鬼のような形相の魔神からラズリを庇うようにして立ち、わざとらしく顎に人差し指をあて、可愛らしく──実際は、まったく可愛らしくなどないが──小首を傾げて見せる。


「え~? 透耶(とうや)が俺の可愛いラズリを虐めようとしてたから、お仕置きしただけなんですけどぉ?」


 どうやら微妙に声の高さまで変えているようで、はっきり言って気持ち悪い。というか、相手を揶揄っているとしか思えない。


 そんな奏の態度は、当然ながら青氷の魔神の怒りという火に油を注いでしまったようで。


「っ……もう許さん! 貴様の態度は常々不快だと思っていたが、今日という今日は絶対に許さぬ!」


 と、指までさされて宣言されてしまった。


「ちょ、ちょっと奏……どうするの?」


 まさか奏が自分を庇ってくれたせいでこんなことになるなんて──と、ラズリは顔を青ざめさせながら奏の服の裾をつかむ。


 こんなことなら、札を剥がさなければ良かった。いくら二人に頼まれたとはいえ、やっぱり剥がすべきじゃなかった。


 ラズリがそう後悔し始めた時──。


「いてててててっ! いてっ! やめろ、やめぬか!」


 青氷の魔神──透耶の痛がる声が、突如として室内に響いた。














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