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【書籍化、コミカライズ】虐げられた秀才令嬢と隣国の腹黒研究者様の甘やかな薬草実験室  作者: 琴乃葉
第1章

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冬の始まりと風邪予防1

本日二回目の投稿です


 私がカニスタ国にきて一ヶ月、つまり侯爵邸にお世話になって一ヶ月が経つ。


 ナトゥリ侯爵家はアシュレン様のお兄様が継いでいて、本宅に侯爵夫人と娘と室長の四人で暮らしている。初日にご挨拶を終え、私は今、アシュレン様の住む別棟で一緒に暮らしている。


 とはいえ、仕事から帰ると決まって侯爵夫妻の娘のカリンが私を待っていて、本を読んでとせがんでくる。五歳のお喋りは尽きることなく、時には侯爵夫人も加わりなかなか賑やかだ。



 

 冬も本格的になり、今日あたり初雪が降りそうだなと曇天を見上げる私の前で、アシュレン様は食後のお茶を口にする。


「カニスタ国でも雪は降りますか?」

「滅多に降らないな。ジルギスタ国より南にあるので寒さは幾分マシだと思うが、薪を多めに用意させよう」

「ありがとうございます」


 アシュレン様の胸で大泣きしたその日こそ恥ずかしく、まともに顔も見られなかったけれど、今は普通に一緒に朝食を摂っている。そして、カリンに懐かれ私はまだ侯爵邸から引っ越さずにいた。


「そろそろ行くか」


 壁の時計はいつもの出勤時間。私達は席を立ち職場へと向かうことに。



「おはようございますフローラ」

「おはようございます、アシュレン様、ライラ。今日は何を作るの?」


 フローラが目を輝かせ駆け寄ってくる。とりあえず私のレシピを片っ端から作ろうということになり、この一ヶ月、一日に数種類の薬の調薬を続けている。


「そうですね、では腹痛の薬と霜焼けの薬はどうでしょう」

「あぁ! それはいいわ。じゃ、早速レシピを書いて」

「はい」


 自分の席に座ると引き出しからペンやインク、紙を取り出す。そこに必要な薬草と工程、注意点を書いて行く。


「ライラは農薬も作れるのよね」

「はい。今は冬ですので春になったら虫除けや、肥料を作ろうかと思っています」


 フローラは待ちきれないとばかりに私の手元を覗き込んでくる。ティックの姿は見えないけれど、きっと実験室で準備をしているんでしょう。


「フローラ、調薬はティックと二人でしてくれるか? 俺は今までに作った薬の感想を聞きに騎士団に行く、ライラもついてきてくれ」

「はい」


 効果が分かりやすく、使用頻度の高い、傷、打ち身、捻挫、火傷の薬から優先して作っていて、それらの大半は騎士団に届けられている。実際に使っている人の感想を聞く機会なんて今までなかったから楽しみだ。

 ちなみに室長は、春先に流行る病気の新薬作りに忙しいようで、実験室の隅に陣取り渋い顔をしている。


 騎士団は王城の西の端。東の端にある研究室からは一番遠い場所にある。マフラーをぐるぐる巻いて、手袋にコートの重装備の私に対してアシュレン様はコート一枚。


「寒くないですか?」

「大丈夫だ、と言いたいところだが寒い。マフラー、持って来れば良かった」


 ただ、忘れただけだった。

 一ヶ月一緒にいて分かったのだけれど、アシュレン様は少し抜けているところがある。クールな顔と腹黒からは想像できないけれど。


「私のマフラーを貸してあげます」

「いや、それじゃライラが寒いだろう」

「コートの襟を立てれば平気ですよ。はい」


 するりとマフラーを解き差し出すと、アシュレン様は少し戸惑いながら受け取った。オレンジ色のマフラーはアシュレン様らしくないけれど、ま、いいでしょう。


「なぁ、ライラ、香水を使っているのか?」

「いいえ、調薬の邪魔になるから使っていません」


 どうしてそんなこと聞くのかと、隣を見上げればアシュレンは口元を手で覆っている。


「どうしたのですか? 耳まで赤いですわよ」


 そんなに寒いのか、と背伸びしてマフラーを鼻先まで上げてあげる。

 するとどうしたのでしょう。さっきより顔が赤くなってしまった。


「ライラ、これは無自覚か打算か?」

「? 何のことですか? あっ、向こうに見えるのが騎士団の方々?」


 開けた平地に幾人もの騎士達がいて、それぞれに剣を振っている。そのうちの一人が私達に気づいて、手を振りながら走り寄ってきた。


「アシュレン、久しぶりだな。そちらが噂の恋人か」

「なっっ」


 こいつは知り合いにまで私を恋人と紹介しているのかと睨みつければ、勢いよく首を振る。


「マーク、お前にはきちんと説明したはずだ。研究室にスカウトしたライラ・ウィルバス子爵令嬢。ライラ、マーク・ロドリン、学生時代からの悪友だ」


 ライトブラウンの髪に綺麗な翡翠色の瞳の騎士は、胸に手を当て紳士の礼をしてくれた。なので、私もカーテシーでご挨拶。


「初めまして、ライラと申します」

「マークだ。敬称はいらないよ。アシュレンと一緒に住んでいるんだろう」

「居候です」


 引き攣る頬でにこりと微笑めば、マークはクツクツと笑いながら肩を揺らす。こちらも中々いい性格しているわ。


「道のりは長そうだな。アシュレン、今自由練習時間なんだ、相手をしてくれ」


 そう言うとマーク様は剣をポンとアシュレン様に投げる。


「アシュレン様、剣術ができるんですか?」

「それなりに。ちょっと行ってくるから持っていてくれ」


 アシュレン様は私にコートとマフラーを預けると、マーク様を追うように走って行く。なんだろう、子犬みたいだ、あの腹黒が。

お読みくださりありがとうございます。暫くニ〜三話のペースで投稿します!


興味を持って下さった方、是非ブックマークお願いします!ブクマが凄い勢いで増えて嬉しいです。

☆、いいねが増える度に励まされています。ありがとうございます。

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