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3 望まれた世界

真っ黒に染まった画面を呆然と見つめながら震える指でボタンを押してみる。

しかし、どのボタンを押しても反応はなく画面は消えたままうんともすんとも言わない。

数秒前まで鳴り響いていた音がまるで嘘のように静まり返り、その代わりにたくさんの蝉達が耳障りな程に鳴き続けている。


「壊れてる…のか?」



幻覚、幻聴といった言葉が頭の中に浮かぶ。

俺…疲れてんのかな?

だって…そんな事ありえないもんな。


なにかをふりはらうように左右に頭を強く振り浮かんできた言葉や過去の映像を無理やり打ち消した。

もう行こう…

まるで悪い夢を見ている気分だ。


だけどそれはもしかしたら俺を呼んでいた彼女の…

いや、彼女達の声だったのかもしれない。


「はぁ…」


大きくため息をつき、元の神社に戻ろうと顔をあげ振り返った時、そこには不思議な光景が広がっていた。


いつの間にか空に落ちた夕暮れでいつもにまして赤く染まっている見慣れた大きな鳥居。

左右に置かれた石でできた2匹の狛犬と足元に綺麗にひかれている石の道。

それはついさっきまで見ていた景色。

神社の入口。


おかしいよな?


俺はさっきまで神社の奥の草原にいたはずだ。

携帯を手にしてから1歩も動いていないはずなのに、なんで入口に戻ってんだよ。

しかもさっきまで手に持っていたはずの携帯も忽然と姿を消していた。


「夢でも見てるのか?」


試しに頬をつねってみる。

夢の中では痛みを感じないなんてよく聞く話だけど実際にやるのは初めてだ。

痛い…たしかに痛みを感じる。

とゆう事はこれは現実?


振り返るとさっきと変わらず神社があるしあの穴もちゃんと見える。

俺…やっぱ疲れてんだな…

もう帰ろう。


しかし、これが全ての始まりだった。


神社を出て帰り道を歩き出すとすぐふと目に入ったのは古びた銭湯。

昔ながらのどデカい煙突が目印で何度も待ち合わせ場所にした記憶がある。

この昭和を感じる佇まい懐かしいな。


あれ……でもここの銭湯って随分前に潰れて取り壊されたんじゃなかったか?

俺の記憶違いかな?


そんな事を思いながら家までの道をふらふらと歩いていると来る時に通ったコンビニの前でレジにいたスタッフが忙しそうに店内を右往左往しているのが見えた。

あれ?あのスタッフ、さっきはマスクしてたよな?暑くて外したのか?店内はクーラーで涼しいだろうに。


それに服装もさっきと変わってるような?

さっきはマネージャーっぽいバイトの子とは違う服を来ていたけど今は普通の制服だ。

よっぽど汗でもかいたのだろうか。


まぁそんな事どうでもいいか。

だけど、再び帰路を歩き出した俺は次々とおかしな事に気がついた。


駐車場になったはずの建物があたりまえのようにそこに立っていたり、売上が落ちて潰れたはずの店が営業していたり。

なにより気になったのはさっきまでしてない人なんて1人も居なかったのに何処を見ても誰を見てもしてないんだよ、マスクを。


なんでだ?どうなってんだ?

どいつもこいつもマスクなしで近距離で喋ったり歌ったり笑って話していたりする。

つい先日も感染者の数が記録を更新したとかってニュースをやっていたってゆうのに。


そう、まるでコロナ感染症が流行る前のように。

前……?昔?

おい……まてよ?


気がついたら神社の入口に戻っていた事。

無くなったはずの銭湯。

服装の変わったスタッフ。

以前のように活気のいい店。

マスクをせずに笑っている人々。


まさか……まさかな……

いや……でもそんなはずはない……

もしかして俺は……俺は……


過去の世界に来ちまったのか?





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