夜にしがみついて、朝で溶かして
レビュー執筆日:2022/7/11
●アレンジや歌詞の面白さが際立つが、メロディがやや弱いか。
【収録曲】
1.料理
2.ポリコ
3.二人の間
4.四季
5.愛す
6.しょうもな
7.一生に一度愛してるよ
8.ニガツノナミダ
9.ナイトオンザプラネット
10.しらす
11.何か出てきちゃってる
12.キケンナアソビ
13.モノマネ
14.幽霊失格
15.こんなに悲しいのに腹が鳴る
前作から3年以上と、結構ブランクが空いてリリースされたクリープハイプのアルバム。今作は、冒頭からいきなり打ち込みのフレーズが飛び出してくる『二人の間』や途中でピアノが入ってきてリズムが変わる『四季』、「和」の雰囲気を強調させた『しらす』や歌とセリフを重ねて録音した『なんか出てきちゃってる』のように、これまで以上にサウンドが凝った楽曲が増えたように感じられます。その影響で曲調の幅は過去最大となっており、15曲と多めでありながらも似たような雰囲気の曲は収録されていないと言っていいでしょう。
歌詞に関しても、相変わらず色々と凝っている面がうかがえます。『料理』では巧みに言葉遊びを用いていますし、『愛す』で「逆にもうブスとしか言えないくらい愛しい」と歌っておきながら次の『しょうもな』で「愛情の裏返しとかもう流行らないからやめてよ」と否定するさまは結構ユニーク。『一生に一度愛してるよ』は「好きなバンド」と「恋人」を比較するような歌詞が面白いですし、『幽霊失格』は「化けて出てきた幽霊を心配する」という設定がなかなか興味深く感じられます。
このように、様々な点から「上手い」と感じさせられるのは確かなのですが、その一方で、メロディに関しては相変わらずやや弱い印象があり、面白いアレンジや歌詞が活かしきれていないように感じるところもありました。まあ、今作にも『一生に一度愛してるよ』や『幽霊失格』、『こんなに悲しいのに腹が鳴る』のようにメロディラインの良さを実感できるような曲もあり、そういう曲がもっと増えれば『吹き零れる程のI、哀、愛』の頃のような良い意味で「勢い」を感じられるアルバムが作れそうな気がするのですが。
評価:★★★★