世界観
レビュー執筆日:2022/7/7
●曲調の幅が広がって「しつこさ」は薄れたが、それを「キャッチーさ」にもっと結び付けて欲しかった。
【収録曲】
1.手
2.破花
3.アイニー
4.僕は君の答えになりたいな
5.鬼
6.TRUE LOVE
7.5%
8.けだものだもの
9.キャンバスライフ
10.テレビサイズ (TV Size 2'30)
11.誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる
12.愛の点滅
13.リバーシブルー
14.バンド
前作から約1年半ぶりにリリースされたクリープハイプのメジャー4thアルバム。今作はダークな世界観を見せる『鬼』や『けだものだもの』、ラッパー・チプルソをゲストに迎えた『TRUE LOVE』、シティポップの要素を取り入れた『5%』と曲調の幅がぐっと広がったように思えます。その影響か、これまでのアルバムと比べて曲数・収録時間ともにボリュームが増えたにもかかわらず、前作のような「しつこさ」はあまり感じることはありませんでした。中には、「テレビで演奏する際に曲を縮めなければならない」といった事自体をテーマにした『テレビサイズ』というどことなく笑える曲もあったりします。
収録曲の中で最も印象に残ったのは、アルバムを締める『バンド』でしょうか。タイトル通り「バンド」に対する思いをストレートに歌っておりながらも、「だから愛されなくても当たり前だな糞だな」といった不貞腐れた感じの歌詞が出てきたりする点から彼ららしさを強く受け取れますし、メロディも派手さは無いもののしっかりと印象に残る感じ。7分近い長い曲でありながらも、ダレることなくしっかりと「聴かせる」曲になっているのではないでしょうか。
とはいえ、アルバム全体で見ると、前作と同様にメロディの盛り上がりにやや欠ける点が否めません。まあ、「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして」(破花)や「いつも会いたくない会いたくない会いたくない」(リバーシブルー)辺りは結構分かりやすいと思いますが、両方とも「サビの冒頭で特定のフレーズをハイトーンボイスで連呼する」というこれまで何度もやってきた手法を用いているので、「インパクト」よりも「お馴染みのパターン」といった印象が先に来てしまいます。
全体的に「器用さ」は感じられるものの、個人的にはそれを「キャッチーさ」にもっと結び付けて欲しかった印象のある本作。まあ、先程挙げたように「しつこさ」はあまり感じられないので、ボーカルの癖の強さでこのバンドを敬遠している方でも、今作を聴いたら『吹き零れる程のI、哀、愛』と同等かそれ以上に、彼らに対する印象が変わるアルバムと言えるかもしれません。
評価:★★★★