7.仮拠点
存分に、それこそ骨をしゃぶる勢いでアルミラージを食べた。めっちゃうまかった。腹も心も満たされたところでロクは再び自分の中にある魔力に意識を向ける。わずかだが魔力の塊が大きくなっている気がする。ロクは魔力、MPを増やすことにした。魔法をたくさん使えば上がるはずと思ったからだ。
ロクは指から火を出したりしまったりしていた。最初の4~5回はやはり気持ち悪くなって10分休憩、みたいなことをしていたが数をこなすたびにそれはなくなっていった。3時間ほどしたころだろう、辺りも暗くなってきたのでロクは木の上に移動することにした。今までいた場所であれば周りに動物などもおらず地面で寝ていても問題なかったが、ここにきて初めて魔物と遭遇したこともあり地面では危ないだろうと考えたからだ。
結果から言えば安全だった。だが安全と安眠は違うのだ。初めて木の上で寝たが不安定で落ちそうになるし魔物がいるかもしれないという緊張もあって質のいい睡眠はとれなかった。朝起きたロクは眠気を飛ばすために川で顔を洗い、これからの行動について考え始めた。
まずは寝床の確保、完全に安全とは言えなくともある程度寝れる場所が欲しい。そして武器の確保、これに関してはアルミラージの角があるので大丈夫だ。最後に魔法の鍛錬、これも寝床があればある程度大丈夫だろう。ロクはさっそく武器の確保に動くことにした。
まずロクはアルミラージの角を使ってその辺にある木の皮を採取した。それを川の水に晒し、石で繊維を細かくするようにして叩く。それを3回ほど繰り返すと柔らかい糸のような物が出来上がる。手ごろな長さの木の棒を拾ってきて縦に切れ込みを入れる。その切れ込みにアルミラージの角を挟むようにして入れ込み、糸で固定した。簡易的な短剣が出来上がった。当面はこれでやり過ごす予定だ。
アルミラージの皮も使っていく。川を剥ぎ取った時に角を使って鞣しておいたので多少臭いがするが大丈夫だろう。アルミラージの皮を袋状にし、外側に等間隔に穴をあけていく。その穴に先ほど作った木の繊維紐を通して簡易的な革袋にした。水は漏れ出すが物を入れるには十分だろう。とりあえず川で拾った魔水晶を入れておくことにした。準備ができたロクは下流の方へ向かいながら寝床によさそうな場所を探し始めた。
いくら川辺を歩いても寝床によさそう場所はなさそうだったので川に近い森の中を歩いていた時によさそうな場所を見つけた。とても大きな木の根元に人が一人寝れそうなくらいの洞がある。川からも比較的近いし雨風もある程度凌げると思ったので当面はこの洞で寝ることにした。
拠点になりえる場所を確保したロクは洞の中に葉っぱを敷き詰め簡易的な寝床を作った。早速その上で魔法の練習を始めることにした。3面を守ってくれるので前方にだけ注意を向けていれば良かったので集中して魔法の練習ができた。
やることは昨日と同じく火魔法を出し続ける単純な作業だったが、念願の魔法であったし単純作業は得意だったので一日中やっていた。それを何日も何日も繰り返した。人の集中力というのは素晴らしく時間を忘れて没頭できた。腹は減るがあの毒リンゴが近くに生っていたのでどうにでもなった。
2週間、毒リンゴで飢えと喉の渇きを凌ぐというまるで仙人みたいな生活をしていたロクのステータスはこうなっていた。
【名前:ロク】
【職業:---】
【HP】28/28
【MP】32/32 (+29)
【攻撃】5
【魔力】27 (+26)
【防御】9 (+2)
【技術】7 (+4)
【敏捷】7
【運】50
【称号】
【スキル】
『疾走』Lv2『採取』Lv2『毒耐性』Lv3『剣術(我流)』Lv1
【魔法】
[火魔法]Lv2
魔力が大幅に上がったのと、火魔法のレベルが上がったのが大きい。
火魔法のレベルが上がったからか、魔力が上がったからか分からないが火の勢いが強くなったが、いまだに指から火を出すのには変わらない。覚えてすぐの頃は1回使っただけで10分ほど休憩しなければならなかった火魔法だが今なら10回連続して発動できる。