6.狩った肉の味
さすがにそこまで野生児になったつもりはないし、魔物の肉なんて生で食べたら最悪毒じゃない何かで死にそうだ。すぐにでも肉を食べたかったが火をどうにかしないと食べれない。
「魔法…探ってみるか…」
火の魔法が使えたら、と思ったのでロクは自分の中にあるビー玉くらいの魔力に意識を再び向けた。ロクがラノベで見たことのある習得方法を試してみる。まずは火をイメージしながらその辺から拾ってきた木に向かって意識を向け
「火よ!」
出なかった。恥ずかしい。
ロクは少し考え、視点を変えることにした。まずは体内の魔力に意識を向ける。次にその魔力を動かそうとしてみる。少し動いた。今度はその魔力の塊から糸を1本イメージして引っ張ってみる。引っ張ることができた。ここまで来たらあとは手に向かって糸を伸ばしていく。引っ張っていくごとに魔力の塊がだんだん小さくなっていくが、ギリギリ指の先まで引っ張ることができた。
ロクがイメージしながら行ったのは魔力の通り道を作るということだった。今は1本の糸で精一杯だが魔力が増えたらそのうち全身に張り巡らせたいな、そんなことをロクは考えていた。だが今はそれどころではない、肉が食べれるか食べれないかが大事だ。先ほどのイメージを今自分で通した魔力の道を意識しながら行ってみる。
「火よ!」
指先から火が出たが、100円ライターぐらいの大きさしかないし、そもそも木にそのまま火を移すのをイメージしていたのに指先から出た。少し慌てたが落ち着いて指先から出る火を木に近づけ、無事に着火する。ロクはこの世界に来て初めて魔法を使うことに成功した。と、同時に吐き気が襲ってきた。
「これは…あれだな…MP…切れ…」
立っていられなくなったロクはその場にへたり込む。この状態には覚えがある。とりあえずステータスを確認してみることにした。
【名前:ロク】
【職業:---】
【HP】20/24
【MP】0/3 (+1)
【攻撃】5
【魔力】2 (+1)
【防御】7
【技術】3
【敏捷】7
【運】50
【称号】
【スキル】
『疾走』Lv2『採取』Lv1『毒耐性』Lv2『剣術(我流)』Lv1
【魔法】
[火魔法]Lv1
[火魔法]Lv1...MPを消費して火魔法を使える。
やはり、ロクの思った通りMPが切れていた。そして1だけ魔力とMPが上がっていた。使えば使うほど魔力が増えていくように感じる。暇なときは魔法の練習をしよう、そうロクは思うのだった。
10分ほど経つと気持ち悪さも抜け、ステータスを確認するとMPが回復しているのが確認できた。大体3分で1回復する程度のようだ。俺は立ち上がり解体したアルミラージをその辺の棒に刺した。特別な処理はしていない。頭を落として皮を剥ぎ、内臓を取っただけだった。故にウサギの丸焼きみたいなものになった。さすがに半生は怖いのでゆっくり、じっくりと焼いていった。
辺りに香ばしい匂いが漂い、ロクのお腹から歓喜の声が聞こえる。そろそろ食べれるだろうというところで肉を火から降ろしかぶりついた。
「う゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
1週間ぶりの肉にロクもロクの身体も喜んだ。喉に詰まらせながら必死にかぶり付く。何の味付けもしていないウサギの肉だったが、これまで食べてきた何よりもうまいと感じた。