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5.はじめての魔物

山のぼるぜ!

森と川が見えるぜ!

とりあえず食べ物探すぜ!

山下るぜ! ←いまここ

足を滑らせないように慎重に山を下ること4時間、森に入った。

森に入ってすぐに見えたのはやはり毒リンゴ、どうやらここら辺では毒リンゴがよく生えているらしい。どうせなら鑑定みたいな便利能力があればよかったんだけど…ないものを強請(ねだ)っても仕方がない。それに持ってきた毒リンゴも最悪捨ててしまっても新しいものがすぐ手に入るのも両手が自由になるのでありがたかった。


とりあえずロクは山頂から見えた川のほうへ向かうことにした。今まで飲み水は泉だったので飲める水が近くにあったほうがいいだろうと思ったから、というのもあるし川ならもしかしたら魚や甲殻類もいるかもしれない。ロクは毒リンゴ以外の食べ物に期待しながら川のほうへ足を進めた。


休むことなく森を進み続けると水の音が聞こえてくる、川が見えた。

川の流れは速すぎず遅すぎず、といったところだろう。注意していれば足を掬われて流されることもないと思う。早速俺は魚の影を探しながら川の流れる方向へ移動した。


ある程度進んだ頃、ロクは川に何か光るものを見た。魚の鱗が光に反射して光ったのかと思ったが、どうやら違うらしい。川に入って光の原因となった物を見つけた。


「なんだこれ、石ころにしては綺麗だし水晶みたいだな」


ロクが見つけたのは透明な石だった。前世ならガラスだと思ったかもしれないがここは異世界、しかも人や動物がいない山の中。さすがにガラスではないだろうと思うし、ロクの拾った石は綺麗な六角形みたいな形をしていた。川の流れで成形されたとしては妙に綺麗な形をしていた。前世の記憶をフル動員して考え付いたのが


「これ、魔石みたいなやつか?」


異世界で宝石みたいなもの、ロクの中の知識で検討がついたのが魔石だった。もちろん山も近いし単純にこれが水晶の可能性もあるが、それにしてはあまりにも形が整い過ぎている。ロクの持っている知識の中の魔石は魔物の体内に精製される魔力の塊、心臓のような物。つまりこの辺りに魔物が出る可能性が俺の中で浮上してきた。急に現実に戻されたような感覚だ、魔物はおろかこの世界に来てから動物の1匹も見ていなかったのにいきなり魔物と遭遇する可能性が出てきたのだ。ただこれが本当に魔物の魔石か、そもそもこれが魔石なのかも分からないので俺はこれを魔晶石と名付けた。


「考えれば色々おかしいよな、この辺り」


こんなに豊かな自然があるのに普通の動物を1匹も見ていないのである。

木の実も実っているし森も特におかしな点が見当たらないのでこの辺りが毒で汚染されている、なんてこともないはず。ただ唯一見つけた木の実が毒リンゴだったので多少の毒は地中にあるのかもしれない。ロクとしては肉が食べたいけど動物がいないのでもしかしたら初めてこの世界で食べることになるのは魔物の肉かもな、なんて思っていると森の中からガサガサと物音がする。


ロクは腰に差していた木の棒を構え、音のする方向を向く。

茂みが揺れている、(.)(.)がいる。

音を出している主の正体はウサギだった。ただ俺の知っているウサギとは明らかに一つ違う点があった。頭部から30cmほどの角が1本生えている。


「アルミラージ…!」


角の生えたウサギなんて前世では見たことがないし、ロクはその姿を某RPGで見たことがある。魔物だというのは確定している、あとはここをどう切り抜けるか。

ロクの持っているスキルで唯一攻撃系ともいえるのは剣術くらいだった。しかも武器はただの木の棒、相手は魔物だし普通のウサギではないのだ。何よりあの角は刺されたら怪我では済まない。


アルミラージがどうやらこちらに気付いたようでいきなり突撃してきた。


「おい待てこっちはまだ何も準備できてな───ッ!」


敏捷を多少上げておいて正解だった、アルミラージはその自慢であろう角を物凄い速さで向けて真っすぐにロクに向かって突撃してきていた。間一髪のところで避けたがロクの後ろに生えていた木に穴が開く…と思っていた。全力ダッシュで突撃してきたのだろう、勢いを殺せずそのまま木に角が刺さる。そして抜けなくなってなんとも間抜けな図が出来上がっていた。


「えー…」


若干困惑したロクだったが30cmほどあった角は根元までずっぽり刺さっている、やはり当たっていたら命が危なかった。


キューーー!


なんとも間抜けな格好で木にぶら下がっている。やめてくれ、めちゃくちゃ可愛いんだけどそれ。よほど本気で暴れたのだろう、抜け出そうとじたばたしていたらアルミラージの角が根元からぽっきり折れた。


キュッ…


抜けたと同時にこちらを向くがその体は震えている、ふらふらとこちらに近づいてくるが角が折れた断面から少なくない血が流れている。4~5歩こちらに寄ってきたところで倒れた。そりゃああんだけ長い角なんだ、通っている血管も太くなるだろうし、死因は間違いなく失血死だった。


「あっけない初勝利…?」


初めての魔物があんなまぬけだったのは何とも言えないが、命の危機だったのには変わりはない。今の敏捷があったから躱せたはいいものの、こちらに来た時のステータスでは確実に避けきれていない、走り込んだのが功を奏したのだった。


アルミラージも気になるがそれより木に刺さりっぱなしの角のほうが気になったのでそちらを回収しに行った。抜くのには苦労したが何とか回収できた。長さは30cmほどで先端がとても鋭利になっている。このままナイフみたいな感じでつかえそうだ。死体で遊んでいるみたいで気が引けたが角の持ち主に差してみた。すんなりと貫通した、こんなので俺を刺そうとしてたのか、と震える。


何はともあれ切れ味も確認したのでアルミラージを解体することにした。前世のウサギと同じような構造だったので皮は引っ張れば剥げた。ここにきて初めての肉である。食べれるかどうかは別として俺には毒耐性があったので多少毒があっても食べれるだろうと考えた。だがしかし、ここにきて問題が一つ発生した。


「さすがに生は無理だよな…火が欲しい」

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