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10.おじいちゃんと大きな鳥

ガタゴトと荷台で揺れるロクは「これがドナドナされる気分か」などと下らないことを考えていたが、そのうち揺れが止まる、どうやら目的地に着いたようだ。


「ほれ、着いたぞ」

「はい」


荷台から降りるとそこは町とかではなく、一軒の小さな家だった。どうやらおじいちゃんの家らしい。おじいちゃんの後をついて行き家にお邪魔する。家の中はいろいろとごちゃごちゃしているが、汚い感じはない。それと部屋の中心に大きな白い鳥がいてこちらを見ている。


「帰ったぞ」

『お帰りなさい、そっちは?』

「?!」


鳥が喋ってる…のか?声がした方向には鳥しかいないしそう考えるのが自然だ。なんか知らないけど鳥が喋ってる、異世界スゲー


「ふむ、そういえば名前を聞いてなかったの、ワシはマーリンじゃ」

「…あぁ、おれ…僕はロクと言います」


呆けていたら質問が飛んできた、危ない危ない。どうやらこのおじいちゃんはマーリンというらしい、なんか大魔法使いみたいな名前してるな。


「そうか、ロクというらしい」

『マーリン、その感じだと』

「拾った」

『はぁ…またですか』


大きな鳥は溜息をついて首を振るようなしぐさを見せた。どうやらマーリンが人を拾ってくるのはロクが初めてのことではないらしい。


『どこから拾ってきたんですか?』

「無の森じゃ」

『無の森…ですか?』

「本人はそう言っとる」

『なるほど…』


大きな鳥はマーリンと会話をしながらこちらを見ている、品定めされてる気分だ。


『なるほど、悪くないですね』

「じゃろ?」

「あの…悪くないって言うのは?」

『マーリン、もしかして何の説明もしてないの?』

「いや、仕事は多少やらせると言った気がするがの」

『ほぼ何も言ってないじゃないですか』

「えっと…」


なんかめんどくさいことになりそうな予感。


『あぁ、ごめんなさいね、私はプロト』

「あ、ロクです」

『ロク君ね、ここが誰の家だか分かる?』

「いえ、全く」

「ほっほっほ」

『はぁ…マーリンわざとでしょ』

「何がですか?」

『えっとね…ここはマーリンの家、別名<魔女の家>よ』

「魔女の家…」


うーん、どうやらとんでもないところに転がり込んでしまったのは鳥、プロトの言い方から何となくわかったけど、なんで魔女がいけないんだ?


「あの」

『何かしら』

「何か魔女だと都合の悪いことがあるんですか?」


純粋な疑問だった、魔法の存在する世界で何故魔女と呼ばれなければならないのかが不思議だった。ロクの質問があまりにも突拍子がなかったのか、プロトには不思議な目をされたし、マーリンは肩を震わせて笑うのを堪えているようだ。


『えっと…あなた、もしかして記憶もない』

「いや…えーと、一般常識はないかも?」

『でしょうねえ…さて、どこから説明しましょうか』


ここからは驚きの連発だった。プロトとマーリンから教えてもらったことはこの世界についてだった。魔法が使えるのはごく一部の人間のみであること、それ故にマーリンが魔女と呼ばれていること、ダンジョンが存在すること、この国の名前、国の状況など、ほぼすべての事について教えてもらった。


まず、この国の名前はトップロ王国、各地に領があり貴族制度があることもわかった。そのほかにも国はあるらしいがあまり国交はないらしく、あまり情報はないらしい。次に今ロクがいる場所はトップロ王国のマンタース領というところらしい、一般的には辺境地らしいがロクはこの土地以外を知らないのであまりよくわからなかった。王都に近付けば近付くほどダンジョンが多くなるらしい。ダンジョンが多いところに王都なんて作ったら危ないじゃないかとも思ったが、どうやらダンジョンから得た物で経済を回す、ダンジョン経済が原因らしい。よくわからないけど石油が出てくるところの近くに街をつくるような物か。


『さて、大体わかったかしら』

「なんとなくわかりました」

『なんとなく…まぁいいわ、そのうち覚えていくでしょう』

「ところで僕にさせる仕事って何なんですか?何もできそうにないですけど」

『それはね…マーリン!』

「ほいほい」


プロトに呼ばれたマーリンは何やらごそごそと棚を漁って戻ってきた。目の前に透明な石がゴロゴロと置かれる、これ川で拾ったやつと似てるな。


「おぬしの仕事はこれじゃ」

「なんですかこれ」

「魔石じゃ、空っぽのな」

「で、この空っぽの魔石をどうすればいいんですか?割るとか?」

「ばかたれ、そんなことしたら使えなくなるじゃろうが」


怒られた、どうやらそういうことではないらしい。空っぽの魔石を用意して仕事だと言い張るマーリン、ははぁ読めたぞ?


「もしかしてこれに魔力でも込めるんですか?」

「ほぉ、鋭いの」

「でも僕そんなに魔力ないですよ?」

「大丈夫じゃろ、やってれば増えるだろうしの」

「はぁ…」


当たりらしい。というか魔法使いが少ないはずなのにどうやって俺が魔力を持ってることが分かったんだ?鑑定でもあるのか?とロクが考えているとマーリンが話す。


「とりあえずこれを10個満タンにしてくれればよい、色がわかるからわかりやすいと思うぞ」

「ちなみに何色になるんですか?」

「この質の魔石だと青が限界じゃな」


どうやら魔石にも質があるらしい。まぁやることもないし恐らくお金も貰えるだろうし行くところも当てもないロクはマーリンに言われた通りの仕事をすることにした。


「では頼むぞ、≪見習い魔法使い≫のロク」


このじいさんやっぱり鑑定持ってるだろ!

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