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ヒロインがドン底まで堕ちて前回から殆ど歯止めが効かなくなっている状態です。リリアリアには語り部になって貰うと決めてましたが逆に申し訳無さを感じる今日この頃。


こんなにストレスを抱えたら誰だって……ねえ?

「…………」



 リリーちゃんがついに極地に到達しちゃった……。


 お願いだから気配を殺して店に入らないで。気付いたら席に座ってるとか普通に怖いから止めて。それって既にホラーのレベルだから。昨日一晩同じベッドの中で私に泣き付いたじゃん。


 あれでストレスを全部発散出来なかったって事?


 今日のリリーちゃんはナッシングどころか怒りがマックス……。 この子を本気で怒らせたら後ろからブスッと刺されそう。まあ、これまでの経緯からその原因が何なのかは分かってます。



 聞かんでも分かるわい。



 と言うか今日のリリーちゃんは店の常連さんに殺し屋だと勘違いされてもおかしくない。皆んなもお願いだから空気を読んで……、ヒソヒソと小声で噂話をしないで欲しい。



「……リリーちゃん?」

「アイツら絶対に異世界人だよ。この世界の住人だなんて私は絶対に認めない」



 何方かと言えば異世界人は私だから。


 と言うかこの子、ついに元王族連中を自分のファンタジー世界に押し込んじゃった。



「な、何があったか聞いていい?」

「マリーちゃんが提案してくれた禁呪法を使ってみたの」



 うわー……。


 リリーちゃんが何の前振りもなく本題を語り出しちゃった。カウンターに肘を突きながら語り出すこのポーズ、これって私が日本で使ってたスマホのメッセンジャーアプリで初期登録されてるスタンプと同じ姿勢じゃん。


 本来はキラキラした印象しかない乙女ゲームのヒロインが勝手にキャラ暴走を始めてしまった。


 もう完全に私の手には負えません。



「……何か問題があったの?」

「成功はしたよ? ……禁呪法自体はね」

「……成功しても尚、って事?」

「一時でもアイツらと結婚したいと思った自分が恥ずかしい……」



 もう本末転倒やんけ。


 それって乙女ゲームの存在そのものを全否定してない? それも否定したのがヒロイン自身と言うのが何とも救えない話だ。


 今回のリリーちゃんが抱え込んだ愚痴、内容は今回も怖気の走る話だった。


 禁呪法の魔法書を発見したリリーちゃんは手際良く四バカを唆して、それぞれに隷属の魔法をかけさせたらしい。その次段階として仲間の間で疑心暗鬼に陥ったところまでは成功だったそうで。


 因みにリリーちゃんは保険として私のお父様に頼み込んで四バカ全員に隷属の魔法を使って貰ったそうだ。


 まあ、そうだよね?


 下手をしたらアイツらの事だから禁呪法を悪用しそうだから保険を掛けたい気持ちは素直に頷ける。だから王族の遠縁に当たる公爵家の現当主であるお父様が四バカの手綱を握ったそうだ。


 何かその時点で本末転倒だなあ。お父様が隷属の魔法を使った時点で四バカたちにそれぞれを隷属させた意味ないじゃん……。


 お父様は人格者だから隷属の魔法なんてドス黒いものに触れて欲しくは無かったのに。リリーちゃんが斜め上の行動を取っちゃったよー……。


 乙女ゲームの世界は本末転倒のバーゲンセールでした。



 だが本題はここからだ。



 あの四バカは突如奇行に走ってしまう。まず最初に行動を起こしたのはクソ宰相、アイツは四人の中でも一番立場が低い。そのため日頃から溜まりに溜まったストレスが爆発したのか王都の大通りでいきなりバカ国王に隷属の魔法で立ちションを命じたと言うのだ。


 隷属の魔法の強制力は例え王族であっても抗えない。


 大勢の人が見ている目の前で屈辱に塗れた表情と貧相な下半身を晒して立ちションを決行するバカ国王、流石のバカ国王もこれには恥辱を感じたらしい。



 だがここからバカ国王は本領を発揮する。



 バカ国王は隷属に抗えないならば寧ろ仲間を増やせば良いと考えた様で、実の息子のアホ第一王子に隷属の魔法を発動。隷属を受けたアホ第一王子も父親と隣り合って公衆の面前で恥辱を晒す。



 その恥辱は兄から弟へ、弟を通じて宰相へとまるで遺伝の如くマッチポンプとなって舞い戻っていく。結果、四バカは全員横一直線に並んで連れションを決行。



 目を閉じて脳裏に浮かぶ絵面の何とエグいことか。



 この国は王政時代から立ちションは法的に禁じられている。その法令はクソ宰相が作り上げたもの、つまり自分で作った法律を自分が犯して警察のご厄介になる。自分で作った法律くらい自分で責任持って守れや。



 ホンマにアホ王族やで。



 遠縁ながら王族の血脈を受け継ぐお父様があまりにもまともと言うか人格者すぎて逆に変わり者扱いされているとか、いないとか。お父様が不憫すぎる……。


 そしてリリーちゃんに至っては目を離している隙にベロンベロンに酔っ払ってしまった。彼女は自分の口からこの件を話す事に疲れてしまったのだろう。


 カウンターの前に積み上がった空のビールジョッキがそれを物語る。



「マリーちゃん、消毒用アルコールある?」

「え? 有るけど何に使うの? 何かこぼしちゃった?」

「直に飲むの、もう普通のアルコールじゃ酔えない体になっちゃったから……」

「これ飲んで!! リリーちゃんのために作ったスープだから!! コレで心も体も温めて!!」



 もう見てられない……。


 お願いだから乙女ゲームのヒロインが戦後直後でアルコール不足に悩まされた日本人みたいな事を言わないで。それと折角作ったスープを何処ぞの原住民みたいな飲み方しないで……。


 リリーちゃん、貴女はヒロインなのよ!?


 それだけは絶対に忘れないで欲しい!!



「……数日前までは四バカたちの保有財産の金額算出と分与を担当してただけだったのよ?」

「リリーちゃん?」

「それが気付いたら何故か四バカの起こす事件の事後処理までさせられて……」

「えーっとー……?」

「最近は家にもまともに帰れず政府庁舎と警察の往復を強要させられる毎日……」

「……ハチミツの採取は順調なのかな?」

「アイツら、そこだけはソツなく結果を残すからクビにする事も出来ないの……。はあ……」

「……なんかゴメン」

「あ、でもマリーちゃんの店が負ったツケの件はちゃんと上司に掛け合ったから。そこだけはちゃんとやりました」



 リリーちゃんがいい子すぎて私の心が耐えられない。


 どうして私の損害だけはちゃんと請求出来ちゃってるの? こんなに病んだリリーちゃんを間近で見てお金だけ受け取ったら私ってただの嫌な奴じゃん。


 頼るだけ友達に頼って「じゃあ後はよろしく」なんて言える訳ない。


 言ったら私が罪悪感に押し潰されて死んじゃうから。



「ねえー、マリーちゃん。今日も泊めてー、こないだみたいにベッドの中で優しく私を抱いてー」

「その言い方はダメーーーーーーーー!!」



 リリーちゃんが変な事を言うから常連さんたちの視線が一斉に私に集中しちゃった!! お願いだからカウンター越しに私に抱きつかないで!!


 これじゃあまるで私が旦那さんに三行半を突き付けた奥さんみたいじゃん!!


 ほらあ、常連さんたちが私に変な妄想を膨らませて鼻の下を伸ばしてますがな……。アンタら、これ以上変な目で私を見たら出禁にするからね?


 店中を威嚇してようやく妙な視線が落ち着いた。


 最近は本当に疲れて肩が凝っちゃう。



「マリーちゃんの胸の柔らかさが忘れられないのーーーーーー。またベッドの中でギュッてして?」

「勘違いされちゃうから言い方には注意してーーーーー!!」

「私を捨てないでーーーーーーーーー」



 やっべー。


 私の方が鼻血出ちゃいそう。あの日の夜、ベッドの中で甘えるリリーちゃんを抱きしめた記憶が私の鼻を擽ります。


 と言うかやっぱり乙女ゲームのヒロインの魅力は半端じゃない。

 

 例えやさぐれていても同性すらも惹きつけてくる。


 そして私とリリーちゃんのやり取りを鼻の穴を大きくしてチラ見する常連さんたち。本当にお願いだから変な妄想を膨らませるのだけは止めて欲しい。



 私たちは健全な友達関係です!!



「一緒にお風呂入ろうねーーーーーー」

「ウチのお風呂は狭いんです!!」



 日頃のストレスから突如壊れてしまったリリーちゃん。彼女は周囲の目など気にすること無く全力で私にしがみ付いて離れなかった。


 と言うかこの事件を契機に私は店の常連さんから色んな意味で際どい勘違いをさせる事となる。


 悪役令嬢はツラい。


 そして四バカは絶対に許さん。


 アイツらは店に顔を出さなくとも私に多大な迷惑を吹っかけてくると分かって私の心に憎しみが積み上げられていくのだった。

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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[一言] こんなやり取りしてる女主人と客いたら客は増えそう しっかし、この4バカ絶妙にみみっちいことばっかりするなw
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