07
ヒロインのキラキラ感を削ぎ落とす作業はすごく辛いです。ヒロインなんだからいい子なのは当たり前、獅子のごとく突き落とします。
クスッと笑って貰えたら嬉しいです。
「……こんばんわ」
ありゃま。
今日のリリアリアちゃんは元気ナッシングのご機嫌斜め四十五度ですか。まあ、おおよその検討は付くけどね。
先日の彼女は「お邪魔しまーす」と控えめながら天真爛漫に居酒屋に入って来たから、それと比較すると何とも言えない温度差があった。
このリリアリアちゃんのあからさまな不機嫌さ。
原因は『あの四人』で間違いあるまい。
と言うか乙女ゲームのヒロインをたらこ唇顔にさせるとか天変地異だから。そんな精神状態に追い込むなんてアイツらは何をやらかしたんじゃい。
「えっと……、ビールでいい?」
「……濃いめのアルコールを下さい。もうビールなんかじゃ酔えません」
破壊力抜群のコメントを頂きました。
「うーん……、ウチにあるアルコールだと焼酎かハブ酒……辺りかなあ?」
「ハブ酒ダブルをロックで」
ハブ酒をダブルのロックで飲み干すヒロインが何処の乙女ゲームにおるんじゃい。でも、元はと言えば彼女に苦労を押し付けたのは私でもあるしここはソッとしておこうっと。
と言うかヒロインが目にクマを作っとるやんけ。
アイツらは本当に何をやらかしたの?
「はい、ハブ酒ね。オマケでトリプルにしといたから。今日は残さず愚痴を吐き出しちゃって」
「うわああああああん!! 私の苦労を理解してくれるのはマリアンナさんだけですーーーーーーー!!」
「な、何があったの?」
聞くのが恐ろしくなるから泣きながらハブ酒のトリプルを一気飲みしないで。
「バカ国王が政府の経費を勝手に使って馬車を新調しちゃったんですーーーーーーーー!!」
「……ど、どう言う事?」
「冒険者になったからには同業者を乗せることもあろう、とか言って高級馬車を勝手に手配しやがったんですよーーーーーーーー!!」
ア、アホやな。
「……あのバカ国王」
「アホ王子二人なんて同業者に舐めらるのはいかん、とか言って勝手にペアで高級腕時計を手配するし……、クソ宰相に至ってはダンジョンに入る前にモンスターの毒でダウンしちゃって……」
「……なんかゴメン」
どうして私が謝る必要があるんじゃい。
おお……、乙女ゲームのヒロインがハブ酒を一升瓶でラッパ飲みしてるし。リリアリアちゃん、そのお酒はすごく高いんだよ? 多分、このお店で一番一杯単価が高いお酒だから。
気持ちは分かるけどお願いだからお手柔らかにお願いします。
「でもモンスターの毒って……マズいんじゃないの?」
「あのクソ宰相、ダンジョンに入る寸前で体調がおかしいとか言うから検査を受けさせたら陽性だったんですよお。だったらさっさと家に帰れって話なのに、『宰相、アウトー』って報告するためだけにわざわざ政府庁舎に寄りやがったんです!!」
「……死ねば良いのに」
「しかもその毒って空気感染もする奴なんですけどパーティ全員が感染して冒険始める前に全滅……。その上、クソ宰相と接触した庁舎職員にもチラホラと感染者が……」
「前代未聞じゃん……」
「オマケに……」
「まだ有るの!?」
もうお腹いっぱいなんだけど。
「お城にローンが残ってる理由が分かりましてー……」
「……聞くのが怖いんだけど」
「昔、先代国王が寝タバコで……火事を起こしてお城が全焼しちゃったんだそうです、ローンの正体は修繕費用でした……」
まさかの血筋!?
嘘でしょう? そんな下らない理由でお城一棟が全焼しちゃった訳? でもお城って煉瓦造りだから火事になり得ないと思う。
確かロンドンも街も一度大火災が発生して、消火が済んだ時にはロンドンの街並みが全く異なる光景となってしまっていたと何とか。あの大都市に煉瓦造りの建築物が多いのはそう言う理由だった筈。
レンガは耐火性に優れる建築材料なのだ。
だがやはりと言うべきか。
リリアリアちゃんは私の考えを何度でも先回りしてくるのだ。
「……先代国王、魔法でタバコに火を付けたらしいです」
どうしてあんなバカ一族が一国を治める事になったのやら。今になって乙女ゲームの世界の歴史を糾弾したくなる。と言うか魔法も使い道を誤ると大惨事になるのね。
因みに魔法の火なら煉瓦を燃やす事が出来る。
私も気を付けよう。
まあ、私が使える魔法なんて水性魔法だから大丈夫だと思うけど。でもヒロインをここまでアルコールに溺れさせるとか、この乙女ゲームの世界の王族って本当に恐ろしいと思う。
ここは私が何か解決策を考えるべきだろうか?
何しろあのバカ国王を冒険者にする様に言ったのは私な訳で。リリアリアちゃんの性格を考えると私を恨む事も無さそうだし、それが逆に申し訳なさを感じる要因でもある。
この子は今の私を心の底から慕ってくれるのよね。
だからこそ責任を感じると言うか、真剣に申し訳ないと思う。本当に『私たちの』元婚約者一家がすいません!!
「ねえ、リリアリアちゃん?」
「なーんでーーーすかーーーーーー?」
リリアリアちゃん、完全に酔っぱらってるじゃん。
「確か……隷属魔法って有ったよね?」
リリアリアちゃんは話題の重さに一気に酔いが覚めたのか呂律を取り戻した。さっきまでは怪しい目付きだったにも関わらず、真剣なそれへと豹変を果たした。
どれだけ酔っ払ってもこの子はやっぱり出来る女の子らしい。
「……マリアンナさん、それって禁呪法……ですよね?」
「うん、王族にだけ代々伝わるアレ……」
「でもアレってマリアンナさんが言う様に王族しか使えない筈ですよね?」
「そう。王族の血筋と魔法書が揃わないと発動しないって話だけど、それを使って上手くあの四バカどもの手綱を引っ張れないかな?」
「詳しく聞かせて貰って良いですか?」
あの四バカに純粋な王族は三人、宰相も実は王族の遠い親戚なのだ。
コレを利用してそれぞれに隷属の魔法を行使させる、要はバカ国王にアホ王子一号を隷属させて、アホ王子一号に二号を隷属させると言った寸法で四つ巴の関係を構築させる。
あの四人は無駄に結束力が高い。
おそらくそれが問題なんだと思う。
だからその絆に亀裂を作ってしまえばリリアリアちゃんも管理が簡単になると考えた訳だ。それぞれに隷属させれば四バカの事だ。取っ組み合いの喧嘩に発展するだろう。
アイツら、頭の中は小学生以下だから。
全員が自分以外を信じられなくして、そのタイミングを見計らってリリアリアちゃんが上手く手綱を引けば言う事を聞く気がする。
多分だけど……。
私がそれを提案した途端、彼女はパアッと笑顔になって美味しいお酒を取り戻すことになった。ハッキリ言ってやけ酒なんて乙女ゲームのヒロインがする事ではないと思う。
でもどうして私が四バカのせいで頭を悩まさなくてはいけないのかな?
そこだけはどうにも納得出来ない。
私の生活圏からあの四バカを遠ざけたい、それが今の私の切なる願いだ。
「マリアンナさん」
「急に畏まってどうしたの? リリアリアちゃん」
「……この国の王政って何年続いたと思います?」
「……怖いから聞きたくないんだけど?」
「ですよねー?」
私たち二人って下手したらその王族の仲間入りをするところだったんだよね。今の私たちには悪役令嬢とヒロインの壁なんて何処にも見当たらない。
私たち二人に共通する想いはただ一つ。
革命が起こって良かったー、と言う事のみです。
お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m
また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。