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居酒屋外編のラストになります。


人格者キャラとしていたお父様がやっと普通にご活躍、暴走するヒロインをどうやって封印?するかお楽しみ頂ければ嬉しいです(`・ω・´)ゞ

「死ね死ね死ね死ね死ね死ねーーーーーーーー!」

「あろぱろぱーーーーーー!?」



 ひょえええええええええ!?


 リリーちゃんが悪魔の表情を浮かべながらバカ国王をボッコボコにのしていく。リリーちゃんは自分でも自覚無くヒロインの辞表を叩きつけていいく。


 もはやヒロイン稼業引退待ったなし。


 リリーちゃんは問答無用で正規の攻略対象に天然な整形手術を施していった。まるで蜂の大群に襲われたかの如く四バカの顔が腫れあがっていく。



 うーん、これって私が止めないとリリーちゃんも振り上げた拳を引っ込めない感じかな? 自分の立場に罪悪感を募らせながら乙女ゲームのヒロインが乱暴狼藉を働く姿を眺めるしかなかった。


 めっちゃ手持ち無沙汰だけどリリーちゃんを制止しなくて大丈夫かな?



「ヒャッハーーーーーーーー!! 美味しくなーれ、ドザエモンになーれ!!」

「アババババババ!!」



 リリーちゃん、それってメイド喫茶の常套文句だよ……。


 リリーちゃんは勢いと怒りに身を任せて四バカにラッシュを放り込む。何だかなあ、日に日に人間離れするリリーちゃんの変化を見てやはりドバドバと涙が流れて止まらない。


 どう言う経緯を辿ると乙女ゲームのヒロインが山姥に変貌するのだろうか? うううう、目が涙で曇ってリリーちゃんの美しいブロンドヘアーが輝きを放って逆立っていく様に見える。



 やっぱりリリーちゃんは地球人では無いのかな? アンタは何処かの戦闘民族か何かですか?


 寧ろそんな杞憂をする時点でこの場において私は不毛な存在なのかな?


 ……でもま、いっか。



「お父様、リリーちゃんの拳圧が四バカを押し戻してますよ?」

「ふむ、これは好機かもしれないねえ」

「……やっぱり四バカをダンジョンに封印、ですか?」

「うん、今日から四バカにはこのダンジョンのラスボスになって貰おうかな」



 お父様もサラッととんでもない事を言うもんだ。


 元王族の上位ジョブがまさかのダンジョンのラスボスとは。あの四人はヒロインの手によって惨めな最期を待つのみとは。本来はヒロインと攻略対象が手を取り合って幸せになるのが乙女ゲームの醍醐味だ。


 なのにヒロインによって一方的に突き放される攻略対象たち。


 見ていてどっちも不憫に思えてきた。


 でも、まあいっか? 私としては完全にリリーちゃんの味方だし、四バカを擁護する謂れはない。だってアイツらがいるだけで私の異世界居酒屋経営生活の安全は保証出来ないのだから。



 イケイケー、リリーちゃん頑張ってーー。



「ヒャッハーーーーーーー!! これでトドメ、喰らいなさい!! エンシャントーーーーーー!!」



 出たあああああああああ。


 リリーちゃん必殺の古代魔法・エンシャント。亜空間から隕石を召喚して敵に雨霰の如く降り注ぐ最強魔法が四バカに一直線に向かっていく。


 アホ王子二人なんて口に隕石を突っ込まれて呼吸困難になっとるやんけ。


 「アババババ」と悲鳴を上げてダンジョンの奥へと押し込まれていく。やべーな、私もリリーちゃんから恨まれない様に今後は最新の注意を払うとしよう。


 だってこの乙女ゲームのヒロインは身震いするほどに怖えーんだもん。


 ズドンズドンと天から降り注ぐ隕石が地面に突き刺さる音が辺り一体に響き渡っていく。


 そんな四バカたちにとって絶体絶命の状況下、アイツラは助け合うどころかこの期に及んで隷属の魔法を使って互いの足を引っ張り合う。


 醜くも我先にと足蹴にし合うのだ。クソ宰相なんてバカ国王の顔を踏んづけとるやんけ。



「……やっぱりリリー嬢には引退して貰おうかな?」

「お父様!?」

「だってマリーも見て分かるでしょ? あれは流石に私もフォロー出来ないよ、無理無理」



 やっべー。


 完全にお父様に論破されちゃった。確かに今のリリーちゃんはまともじゃない、と言うか人間ですらない。だけど彼女がああなった一因は私にもある訳で。


 何とかして可憐で優しかったリリーちゃんを取り戻さないと寝覚が悪いどころの話ではない。うーん、とにかく考えろ、考えるんだ。


 知恵を絞ってリリーちゃんを救うのよ、マリアンナ・ウルベルト。



「あ」

「どうしたんだい?」

「お父様、リリーちゃんに正気を取り戻させる方法があるって言ったらどうしますか?」

「あれだけの才女だ。是が非でも助力は惜しまないさ、マリーには何か名案が有るのかい?」

「有ります。と言うか私かお父様以外に適任者はいません、だって……ウルベルト公爵家は王族の遠縁なんでしょ?」

「……流石は私の愛娘。そこに気付くとは……やっぱりマリーを勘当したのは失敗だったかな? ついでに感動もしちゃうよ」



 お父様もこの状況で親父ギャグはいいから。


 それにリリーちゃんを救うには今がベストタイミングだ、彼女は拳圧で四バカをダンジョンに押し込んで古代魔法でその入り口を完全に封鎖してしまった。


 これでこの国の諸悪の根源である元王族たちとオサラバ出来たことになる。そして彼女が今回の計画の最大に功労者である今しか無いのだ。これだけ結果を残せばリリーちゃんのために多少の犠牲を払っても許されると思う。



 私がお父様に視線を送るとお父様も覚悟を決めてくれた様で小さく首を振ってくれた。


 準備は全て整った。


 お父様は懐から一冊の本を取り出して私の前に差し出した。



「マリー、コレが禁呪法の魔法書だ。ただし覚えておいてくれ、チャンスは一回。魔法書はこの一冊しか残っていないんだ」

「リリーちゃんのため、私も覚悟を決めました」



 リリーちゃんを救う方法、それは禁呪法で彼女に自発的な更生を命じる事だ。


 天真爛漫で笑顔が似合う昔の彼女を取り戻せと私とお父様の力で強制的に命じるしか残された道はないのだ。そして禁呪法は使用に際して魔法書一冊を消耗品とする必要がある。


 本来この魔法書は禁呪法の使用を目的とするとは言え、扱いは国宝。つまり国宝一個を消費する事が私が言う『多少の犠牲』と言う訳だ。


 そしてお父様の言うチャンスは一回と言う意味はここから来ている。


 ここは気合を入れるわよ。悪役令嬢の力をリリーちゃんのために全部使ってやる。それくらいの気合いを込めて私とお父様は二人で禁呪法の詠唱を口ずさんだ。


 両手でハートマークを作って私たちが口ずさんだ言葉、それは……。



「「良い子になーれ、ニャンニャン」」



 覚悟を決めて口にした言葉だけど、やっぱり納得いかねえ。どうして運営はこの言葉を詠唱にチョイスしたんだろう? これを決めた担当者の趣味が手に取るように分かると言うものだ。


 でも乙女ゲームの開発者の趣味なんて意外とこんなものなのかなあ?


 私が悪趣味な詠唱に涙ぐんでいるとリリーちゃんの全身が淡い光に包まれていく。お願いだから成功して、そうで無ければこの乙女ゲーム『魔法の園』の世界は救いが無いとしか思えない。


 リリーちゃんを包み込む光の眩さに目を閉じる私とお父様はひたすらに禁呪法の成功を祈る事しか出来なかった。



 神様、本当にいるならどうかこの世界の真なるヒロインである彼女をお救い下さい。

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロインが壊れまくってるけどすぐ治ってしまうのか… いやまだだ、壊れたままの可能性も!?
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