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01

作風はかなりコメディ色を強く意識してます。


一般期な悪役令嬢ものは色々と作戦とか根回しをしてから回避したり天然にセルフで救われてると勝手なイメージを持ってまして。


ですので本作品は割りとその場しのぎと言うかとにかく機転重視。そんな作品となってます。恋愛ものではありますが、ゴリゴリの純愛は避けてなし崩し的に愛を受け入れる。そんな流れを意識して少しずつ少しずつ主人公が沼にハマるイメージですので、とうぞ最後までお読み頂ければ幸いですm(_ _)m

 やっべータイミングで前世の記憶を思い出してしまった。



「これよりウルベルト公爵家マリアンナ・ウルベルトの処刑を執り行う!!」



 私の名前はマリアンナ・ウルベルト、公爵家令嬢にしてこの国の第一王子の元婚約者。


 ここは乙女ゲーム『魔法の園』の世界。


 私はベタに乙女ゲームの世界に転生を果たしてしまった。これは良くある話、異世界に転生したり、ゲームの世界のキャラの生まれ変わったりと小説の世界では有りがちが状態である。


 ただ私の場合は最悪なタイミングで前世の記憶を取り戻してしまった。


 どのタイミングかって?


 ギロチン台の上に送られた状態です。


 このタイミングで記憶を取り戻して神様は私に何をしろと!? 普通は破滅フラグを回避出来る幼少期だったり悪役に目覚める前だったりと頑張れば幸せな未来を自力で準備出来るタイミングで記憶を取り戻すものでは無いのだろうか?



 ここは国の王都の大広場。



 周囲には私の処刑をその目で見ようと興味本位の野次馬がごった返す。ヒソヒソと私に同情を送る者や呆れの目を向ける者など様々な市民が押し寄せていた。


 その市民はまるでアイドルコンサートの如くスタッフに誘導されて大きな円を形成する。



 私はギロチン台に首を乗せるギロチンアイドル。



 両手を縄で縛られて首にはギロチン用の拘束具、強制的に下を向く姿勢故に目の前には血飛沫対策の桶がポツンと準備されていた。


 記憶を取り戻して一瞬で全身からブワッと脂汗を滴らせる悪役令嬢が今までどれほど存在しただろうか?



 生まれてすぐに死ねと言われた気分になって頭が上手く回らなかった。


 そしてそんな私に無機質な視線を向けるこの国の王と攻略対象の王子たち。その隣には良い子ちゃんを気取ったこのゲームのヒロインこと貧乏男爵家の令嬢リリアリア・エーレ。



 くっそおおおおおおおおお。



 確か私が貴族の学園に通う中で執拗に虐めていた記憶だけは有る。女子トイレの個室に閉じ込めて上から水をぶっ掛けたり、下駄箱の中に呪いの札を貼ったり。


 どれもこれも下らない嫌がらせばかり。


 だけどそんな嫌がらせだけで公爵家令嬢がギロチンにかけられていい筈がない。絶対にアカン判決やろ、と言うかこの国の裁判官はバカじゃないの?


 それとその判決を間に受けた王も王子も、皆んな同罪だ。


 なんかムカついてきちゃった。


 それと同時にあきらめちゃった。


 どうせ残り数分で死ぬ運命なら何をやっても構わないだろう。私の前世はこの乙女ゲームを全てやり尽くした女子高生だ。だからこのゲームのキャラはいい部分も悪い部分も全て把握済み。



 時間が経つにつれて私の死刑執行は着々と準備が進んでいく。


 そしてギロチンの刃が落とされる手前まで準備が進んで、その合図にと銅鑼を叩く音がした。ゲームのイベント通りならこの後は国王が私に最期の言葉を聞く流れの筈だ。



 ヨッシャ。



 やっぱりここは一発何かをかまして爪痕を残すとしよう。国王が席から立って視線を私に向けた。何かをやるならここしかない。



「罪人マリアンナ・ウルベルト、何か言い残す事はあるか?」

「……今から陛下の性癖について語ろうと思います」

「……へ?」

「この人、偉そうにしてるけど実際は重度のロリコンだからああああああああああ!! 昔、私は小さかった時に良く体を触られましたああああああああああ!! 小は大を兼ねるとか言って幼い私の胸を触ってきましたああああああああ!!」



 私を取り囲む市民たちが騒ぎ出す。


 市民たちは一斉に国王を不審に目で見だした。ヒソヒソと小声で耳打ちをし合う市民がチラホラと現れて、ギロチンイベントのスタッフたちが静まる様にと注意を促していた。


 真実は噂より奇なりと言うし。


 そもそも国王のロリコン疑惑は有名だから今更と言う感じもする。だってこの人って本当にロリコンだから。攻略対象である宰相様の好感度を上げると国王はその素顔をゲームの中で晒すのだ。



 私をギロチン台にかけた罪はこの場で精算させて貰います。


 ゴチです!!



「……これだから罪人は。死の間際になってまで虚言を吐くとは救い難いものだな」

「アンタのエロ本の隠し場所はベッドの下よ!! ドナテロ国王陛下のロリコン趣味がベッドの下に集約されてるってお城のメイドなら誰だって知ってるんだから!!」

「…………ふぁ?」

「あんな場所にエロ本を隠せば掃除の時に誰だって気付くんじゃい!!」



 ケッケッケ。


 国王に集中する汚物を見るかの如き蔑みの視線。死ぬ寸前の私からすれば溜飲が下がる光景だ。だけど私の復讐はこれで終わりじゃないのよ。


 まるで他人事みたいに自分と血の繋がった父を軽蔑する二人のイケメン王子、アンタらだって同罪なんだからね。


 アンタらも国王と同じく奈落の底にご招待じゃい!!



「レオナルド第一王子はああああああ、十八になった今でもたまーーーーーーーっに!! お漏らしをしまーーーーーーーっす!!」

「な、何いいいいいいいい!?」

「私は知ってるんだからね!! それとこれもお城のメイドなら誰でも知ってる事ですーーーーーーーーー!! んでもって第二王子のアンタ!!」

「……え? 僕?」

「そこの僕、第二王子のラファエロ!! アンタは十七になってもニンジンが食べられないお子ちゃま舌で王宮のシェフたちが頭を抱えてるって私は知ってますううううううう!! んで最後にそこのスカした宰相!!」

「ドキッ!!」

「ミケランジェロ、アンタに至っては今は亡き王妃とイケナイ関係だったって話じゃん!! 良くもまあヌケヌケと未だに宰相なんてやってられるって話よ!!」



 もう最高。


 スッと溜飲が下がった。


 どうせ死ぬならこの後のストーリーなんて私の知った事ではない。もしも運良く生き残れたら前世のバイト経験を活かして居酒屋でも経営したかもしれない。


 だけどこの状況はどう足掻いても私は助からない。


 だったら最期に好き勝手させて貰うって話よ。


 言いたいことを言い切って鼻息を荒げる私は四人の攻略対象をギロチン台の上から軽蔑の眼差しを送る。良く見ればヒロインも「うわあ……」とか呟いちゃって。


 ドン引きしながら肩を寄せていた第一王子から離れていくじゃん。



 良く見渡せば私の処刑を見学しにきた市民が私の暴露話を完全に信じきってる? ヒロインも信じてるみたいだし、これは上手くやれば今からでも生き残れるんじゃない?



 ……ここは一つ踏ん張ってみようかな?



「リリアリアちゃん、私はねえ本当はアンタのことが大好きだったの!!」

「へ!?」

「でもねえ私はそこの変態王子の元婚約者、だからアンタからその変態を遠ざけようとワザと虐めてたのよ!!」

「……嘘?」

「本当よ、アンタも私の暴露に心当たりがあるんじゃない!? あるからそうやって変態と距離を取ってるんでしょ!?」

「えっ……とお。……はい、あります。それはもうたくさん」

「おおい!? リリアリア、君は何を言ってるんだ!?」



 ケッケッケ。


 ヒロインも味方に引き込めた。


 第一王子もバカじゃないの? もっと堂々としていれば良いものを、そうやってアタフタと慌てるから市民も私の暴露話を信じるのよ。


 もう自分の口から漏れる笑いを止められない。


 ニヤニヤが止まらなくて顔の筋肉が一気に緩んでいく。拘束された私の近くに控える執行人のオッサンなんて私に同情の目を向けてるじゃない。


 トドメはアイツだ。


 民衆の中でヒッソリと死刑執行を見学している裁判官のジジイ、アイツは完全にやってしまったと言う顔付きだ。私と目が合って完全にビビっている。


 まあ私の言う事が真実ならアンタの判決は完全に冤罪……まではいかないか? それでも情状酌量の余地はあるだろう。



 お?



 裁判官のジジイが私の視線に罪悪感を感じたのか泣きながら民衆を掻き分けて歩き出す。そしてギロチンの近くまで歩み寄って私に話しかけてきた。


 これって私は助かるんじゃない?


 そう希望を胸に抱いて私は祖父の言葉を待った。



「……その話は全て本当だろうか?」

「今すぐの証明は難しいけどね。でもこの話、信じるかは貴方次第!!」



 良くあるインチキ商法の決め台詞を口にしてみた。


 このゲームに世界観は中世のヨーロッパ。だからこう言った言い方をしておけば大体の人間は信じると言うものだ。



 ケッケッケ。



 案の定、裁判官のジジイは判断に悩んでいる様子を見せる。まあ無実にしてくれと高望みはしない、せめて執行猶予くらいは欲しいものだ。


 さあ、貴方の答えはドッチ!?



「……国王陛下、このご令嬢、嘘を吐く者の目をしておりません。私も遺憾ながら裁判の判決を変えようと思います」

「な、何だと!? 貴様は私がロリコンだとでも言うのか!?」

「そこはこのご令嬢の仰る通り、お城のメイド方に確認すれば済む話ですので」

「ンな!?」

「死刑執行前のこの場で判決を覆す!! ウルベルト公爵家マリアンナ・ウルベルト、貴女は無実放免の上、王族方々からの名誉毀損により十億グランの賠償金の請求を認めます!!」



 民衆から喝采の声が沸き起こる。


 そして状況が一転して唖然とした表情を浮かばせる国王以下王子二人と宰相殿。私の元に駆け寄るヒロインは泣きながら私の無実を喜んでくれた。


 変態どもから救ってくれてありがとう、と。


 こうして断罪イベントギリギリのタイミングで命を拾った私は平和な生活を取り戻すことに成功したのだった。



 ヨッシャーーーーーーー!!

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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[一言] こんばんは! 初見です! Twitterでは応援ありがとうございます! そして拝読させていただきました! うーん! 言いたいことをいえてそして命が救われた!! これは中々エグい事をバラしまし…
[一言] その始まりだけでもう好きになりました(笑)
[一言] 勢いがばがばなこういう作品ほんと好きw 他のはぎりぎりセーフでも宰相いかんでしょ
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