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プロローグ
そこは何もない、白い部屋だった。
いや、ひとつだけ、白い天蓋付きの寝台が置かれていた。
天蓋の白い薄布は下ろされ、寝台を取り囲んでおり、横たわる人物をぼんやりと見せていた。
「・・・後のことはまかせたわね・・・」
ため息のような、小さな声が告げる。
その声に、寝台の脇に控えていた人物が頭を下げた。
「かしこまりました。」
寝台に横たわる人物は、小さく笑みを浮かべ、満足そうなため息をつくと、
「・・・また会える日を・・・」
そう告げたあと、呼吸を止めた。
それを感じとった寝台脇の人物は、さらに深く頭を下げる。
「・・・お待ちしております。」
その声は平坦で、感情は一切感じられない。
かの人物は、しばらくそのままの姿勢を保ったのち、やがて体を起こすと、静かにその部屋を出ていった。