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執務室の扉をセバスが一声かけ中から返事がしてから入って行く。
「旦那様、連れて参りました」
「ご苦労だった、セバス」
そう声をかけているのは、わたくしの父様である。
わたくしとよく似た顔立ちをしてます。
「お父様!何故行かせてはくれ無かったのですか」
わたくしは挨拶もせずに不貞腐れた。
時間をチラチラ見つつ、どうやってこの場から立ち去るか考える。
「はぁ…アイリーン…どうしてお前はそう…」
そう、今更ですが、この世界のわたくしの名です。
わたくしの名は、アイリーン・ゼン・クワノス、伯爵家の1人娘である。
「お父様!わたくし時間がございませんの!本日はわたくしにとって、とっても、とーっても、大切な日ですの!なので、御用があるのならば速やかにお話になって頂けませんか?」
「はぁ…お前は…」
あれ?何故かしら?お父様が頭を抱えてらっしゃいます。
解せぬ!!
「まぁ…よい。アイリーンよ、1人で外に行くのは辞めなさい、心配するだろう!」
ここは大人しく言うことを聞くことが話を早く終わらせるコツですわ!
わたくしは、わざとらしく見えない様に注意しながらお父様のお言葉に頷く。
「それで、今日はどこに行くつもりだったんだい?」
「下町ですわ!」
「アイリーン!!下町に1人で行こうとするとは、この前のお説教では足りぬようだな」
父様が怖い顔をしてわたくしを見つめる。
父様の目が見れず、そっと視線を外す。
そう、わたくしは記憶が戻ってから、度々護衛を巻いたり、メイドから逃げたり…そう…暴走していたのだ。
この世界をもっと堪能したくて、もっと知りたくて、気持ちが暴走してしまう。
そのたびに、父様、母様、護衛の人達、皆んながわたくしを探し、心配して、怒られていた。
「いつも言っているだろう?私達はアイリーンに何かあったら泣いてしまうよ。もし、万が一でも、私達の元から奪われる事になったら、私達は決して、明けることの無い暗闇に沈んでしまうのだよ。それを分かっているのかい?」
「はい…申し訳ございません」
わたくしも分かってはいるのです。でも、気持ちが先走ってしまい、つい忘れてしまうのです。
この世界はわたくしにとって憧れで、そして、何より生きる枷、どうしようもない事を分かってほしい…。
そんな事を考えていたら、父様の目が細められた。
ヤバッ…。
「はぁ、アイリーン、せめて、護衛だけは連れて行きなさい。もし、今後約束が守れないようなら、お前を学園に通うまでの間、外出を一切禁止とする!」
「そんな!?お父様〜」
「分かったな!話は以上だ」
私は項垂れながら父様の執務室を後にした。