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「エアーカッター」
あれ??
不発ですわね……
「ケント、この部屋魔法使えないみたいですわ」
「アイリーン様…」
青褪めていたケントが、今度は呆れ顔をしておりますわ。どことなくホッとした顔をしておりますが、無視しましょう!
ん〜この部屋、どうも、魔封じがされているみたいです。テンプレでは、こう言った場合、魔法を放って無双状態になるのですが、わたくしはモブなので無理と…そう言うことですわね。
「仕方ない、地道に脱出しますか!」
「いやいや、この部屋鍵かかってて開かねぇから…」
「ふふふふ」
「えっ、なんかこえーよ」
わたくしは、自分の髪留めを外し、分解していきますわ。そして、鍵穴に細い部分を挿します。
え〜と、確か、ここを、こうして、こうですわね?
暫くガチャガチャしておりますと、ガチャリと鍵が開いた音が聞こえてきた。
わたくしはドヤ顔でケントの方へ向きます。
「淑女の嗜みですわね」
「いやいや、そんな嗜みねぇよ、平民の俺でもわかるぜ」
本当に授業で習うんですのよ。貴族は誘拐されやすいですからね。イザベラ様もきっと習ってるはずですわ…今度聞いてみましょう。
ガチャリ、扉が空いた音がいたしました。
目を丸くした男の方が1人、ドアを開けたままこちらを見ておりますわ。
ガチャガチャしておりましたもの、気がつかれますわね。
男は状況を確認し、仲間を呼ぼうと大声を出そうとしたその瞬間、わたくしの回し蹴りが炸裂致しました。
あ、あ、危なかったですわ。
ドサリと音を立てて、男が崩れ落ちます。
見つかるのも時間の問題ですわね。
先程から、下の階がバタバタと音が致しますもの。
「さて、他の方が来る前にここから逃げますわよ!」
「えっ?えっ?これも嗜みか?そんな貴族あんのか?貴族の女は皆んなこうなのか?」
混乱しているケントの手を引き、部屋から走って逃げますわ。
もぉ〜!ご自分で走ってくださいませ!
そして、護身術は嗜みでしょうが!!!心で叫びわたくし達は階段を滑り落ちた。
その先に待っていたのは…。
青褪めたわたくしの護衛騎士と…
ニコニコと笑う…婚約者様でした。