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イザベラ・デュセ・カラベル

わたくしは、イザベラ・デュセ・カラベル。

公爵家の娘として生まれてきました。


ジル殿下と歳が同じと言うだけで、婚約者候補にあげられ、いくつもの我慢を経験して来ましたわ。


芝生を自由に駆け回る事も

友と恋愛話しで盛り上がる事も

誰かに心を許す事も許されず。


いつしか、息が詰まる感覚に陥ります。


そして、周りに集まってくる人達は、わたくしでは無く、わたくしの後ろの家を見て、さらにはこの先の利益を見ている事に気がついたのは、僅か5歳。


殿下の婚約者がわたくしに決まると思っていたあの日に、わたくしは全ての人の好奇な眼差しと、憐れみ、そして、嘲笑うかのような笑みをこの身に浴びました。


友だと思っていた方々は、次々に、わたくしを馬鹿にしていきます。

仲良くしていたのが馬鹿みたいにと、損をしたかのように振る舞われ、

そして、殿下との仲を取り持ってほしいとわたくしを踏み台にしようと近づいてくる者ばかり、わたくしは心が潰れそうになっていました。


そんな中、たった1人だけ、わたくしを見てくれている瞳に気が付いたのです。


滅多にその姿を表舞台に表さない方。伯爵家の1人娘アイリーン・ゼン・クワノスですわ。


なんでも、変わった性格をしていると、親の栄光を自分の事にしているだとか、沢山の噂を聞きましたわ。


でも、わたくしを見つめるあの目は、他の御令嬢と違い、キラキラと、まるで、わたくしを尊敬していますと言っているかの様に見つめて来ている気がします。


彼女とお友達になれるでしょうか…。そんな淡い期待。


でも、わたくしは、自分で動くことが出来ません。

わたくしは、まだ、殿下の第一候補ですから、自由な時間など無いのです。

わたくしは、お父様の駒に過ぎません。もし、彼女に話しかけて、お父様に見つかれば、困るのは彼女なのです。


誰か…誰か…わたくしを…助けて下さいませ…。


そんな感情が毎日わたくしを襲います。


定期的に王宮へ連れて行かれ、殿下に会わせられます。

殿下もわたくしの立場を思って追い返す事はしない。

少しの世間話。でも、そこに淡い恋心はお互いにありません。あったのは、義務。


そんな関係で、早、10年。

今年、殿下は10歳になられます。その次の春に婚約者の発表。お父様から、毎日王宮へ行けと、指示をされ、わたくしは痛む胃に鞭を打ち、毎日通います。


でも、殿下は嫌な顔せず、わたくしを出迎えてくれます。

それに、申し訳ない気持ちになり、嫌だと逃げ出したくなる。


そんな憂鬱な日がこれからも続くと思っていましたが、ある日殿下に会うと、雰囲気が少し違いました。


形式的な会話では無く、わたくし達は初めて素で話したと思います。

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