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母様が、そう言ってわたくしの前に出した手紙は。
イザベラ・デュセ・カラベル
カラベル領の紋章と共にそう書かれている文字を目の前にし、わたくしの顔が青ざめた。
それと同時に納得もした。
彼女は5年前からずっと、いや…生まれたその瞬間から、第一王子殿下の婚約者候補だったのだから。
彼女からすれば、いきなり現れた名も知らぬ女に、横から奪われたようなもの。
一言物申さなければ気が済まないであろう。
そう、わたくしは結論付けだ。
「もしや、お茶会のお誘いでしょうか?」
「そうよ…よく分かったわね」
母様が心配そうにわたくしを見るが、そこは微笑んでおく。
「お茶会の開催日はいつですの?」
「明後日よ」
「そうですか、お母様は一緒には行けませんわね」
「そうね…わたくしは、今大事な時期ですから
一緒に行けない事が、何よりも不安なのですが…」
そう、母様は、お腹の中に赤ちゃんがいるのです!
待望の男の子をその身に宿す母様を、陰謀だらけのお茶会へ出席させるなど、論外である!
「お母様心配なさらないで下さい、わたくし、1人でお茶会に参加できますわ」
「くれぐれも、暴走しないように、母と約束よ」
「はい!お母様!気をつけますわ」
母様のジト目を無視し、アンに明後日着るドレスを選んで来てもらう。
手紙を頂いた事には青ざめてしまいましたが、初、イザベラ様とご対面ですわ。
いつも、出席するお茶会では、遠くからそのお姿を拝見しては拝んでおりましたが、今回は目の前にあの!イザベラ様を見る事が出来ますわ!
脳裏に焼き付け、声は耳に刻み込まなければ!
そして!わたくしは、貴女様の大好きな第一王子殿下を好きでは無い事をしっかりお伝えし、いつでも身を引く覚悟は出来ていると必ずやお伝えしなければなりません!
あと、応援している事も、伝えるのです!
イザベラ様が言い寄れば、あの第一王子殿下も考えが変わるかもしれませんわ!
わたくしは、モブへとシフトチェンジまだまだ可能です!
よし!わたくしは気合を入れ、お茶会に持っていく物を準備していく。
そして、あっという間に、お茶会の日を迎えた。