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「お父様!どうにか、どうにか、婚約者の発表までに、取り消す事は出来ませんか」
わたくしは、改めて事態の重さを理解した。
青ざめる顔
滴り落ちる尋常じゃない程の汗
そして、これから待ち受ける試練という名の拷問
お妃教育など…わたくしに…そんな時間は無い!
この世界を愛でて愛でて、これから起こるであろう
出来事をこの目で、この耳で、見て聞き、悶えないといけませんのに。
「王家からだからね…何か欠点がない限り難しいな」
お父様は顎に手を当てて考える。
「虚偽をする事も出来ん。どうしたものか」
「そもそも、何故、イザベラ様を差し置いてわたくしなのですか!」
「なんでも、ジル殿下の強い要望だ」
%¥$*〆%¥○×!!!
神様、仏様、エル様、なんの嫌がらせでしょうか。
わたくしは、天へと向かい手を組み涙する。
「アイリーン、泣いてるところ悪いのだが、明日、その…婚約者同士の顔合わせがある、用意するように、以上だ、俺の方でも何かいい案が無いか考えておく。だが、覚悟するように」
父様…せめて…娘の顔を見て言っていただけませんか?
何かいい案など、無いとその顔が言ってるではありませんか。
わたくしは、お父様をジロリと睨み、部屋を後にした。
廊下から窓をそっと覗く。
辺り一面闇が広がり、何かの遠吠えが聞こえる。
それは、まるで、わたくしの心を表しているようだった。
わたくしの心は沈み……自分の部屋へと歩いていく。
部屋に入る前、一度顔を伏せ、気合を入れた。
それは、まさに、戦いに行く戦士のようだったと
後ろに控えていたアンに後日聞いたのだった。