10
「わたくしは、妾という事でしょうか?」
そう、わたくしが言うと、父様の顔が青ざめていきます。
「そんな事、ある訳なかろう!」
父様は大声で叫び言葉をさらに紡ぎます。
「我が国は、一夫一妻!子供が産めぬなどの特殊な事情が無ければ、側室、妾は法律により持てん!そもそも、俺の大事な娘を妾など!!そんな話が出た時点で、これまで王家に勤めて来た我等を仇で返す様なもの。そんな扱いであれば、我が家、民が許すわけがない!爵位共々返し、我が領地は独立の為立ちあがろう!」
いやいや、妾ぐらいで、独立ってやり過ぎですわ…
わたくしは、冷ややかな目で父様を見つめる。
「それに、何故、そんな発想になったのだ?俺は嫁と言ったはずだ、それは、将来この国の王妃に決まっているであろう!」
父様が手で顔を覆ってしまわれました。
だって、それ以外無いでは無いですか…。
「お父様、第一王子殿下は、婚約者がいらっしゃるじゃありませんか?」
わたくしが、そう言葉を紡ぐと、お父様は驚き、そして呆れた。
盛大な溜め息をお吐きになると、残念な子を見るような目でわたくしを見る。
あれ?何故?そんな反応をされるのでしょうか?
わたくしは間違っておりませんわよね?
「アイリーン…もう少し、本当に、ほんの少しでもいい…周りに目を向けなさい」
「えっ!?」
「第一王子殿下に、婚約者はいらっしゃらないよ」
はぁはぁあああああああああ!!
「えっ、イザベラ様が婚約者では無いのですか?あの完璧で美人で出るところ出て、ツンデレなあの方が、なぜ!!」
食い気味で父様に問えば、父様は目を丸くし
「ジル殿下が10歳になった次の春に婚約者の発表と陛下が宣言しただろう!まさか、忘れていたのかい?
だからこそ、今まで、沢山の御令嬢や家が、陛下や殿下にアピールしていたであろう」
「え……じゃぁ…まさか…ですの…」
「そういう事だ、次の春、正式にお前がジル殿下の婚約者だと発表されるんだ」
あああ…倒れたい。