ジル・フォン・エルバス 3
僕達は食事場を後にし、町を歩く。
歩きながら、考えた。
不自然だと。町の人も彼女の功績を全く隠していない
なのに、何故、他の領に気が付かれないのか。
僕は不思議で仕方なかった。
「そう言えば、食事場でも言っていたけど、噴水まで行ってみようかな、一応、浄化の効果が切れていないか確認もしたいし」
僕がそう言うと、アランは案内し始める。
そして、噴水近くの木の側で隠れる様に噴水を見る彼女を発見した。
周りの民は、呆れ顔で通り過ぎて行く。
見慣れた光景なのだろう。通り過ぎて行った民からは
「あれさえ無ければ完璧な御令嬢なのにな…」
そんな声が聞こえて来た。
僕は興味が湧き、アランに1人で噴水を確認して欲しい事を伝えた。そして、僕は彼女へ近づく。
それが、僕と彼女の最初の出会い。
それが、僕の運命を変えたんだと思う。
それ程までに彼女は、僕の脳裏に強烈な印象を与えた。
見た事もない眼鏡?の様なものを持ち噴水を見つめる彼女に僕は話しかけた。
凄く、邪魔者扱いをされたけど…。
彼女の護衛が青ざめていくが僕は口に手を当てて黙っている事を伝える。
そして、彼女の姿を見て、何故、この事実が伝わらなかったのかが分かった。
多分探りに来た者達は彼女を見て信じられなかったのだ。
この彼女が、素晴らしい功績を残せるわけが無いと、
変わり者の彼女をどうにか嫁がせれるようにと、領主の優しさだと思ったのだと思う。
実は僕も途中までは半信半疑だった。
だが、彼女は望遠鏡を自分で開発したと僕に言った。
その話す姿を見て彼女が嘘をついていないと分かった。
さて、彼女が目的を果たすまで、後ろで待ちますか。
そう思い、彼女を観察しながら待った。
待った甲斐があり顔を一瞬見たけれど、彼女は奇声を発して、物凄いスピードで馬車へと戻り去って行った。
その姿に、僕の笑いが止まる事は無かった。
アランは何が起こったのか分からず、疑問を浮かべ、僕の顔を見て説明を求めたが、僕は秘密にした。
さて、僕にはやるべき事があるな。
そう笑顔を浮かべ、父上が待つ王都へ帰ったのだった。
次回主人公へ戻ります。