ジル・フォン・エルバス 2
その領地は、圧巻だった!
道はどこもかしこも整備されており、そこに住む人達は笑顔に溢れていた。どこを見ても、ボロボロな服を着ている人も、食べ物を乞う人も居なかったのだ。
「ジル、情報を集めるなら、やっぱ食事場だな」
アランの案内で食事場へ行く
「いらっしゃい!」
元気な声をした女将が僕達を出迎えてくれた。
オススメを聞き何品か注文すると、食べ盛りだからと言って数品おまけしてくれた。
断りをいれるが、お嬢様に怒られてしまうからと笑って置いて行く。
町の人達からはお嬢様の話が沢山聞こえて来た。
「また、お嬢様、下町まで来て、護衛の人と鬼ごっこしてたな」
「お嬢様、泥だらけで孤児院の子と遊んでたぞ」
「この間なんか何かとんでもない発明を閃いたと叫んでいらしゃったよ」
「俺は、噴水前で悶絶?興奮?したお嬢様を見たぞ」
「「「「本当、あのお嬢様は変わってるよな」」」」
「「「「でも、この民の宝だな」」」」
「「「「ちげぇーねぇー」」」」
そんな声と笑い声が聞こえて来る。
「ジル、この領地の御令嬢に会った事あったか?」
「いや、僕は無いね」
「どんな御令嬢なんだ?」
アランと僕が話していたら、1人の活発そうな年配の方が近付いて来た。
「なんだい、あんたら、この地の有名なお嬢の事知らないのか?」
「僕達は、他の領地から来たからね」
「なら、お嬢の素晴らしさを語ってやろうぜ、お前ら!」
そう年配の方が言うと、次から次へと声が飛んでくる
「お嬢様は井戸の水を楽にくめる装置を開発された」
「町に無料の病院を作って下さった」
「救済処置と言う法律を作ってくださった」
「私達の子供に無償の学校を作って下さった」
「新しい発明を開発なされた」
「特産品を発明なされた」
次々に挙げられる功績に、目眩がした。
「そんな、凄い御令嬢が何故今まで陛下にバレなかったんだい?そんな御令嬢なら王子との婚約に名前が載りそうなのに」
そう僕が問うと、辺りが静まり返り、目線を外した。
そして、意を決したように1人の青年が声を発する。
「性格が大分変わっているのです」と…
残念な子を見る様な、民に、僕は思わず笑ってしまった。