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続くのでR(あ~る) 年上の彼女

最近の小学生女子はバレンタインデーで友チョコなるものが流行っているらしい。



本来は意中の男の子にだけ送るはずだったチョコを、友達同士で送り合っているのだ。


まぁ昔から義理チョコとかはあったけど……

友チョコは送る相手が多いみたいで、何十個も作らなければならなかったりするから厄介だ。




明日はホワイトデー。


妹の真子まこが学校から帰って来てから大量のチョコ作りをしている。

バレンタインデーでもらったからお返しだと言っているのだけど……

そもそもお互い送り合ったんだからお返しなんていらなくない?

小学生女子の付き合いって大変だな……



「お兄ちゃんもいっぱい女の子からチョコもらったんだからちゃんと返しなよー。」

リビングでくつろいでいると真子が話し掛けてきた。


「返さないよ。彼女にしか。」



僕には年上の彼女がいる。

すごく綺麗で…でもかわいくって……

誰にでも優しくて仕事も出来て、いつもフワッと良い香りがしてて……


「お兄ちゃん顔ニヤけてる…ヤラシイ。」

「うるさい。」





彼女、美和は服飾関係のOL27歳。


はっきり聞いたことはないけれど、僕と付き合うまでは彼氏いない歴27年だったと思う。




僕にとっても初めての彼女。


美和は僕より12歳年上なんだ。



騙されてないかって?

それでもいいよ。僕の方がベタ惚れだし。












「大変っじぃじやっぱり駄目だったみたい。」

母が慌ててリビングに入ってきた。


じぃじとは、僕から見て父方の曽祖父だ。

去年から入院していたのだがここ最近調子が悪く、昨日から父だけが田舎に帰っていた。

百歳を越えていたので大往生だ。


お葬式は当然僕も行かなければいけない。

明日の朝、美和にお返しを渡そうと思っていたんだけど……


「彰人は卒業式があるから来なくていいわよ。」

「えっ、そうなの?」




16日金曜日は僕が通う中学校の卒業式がある。


とは言っても、中高一貫の男子校に通っているので形式だけって感じで卒業式特有の感動的なものはなにもない。



しばらくはこの家で僕一人か……

うん?てことは──────……




「……お兄ちゃん、彼女連れ込む気でしょ?」



────────ギクっ。



「お母さ〜んっお兄ちゃんがーっ!」

「ちょっ……真子っ余計なこと言うなっ。」



「彰人も男の子だからねぇ。妊娠だけは気を付けてよ?」

「なっ……お母さんっ!」



理解がありすぎるのも困る。

だいたい妊娠なんて……

美和とはまだ軽いキス止まりなのに。




「お兄ちゃん自慢の可愛い彼女の写真見せてよ〜。」

「彰人、アレ持ってるの?アレは?」


「二人ともうるさいっ!」



オープンすぎるのも困る。

特に今日は二人を止めてくれる父がいないのでバツが悪い。

そそくさと自分の部屋へと避難した。







──────美和が僕の家に……


来てくれたらどんなに嬉しいだろう。

もしかしたら今僕が寝転がってるベットで美和と……


ヤバっ、想像だけで顔が赤くなる。



僕だって男だ。

好きな彼女ともっと深く繋がれたらなって思う……


でも…あと一歩が踏み込めない。

美和の家だとどうしても緊張してしまう。



自分の部屋だったらそこまで緊張しないで済むかな?



そんなことを考えてたら美和を家に呼びたくて仕方なくなってきた。





でも問題は来てくれるかどうかだよな……


中学生や高校生の女の子ならともかく美和は大人の女性だ。

家族がいないからってそう簡単には僕の家には泊まってくれないだろう……



さて…どうしようか。

















美和の最寄りの駅と僕の学校のある駅が同じなので朝は毎日のように会える。

まあすれ違って挨拶する程度なんだけどね。



美和はいつも化粧して髪巻いてスーツを着ている。

普通なら近寄り難いキャリアウーマンなその格好も、優しい雰囲気の美和がすると綺麗なお姉さんて感じになる。



今日はホワイトデー。

僕はすれ違いざまに美和に小さな紙袋を手渡した。


なんか悪い取引をしてるみたいでちょっとワクワクした。




すぐに美和からメールがきた。



「私の好きなスタンプのキャラだ。ありがとう。」


僕はキーホルダーを美和にプレゼントした。

ホントはもっと良いものをあげたかったんだけど……

美和はホワイトデーのお返しのことを考えて、バレンタインデーはあまりお金のかからない手作りチョコにしてくれた。

美和の好意を無視するわけにはいかない。



「やっぱりアキにそっくりだね。」

「そんなに似てる?」


「ぷくっと膨れてる頬っぺがそっくり。」

なんか子供扱いされてる気がする。


「キーホルダーに鍵がついてるんだけど何の鍵?」

「僕の秘密がわかる鍵だよ。」


「秘密?」

「そう、秘密。知りたくない?」


「知りたいかも。」

「じゃあ使ってみる?」



「もしかしてアキの家の鍵?」

バレてしまった……

作戦失敗だ。



「今週は家族がいないから美和が来てくれたらなって思ったんだけど……ダメ?」

もうストレートに誘ってみた。

でも美和からの返事が来ない……

断られそうな気がしてきた。



「一人じゃ寂しい。」

「美和が作ったご飯が食べたい。」

「美和と一晩中おしゃべりしたい。」



「美和と────……」



……H がしたいと送りそうになった。


ヤバい。





─────でも……



すごく恥ずかしがり屋の美和には、気持ちを伝えとかないと先には進めないような気がする。


文字を打ち、送信ボタンをドキドキしながら押そうとした時……電話が鳴ってビクゥっとなった。


美和からだ。



「もしもしアキ?明後日の金曜日って卒業式だよね?」

「うん。そうだよ。」


「じゃあお祝いする?……アキの家で。」

「来てくれるのっ?」


「うん…仕事が終わったら行くね。じゃあ。」




美和が家に来てくれる……!

夢みたいだっ。


登校中なのに顔が緩む。

ダメだ……今日は一日中ニヤけてそうだ。



















卒業式が滞りなく終わり、クラスメートから打ち上げに誘われたのだけど断った。

今日でお別れでもないし高校でも同じ顔ぶれだしね。


美和は今日のために仕事を半休にしてくれた。

有給使わなきゃいけないから気にしないでと言ってくれて…美和の優しさがすごく嬉しかった。




15時過ぎに玄関のチャイムが鳴りモニターを見ると、美和が僕があげたキーホルダー付きの鍵をユラユラと振っていた。


「これ使って入っても…いい?」


すごく恥ずかしそうに言うので僕まで照れてしまった。



美和を玄関で出迎えると花束を渡してくれた。

それは春らしい色合いで、美和の雰囲気にぴったりな愛くるしいスイートピーの花束だった。

スイートピーの花言葉に門出というのがあるらしい。


「卒業おめでとう。次は高校生だね。」

「うん。ありがとう、美和。」


年の差はどうしたって縮めることは出来ないけど、中学生の時より少しだけ美和に近付けたような気がした。

早く、働いて自立している美和に追いつきたい……



その時まで美和は僕のことを


待っててくれるのかな……?








美和は台所で僕がリクエストしたオムライスを作ってくれている。

いつもは母が使っている台所……

美和が立っているのが信じられない。


「頂きま〜す!」


やっぱり美和のオムライスが世界一美味しいっ。

ポテトサラダも卵がいっぱい入っていてとても美味しかった。


「これってお酒?」


美和がグラスに入っていた飲み物を飲んで驚いたように言った。


「父と母が酒好きで色んなのがあるんだ。それはアブサンていって二人が一番好きなお酒なんだけど、どう?」

「すごく美味しい。甘くて爽やかでジュースみたい。」

そう言って美和は嬉しそうにお酒を飲み干した。


美和はお酒は好きな方なのに僕といる時は飲まない。

きっと、未成年の僕に気を使ってるんだろうな……










ご飯を食べ終わり、リビングのソファで二人並んでテレビを見ていた。

テレビの内容なんて微塵も入ってこない。


これからどうそっちの雰囲気にもっていったらいいのだろうか……?

まずはお風呂が先だよね?

どっちから先に入るの?

もう二人で入っちゃう?

僕は良いけど美和が無理か……


……いや、やっぱり僕も無理だっ。




美和が甘えるように頭を擦り寄せてきた。



えっ………

まさか美和の方からモーションかけてくるだなんて思いもしなかった。


「美和……」


美和の顔を覗き込むとなんだか妙に色っぽい。

ピンクに火照っていて…唇も艶っぽくて……


そんな顔で僕を見つめ返してくるもんだから心が騒がないわけがない。

美和の方から顔を近付けてきた……



「美和……好きだよ。」



唇をそっと重ねようとした時……



美和がいきなり僕の首筋をがぶっと噛んだ。

いっ……痛いっ!




「ちょ、ちょっと美和っ?」


慌てて引き離すとなんだか様子がおかしい。

目がとろ〜んとしていて……


もしかして酔ってる?


美和はお酒に弱くはないはず。

1杯だけだったし、大きなジョッキで飲んだわけでもないのになんで?




─────まさか………


美和に飲ませたアブサンのお酒。

父も母もいつもこれを普通に飲んでいるのだけど……


台所に置いていたアブサンのラベルを見てみるとアルコール度数40度と書かれてあった。

これって……

スマホで度数について調べてみた。

ビールのアルコール度数……平均 5度。


えっ……?

40ってことはビールの8倍?

ビール8杯を一気に飲んだってこと?




「ごめん、美和。あれキツイやつだ。気分悪くない?」

「大丈夫だよ〜。」


そう言いながら僕の首に両手をまわし、う〜んと言いながらキスをしようとしてきた。

嬉しいっ。すっごく嬉しいけど明らかにいつもの美和じゃない!


「水持ってくるよっ。」


僕は急いでグラスに水を入れて美和に飲ませようとした。


「水じゃなくてさっきのお酒が飲みた〜い。」

「アレはダメっ。美和…お願いだから水飲んで?」


ヤダヤダと駄々をこねて言うことを聞いてくれない。

ダメだ…完全に酔ってる。




酔い覚ましにいい方法ってなんだろう?

スマホで調べようとしたら美和にひょいと奪われた。


「私よりスマホ?」

ぷっく〜っと頬っぺを膨らませながら睨んできた。

「違うよっ美和のために調べようとしただけで…良い子だから返して。ね?」


参った。美和って酔ったら子供みたいになるんだ。



「アキの部屋に行きたいっ。」

「僕の?」


美和がスリスリと体をくっつけてくる……

こんな状態の美和を僕の部屋に連れてって大丈夫だろうか?

美和がというより僕の方が襲われそうな気がする……



「もうちょっと酔いを冷ましてから行こうか?」

「私、酔ってないニャン。」

いや、絶対酔ってるよね?

両手をくるっと巻いてネコのポーズまでしてるし。





「アキはしたくないの?」


「えっ……?」



美和の熱っぽい視線に収まっていた気持ちが一気にはね上がる。

僕もそのつもりで美和を家に呼んだ。

美和にもっと…触れてみたかった……



───────でも……




「アキ…大好きだよ。」


美和が僕の膝の上に乗っておでことおでこをコツンとくっ付けてきた。

こ、これは嬉しすぎてヤバいかも……


だからといってこの雰囲気に流されるわけには行かない。

今の美和は酔っていて、いつもの照れ屋な美和じゃない。


なにより、明日になったら全部忘れてるってことも有り得た……




「今日は止めよ…美和酔ってるし。」

自分にも言い聞かせるように言った。


「私、酔ってないニャン。」

「酔ってるからっ!」


「……アキは私のこと嫌い?」

「嫌いなわけない…大好きだよ。」


「じゃあなんでしてくれないの?」


美和がウルウルした目で見つめてくる……

ヤバいヤバいヤバい。

その目はホントに反則だからっ。

美和の背中に手を伸ばし、ギューって抱きしめた。



「大好きだから今日は我慢するのっ。」



もう今すぐにでも押し倒したいぐらいギリギリな状態なんだけど……

ひたすら我慢我慢と言い聞かせた。




「……アキもいつか一緒にお酒飲もうね。」

「うん。二十歳になったらね。」


二十歳まで……僕はあと5年もある。



「美和……その時まで待っててくれる?」



美和がそれに応えるようにギューってしてきた。





「……待つよ。ず──っと楽しみに待っとく……」




そう言ってそのままむにゃむにゃと寝てしまった。



かわいい寝顔……

僕の腕の中で安心しきったように眠る美和は、小さな女の子のように見えた。





僕をずっと待つと言ってくれたことが


すごく嬉しくて……




「ありがとう……美和。」




美和のおでこにそっとキスをした。


















「本当にごめんなさいっ寝ちゃうだなんてっ。」

「いいよ。僕の方こそあんなの飲ましてごめん。」


朝起きた時、美和は昨日のことを全然覚えていなかった。

……良かった…我慢して。

心配していた二日酔いも無いようだし、本当に良かった。



「私…アキに何かしなかった?」


美和はお酒でいろいろしでかしているらしい。

だから外では飲まないようにしているし、飲んでも1杯だけにしていたようだ。


「すぐ寝ちゃったから大丈夫だよ。」


ホントは首筋を噛まれたりニャンとか言ったり、したいっとか大胆に誘われたのだけど……


昨晩のおてんばな美和ちゃんは僕だけの秘密にしておこう。



また…会いたいかな。














今日の昼には家族が帰ってくるので、美和はもう帰らなければならない。

今回も美和のパジャマ姿とスッピンは見れなかった…残念。


美和を送るため駅まで一緒に向かった。



「これあげる。卒業のお祝い。」


改札口で美和が小さな紙袋をくれた。

開けてみると、僕が上げた男の子のキャラの女の子バージョンが入っていた。

そのキーホルダーには鍵がついていた……



「この鍵って……」

「私の秘密がわかる鍵だよ。」


「秘密って?」

「知りたい?」



美和がイタズラっぽく答える。

美和の秘密…酔った美和以外にまだなにかあるのだろうか?

すっごく知りたい。






「この鍵…今日使ってもいい?」










ホワイトデーの秘密の夜は


まだまだ続くのでR(あ〜る)。







そして、二人のジレったい関係も


ずっとずっと続くのでR(あ〜る)。






♡おしまい♡











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