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続くのでR(あ~る) Valentine

ちょっと…困ったことになってるんだよね。

私を悩ますのは27年目にして初めて出来た彼氏こと、年下の美少年。



12歳下。

干支同じ。

中学3年生。



はあ?って感じよね。

いいのいいの。わかるからその気持ち……

それで付き合って三ヶ月が過ぎたのだけど、先週その美少年からきたメールってのが……


「親からもらう初めてのプレゼントはなんだと思いますか?」


美少年お得意の質問系メール。

この時点で何が言いたいのかわかっちゃったんだけど……



「プレゼントって?」

「僕ももらってるんだけど……」


うん、わかってる、わかってるよ。


「僕のはねぇとか、ちょっととか、あのねっていうんじゃないよ。」



私から名前で呼んで欲しいんだよね。

はあ…困った。どうしよう……



えっ?それくらい呼んでやれよって?

だって名前だよ、名前で呼ぶんだよ?

男の子を下の名前で呼ぶなんて小学生以来だよ。

いや、小学生の頃でも君付けで呼んでたしっ。

それに私は女子高、女子大、今の職場もほぼ女子のみだ。

長い間男の人を名前で呼ぶような環境ではなかったのだ。


美少年は私のことを美和って呼び捨てにしている。

12歳も年下なのに生意気よねー。

ホント…顔が赤くなる……

うん?嬉しそうって?まぁそれは……ねっ。


そう、だから私も美少年を名前で呼ぶなら呼び捨てでしょ?

私の方が年上なわけだし……




「名前じゃなきゃもう美和の方振り向かないから。」


かわいいい男の子があっかんべーってしているスタンプも一緒に送られてきた。



ああもう…怒っちゃった。


ホントいちいちかわいいんだから。

思わず顔が緩んでしまった。














とりあえずメールで呼んでみようか……

──────あ…あ……

だっ、ダメだっ。

メールでも恥ずかしいっ!


「美和どしたの?顔赤いし、さっきからため息ばっかりだし、ニヤけてるし……」


今は会社の昼休み。

自分の席でスマホとにらめっこしていたら、隣のデスクに座る同期の麻里が話しかけてきた。



「……ちょっと悩んでて……」

12コも年下の彼氏にどうやったら照れずに名前を呼んであげれるかを……なんて言えない。


「明日バレンタインだもんね。彼氏へのチョコレートまだなんにするか決まってないの?」


………バレンタイン?



「わっ、忘れてた!」

「えっそうなの?先週はそれで悩んでなかった?」


悩んでたけど……美少年からのメールで頭からふっ飛んでしまっていた。



「どうしよう…なにあげたらいいと思う?」

「私は高級チョコ買ったけど、美和の彼氏は学生だよね?う〜ん……」



美少年からのホワイトデーのお返しのことを考えたらあまりお金をかけたくはないのだ。

手作りが一番お金がかからなくて気持ちがこもってて良いかなとは思うんだけど……

これぞ本命チョコだっていうくらいクオリティの高いものを作れる自信がない。

そもそも私は本命チョコというのを誰かにあげたことがない。


美少年くん…男子校なんだけど電車通学してるせいか去年もいっぱいチョコをもらったらしいんだよね……

中にはお菓子作りの上手い子もいただろうし。


別に競うつもりはないけれど、年上女性としての見栄もあったりで……う〜ん、悩む。





あまりにも私が悩むもんだから、麻里が彼氏に電話して聞いてあげると言ってくれた。



「もしもし?私。学生の頃さあ、彼女からもらったバレンタインのチョコでなにか嬉しかったのってあった?」


麻里の彼氏は年上の体育会系で豪快な人だ。

先日、彼氏からプロポーズをされたらしくてただいま婚約中である。



「そうだなぁ〜。」


麻里が私にも聞こえるようにスピーカーにしてくれた。





「チョコの女体盛り。」





………………



にょ、にょたい?

想像だにしない答えが返ってきた。


麻里が般若のような顔になってトイレに走って行った。




「どんな女だよそいつ?!……はあ?自分が頼みまくってやってもらっただって?えっ……チョコを体に塗りまくる?私にもって……やるかボケえっ!!」



麻里声おっきい……

オフィスに丸聞こえだから……



麻里の彼氏って肉食系通り越して野獣系なんだよね。

小動物系の美少年にそんなこと……


うわっ……想像しただけで湯気が立ちそうだ。



女体盛りは有り得ないのだけど、美少年だって男の子だ。

いつまでも軽いキス止まりというわけにはいかない。

本当は年上の私がリードしてあげなきゃいけないんだろうけど……

なにせ美少年が初めての彼氏。

そういう経験が私には全くないのだ……















仕事が定時で終わり、最寄りの駅の改札口を通ると美少年が待っていた。


「美和、お仕事お疲れ様。」


美少年の笑顔に一日の疲れが一瞬でなくなるくらい癒された。

でも今日は会う約束はしていない。



「どうしたの?」

「美和に会いたかったから。」


会いたかったからって…今朝会ったばっかりなのに?

私の最寄りの駅と美少年の学校のある駅が同じなので朝は毎日のように会える。

まあすれ違って挨拶する程度なんだけど……


「どうしようかなと思って……」


美少年が手に持っていた紙袋を私に見せてきた。

中にはチョコがぎっしりと入っていた。

まだバレンタインは明日なのに、もうこんなにもらっちゃったの?

美少年……想像以上にモテモテだ……



「甘いの好きよね?ちょっとずつ食べたらいいんじゃないの?」


捨てるわけにも誰かにあげるわけにもいかないだろうからそう答えたのだけれども……

美少年はムッとした顔をした。


「美和はなんとも思わないんだ。」


不機嫌そうにそう言うと、頬を膨らましてそっぽを向いてしまった。

えっ…この反応って……

もしかしてすねちゃった?


「少しはヤキモキやいてくれるかなって思ったのに……」


もしかして私にヤキモキをやかそうとして待っていたのだろうか……?

ヤバイぞ私…キュン死にしそうだ。




……もう、仕方ないなぁ。




「お腹減ってない?なにか作ってあげようか?」

美少年の顔がパッと明るくなった。


「美和が手料理作ってくれるの?」

「うん。食べたいものある?」



「オムライスが食べたいっ。」



食べたいものまでかわいいんだから。

とりあえず材料を買いにスーパーに行こうと歩きだしたら、美少年が手の平を私に向けてきた。


「美和…手が寂しい。」



うん、わかってる。

手を繋ぎたいんだよね……

私が手を差し出すと美少年は指を絡めながらぎゅっと握ってきた。


手を繋ぐだけでもまだこんなにドキドキするのに……

部屋に誘ってしまったことを早くも後悔してしまっていた。















スーパーで材料を買い揃え、美少年を連れて家に帰ってきた。

美少年が部屋に来たことは何度かあるけれど、本格的に手料理を作って上げるのは今回が初めてだ。


私はいつも仕事にはバッチリ化粧して髪巻いてスーツを着て行っている。

年上女性五割増しバージョンアップと自分では呼んでいる。

でもスーツだと料理しづらいので部屋着に着替え、髪の毛もひとつにまとめた。

ホントは化粧も落としたいのだけど……

美少年にスッピンを見せるわけにはいかない。




台所でご飯を炊き、材料を切っていると美少年が近付いてきて背後から私の腰に手を回してきた。



「美和いつもと違う。」



───────こっ、これは?!


いわゆるバックハグとかいうやつではないだろうか……

私の肩に顎をちょこんと乗せて、すっごく甘えてきてるっ!



「あの……ちょっと、ソファで待っててくれる?」

こんなのされてたら料理を作るどころじゃないっ!!


「僕の名前はあのとか、ちょっととかじゃないんだけど?」



うっ…そうきたか……

名前を呼んで欲しいんだよね。

わかってる。わかってるんだけど………




「美和…今のこの寒くて雪が降る季節は何?」

美少年がバックハグをした状態のままで質問してきた。


「……ふゆ。」


「次の、暖かくて桜が咲く季節は?」

「……はる。」


「その次の、暑くて海水浴とかプールとか行く季節は?」

「……なつ。」


「じゃあ…その次は?」

「…………あ…き。」


心臓がうるさいくらいに高鳴り、顔もカ───っと熱くなってきた。



「こっちを向いてもう一回言って。」



美少年はゆっくりと私を自分の方に向けた。

熱っぽい美少年の視線を感じる……


美少年の名前、彰人あきとなんだよね……



「……あき……」

「聞こえない。僕の顔を見てはっきり言って。」


なにプレイなのこれは?!

私はいつも7cmものピンヒールを履いている。

だから外ではあまり美少年と背の高さが変わらない。

でも実際は10cmくらい差があるんだよね……

なんでも一番キスがしやすい身長差らしいのだ。

そんなことを考えながら美少年を見上げる…意識せずにはいられない。



「あきっ。」



どうだっ。どうにか頑張って目を見つめながら呼べたぞ!


「……やっぱりソファで待っとく。」


美少年が頬を染めながらプイッと部屋に戻って行った。





「美和の上目遣いかわいすぎっ…真っ赤なくせにドヤ顔してくるし……」


美少年がソファでブツブツ言ってる……

やめてやめて、聞こえてるからっ!

体の火照りが治まりそうになかった。













「お待たせー。」


私は完成したオムライスと野菜スープを美少年の前に置いた。


「ねぇ美和、このオムライス……」

「そのことには触れないの。さっ、食べよっ。」


美少年がニンマリしながらオムライスを見つめている。

私がトマトケチャップで、でっかいハートマークとその中にアキと描いたからだ。


「美和のラブラブオムライス頂きま〜すっ。」

触れないでって言ったのに……

わざわざ言わなくていいよ、恥ずかしいからっ。




オムライス好きなんだな。

結構大きめのを作ったんだけど、もう食べ終わりそうだ。

いいよね。こんだけもりもり食べてくれるのって。



「デザートもあるんだけど食べる?」

「うんっ!」


キラキラした笑顔で返事をする美少年……

もうっ、かわいいったらありゃしない。




私は台所に行き、チョコレートアイスを丸くすくいあげ、チョコシロップとハートのチョコとマシュマロをトッピングして飾り付けた。


バレンタインのつもりなんだけど……


トッピングのマシュマロにチョコペンで顔を描いたのだけど、微妙だな〜。

なんか小学生がお友達に送る友チョコみたいになってしまった……本命チョコには見えない。



案の定、美少年はお腹を抱えて大笑いした。

こんなに笑う?ってくらいずっと笑っている。



「もういいよっ食べなくても!」

「ごめん、美和。すごく嬉しいよ。このマシュマロは僕と美和?」

一応そのつもりなのだけど我ながらひどい出来だ。



「美和、あーん。」


美少年が自分の顔のマシュマロをスプーンに乗せて私に食べさした。

そしてアイスを全部たいらげてから、残していた私の顔のマシュマロをスプーンに乗せた。


「……美和のこと、食べちゃってもいいの……?」

「うん…?もちろん、どうぞ。」


なにを改まって聞いてるんだろう。

美少年はクスっと笑うと、人差し指で私の鼻先をつんつんと触った。



「こっちの美和のことを聞いてるんだけどな。」



えっ……私?


パクっとマシュマロを頬張る美少年が妙にやらしく見えた。

一気に心臓音が跳ね上がる……

私だって今日はそのつもりで部屋に呼んだんじゃないか。

落ち着け落ち着け、私のハート。



「美和……好きだよ。」



私だって好きっ……

そう応えたかったのに、さっきまで無邪気でかわいいなって思っていた美少年に力強く押し倒され、言葉が出なくなってしまった。


そうだ…美少年は男の子じゃなくて男なんだ……

このまま、私達はきっと最後まで……

どうしよう…私、うまくできるのかな。

私の方がずっとずっと大人なのに、動けないくらいに緊張してしまっていた。



美少年が顔を近付け…私の唇にそっと触れる……

アイスを食べたせいか、とてもヒヤッとした感触がした。

その冷たさに、私の中で不安が広がっていく……



「美和……いい?」



美少年が真っ直ぐな目で私のことを見つめてきた。

いいよと言いたい。

言ってあげたいけれど………



今そうなったとしてこの先は……?

12歳差はどうやったって縮まらない。

麻里のところみたいに婚約して結婚してって……

そんなことが私達に出来るの?


いつか別れる日が来るのなら

そんな深い関係になっても虚しいだけじゃないの?



付き合うと決めた時からそんなことは分かっていたはずなのに……

どんどん、どんどん……

言いようのない不安が広がっていった─────



美少年は私の上から離れると、腕を引っ張って起こしてくれた。




「今日は帰るよ。」




………えっ?


立ち上がろうとした美少年の腕を慌てて掴んだ。

今私が考えてたことが顔に出てしまったのだろうか?

美少年のことを拒絶しているように見えたのかもしれない……




誤解なのに…私はただ───────




「ごめんっ…ごめんなさい!」


大好きな彼なのに傷付けてしまった。




───────私はただ…怖かったんだ。




深い関係になって


これ以上、好きになってしまうのが………







「なんで美和謝るの?僕怒ってないよ?」

「だって…急に帰るって……」


「……僕も美和と同じ気持ちだから。」

美少年は私の手を取り、自分の胸に押し当てた。


「すごくドキドキしてるのわかる?」

美少年の心臓の音は、私と同じくらい早かった……




「好きだからもっと触れたくなるけど、好きだから触れるのが怖くなる。美和もそうでしょ?」





───────そうだった………



美少年には私の考えてることなんて筒抜けなんだ。

それはいつも私に対して純真なくらいに真っ直ぐだから……


私以上に

私のことをいつも考えてくれているから─────




「今日は僕の名前を呼んでくれたから、それで充分。」

「でも私、自分で部屋に誘ったのに……」


自分の恋愛経験の無さがつくづく嫌になる。

美少年は少しため息を付くと、首を左右に振った。



「僕もまだ美和と手をつなぐだけですごく緊張するんだ。正直、キスするだけでいっぱいいっぱい。」



えっ………


美少年を見ると、照れくさそうに笑っていた。

私は自分の方が12コも年上だからと、そればかり考えて気を張っていた。

そうだよ…美少年だってまだ中学生なんだ……


「だから、僕と美和は、自分達のスピードで進んでいけばいいんじゃないかな?」


私も美少年もまだまだ恋愛初心者だ。

無理して、焦る必要なんて全然ないんだ……



「ゆっくりでいいよ。僕はこの先もずっと…美和を離すつもりなんてないんだから。」


「……なんか…プロポーズみたい……」


「あれ?そのつもりで言ったんだけど?」



美少年がおどけたようにペロッと舌を出した。

どこまで本気なのか冗談なのか…それでも、美少年がずっと離さないと言ってくれたことがすごく嬉しかった。

年の差なんて関係ない……

私も、この先もずっと…そばにいたい。




美少年は私を引き寄せ、優しく抱きしめてくれた。



耳に聞こえてくる心臓の音が


すごく…心地よかった───────













「本当に泊まっていかないの?」

「う〜ん…さすがに朝までは理性が持ちそうにないから。」


理性をなくした美少年なんて想像つかないんだけどな。

じゃあと言って美少年は私に手を振り玄関のドアを開けようとした。



「待ってアキっ。」



私が名前を呼んだので、美少年は驚いたように振り返った。






「……アキ、大好きだよ。」





自分で言っといて大赤面だ。

でもこれだけはちゃんと伝えとかないとって思ったんだ。


「ちょっ……」


美少年の顔も一気に赤くなった。



「なんでそれを今言うかな…帰りたくなくなるじゃん。」



美少年は少し迷ったあと、遠慮がちに私の手を握った。







「……もうちょっといてもいい?」












チョコレートみたいに甘〜くとろける夜は


まだまだ続くのでR(あ〜る)。











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