続くのでR(あ~る) 年下の美少年
どどど、どうしよう……
視線はいやってほど感じていたけれどまさかまさかだわ。
もらってしまった。
年下男子高校生からのラブレター。
今時古風よね。お手紙なんて……
いっとくが私は美人じゃない。
とびっきり可愛いってわけでもない。
いいとこ中の上。
化粧とったら下だよ?
また美少年だったのよ。
あなたなら同世代でなんぼでも可愛い子と付き合えるよねってくらい。
なんで私やねーんっ!て突っ込んだわよ。
もちろん心の中でよ?
あの制服は確か中高一貫の男子校だ。
女慣れしてないんだろうな……
化粧して髪巻いてスーツ着てる年上女性が五割増しでバージョンアップして見えるんだろうな……
どうすんのコレ?
どうすんだっ、コレ────!!
私、服飾関係のOL27歳。
彼氏いない歴27年。
そう、生まれてこのかた男の人と付き合ったことがないの。
なので恋愛経験まっさらな私には、今のこの状況をどう対処したらいいんだかさ──っぱりわからん!
付き合って下さいって書いてあったらどうしよう。
えっ、その場合ムリですって手紙に返事書いて渡すの?
一発やらして下さい系だったらどうする?
ムリだよ、経験ないもん……
だまされてやんの、バーカ!ってイタズラだったら?
いや、むしろその方が助かる。
何時間か悩みまくり、私はようやく手紙を開いた。
そこにはLINEのIDが書かれていた。
手紙は古風だけど中身は今風ね……
うん…何?
私からメールしろってか?
私です。で通じる?
それとも電車のお姉さんで〜す。って感じ?
そのあとは無難に天気の話でもしたらいいの?
何書いたらいい?何が正解??
なんて難題突きつけるんだよ美少年っ!
次の日の朝、改札口に美少年が立っていた。
スマホを手に持って……
一晩中私からのメールを待っていた感じだ。
うわっ、目があった。
「やっぱり迷惑でしたか?」
「……そんなことないよ。」
迷惑じゃなくてテンパりまくってたのよ。
「メール来なかったから……」
「……昨日は、仕事が忙しかったの。」
きっちり定時で帰って手紙を開けるだけで真夜中までかかったのよ。さらにスマホと睨めっこしたまま気付けば朝が来てたのよ。
なんて…恥ずかしくて言えっこない……
「じゃあLINE交換して下さい。」
えっ、今ここで?
言われるがままに交換してしまった。
意外と押しが強いのね美少年………
高校生ってこんなにヒマなのかね?
来るわ来るわメール鳴りっぱなし。
毎朝会うから5回に1回くらいは返信してるけど。
そうなんだー。とか、
へー。とか、
だねー。とか、
超そっけない感じ。
よくめげないなぁ……
最初は自分のこととか学校のこととか一方的にメールして来てたんだけど、最近は私のことを聞いてくるようになった。
疑問形で来ると答えなきゃって思ってしまう。
ああ私って小心者……
「映画は好きですか?」
ある日の質問。
めっちゃ好きだけど…今だって見たい映画がいっぱいある。
でもそう答えるとデートに誘われそうだ。
それはまずい。
デートに繋がりそうな質問は断固阻止せねば。
「暗いとこ苦手なので行かないです。」
ふー…これで良しと。
「遊園地は好きですか?」
「乗り物酔いがひどいので行かないです。」
「動物園は好きですか?」
「動物アレルギーがあるので行かないです。」
「水族館は好きですか?」
「魚のウロコを見るとじんましんが出るので…」
おいおい、私はどんだけつまんない人間なんだ。
「食べ物は食べますか?」
…………………
いやっ食べるだろ─────!!
食べない人間がどこにいるんだっ!
どした美少年?私のせいで頭おかしくなっちゃった?
なんか可愛そうになってきた。
これは会ってちゃんと断ろう……
ごめなさいって謝ろう………
「食べます。」
「じゃあ今度一緒にご飯食べに行きましょう。」
デート当日、会って早々美少年はとんでもないことをぶち込んできた。
「僕、今日誕生日なんです。」
───────まじかっ?!
なんで今日なの!!
誕生日の人を振れるほど私は鬼じゃないよっ!
「言ってくれたらプレゼント用意したのに……」
何期待持たせるようなこと言ってんだ私っ!
昨日あれだけシュミレーションしたのに……
想定外の事態に頭真っ白だわっ。
「こうやって好きな人と過ごせるだけで最高の誕生日です。」
……なにそれ、キュンとしちゃったんだけど。
自分で言っといて照れちゃって赤くなってるとこなんかもうっ悶絶するくらい可愛いんだけど!!
「コンビニで初めて会った時、すごく優しい人だなって。」
「……コンビニ?」
「レジに行ったら鞄に財布が入ってなくて…後ろにはレジを待つ行列が出来てて、でも無いとも恥ずかしくて言えなくて……」
あっ……思い出した!
連れですって言ってまとめて払ってあげたんだ。
あたふたしててかわいそうだったから。
ジュース一本安いもんだし……
「ハンカチ落としたおばあさんに、走って届けてあげたこともあったでしょ?」
……なんだこの子──────
私のそういうところを見てたのか……
そりゃそうよね、私、美人てわけでもないし。
なんか一気に肩の力が抜けてしまった。
年下彼氏なんて世の中いっぱいいるしね。
あと何年かしたら大学生だろうし。
課長も奥さんとは10歳離れてるとか言ってたし…男と女が逆だけど。
「ここってケーキとかも置いてるのかな?」
ちゃんとお祝いしてあげたくなってきた。
良かった、ある。
へ〜、ロウソクも用意してくれるんだ。
「いくつになったの?」
「15です。」
……うん?
「……高校生…じゃ……」
「中学3年生です。」
ギャ────────っ!!
中学生かよ!
12歳差てっ!
干支同じかよ!
ひと回り違うのは流石にアウトだろ!!
「……あっあの、あのね………」
なんて言えばいいっ?
完全に私の頭のキャパをオーバーしまくってるんだけど!
「服って、着たりとかします?」
そ、その質問は……
「……着ます。」
「じゃあ今度のデートは一緒に買い物に行きましょう。」
美少年の方が私より何枚も上手だ………
どうしよう、どうすればいいの??
まだまだ難題は
続くのでR(あ〜る)。