表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

ただいま

「レイナ、傷は?」

レイナに駆け寄るロム。手には傷薬と包帯が握られている。

「大丈夫・・・だけど、やっぱり痛い。」

「応急処置をしますね。」

ロムはレイナの右手を掴み、傷の具合を見る。

「ごめんね、ロム。」

「いえ、やっぱりレイナは頼りになります。」

ロムはレイナの右手に傷薬を塗り、包帯を使い傷口を押さえた。

「これで大丈夫です。レイナみたいに直ぐには治せませんが、街に戻る時には治ってますよ。」

「ロムの傷薬は頼りになるわね。ありがとう。」

包帯で固定された右手を少し動かしながら、レイナは一息つく。

「レイナ、左手で鰐蛇の頭を掴んだ時、何をしたんですか?」

レイナの一連の行動を見て、どうしてもわからない事を聞くロム。

「操られてるんだろうなって思ったから、電気ショックで正気に戻してあげたのよ。後の行動は鰐蛇の本能ね。」

「消えた鰐蛇は、住処に返してあげたという事ですね。」

「そうよ。まぁ、ずっと見つかってなかった新種だから、このまま見つからなければ大丈夫でしょ。」

「どこに飛ばしたか、判らないんですか?」

「ええ。鰐蛇の記憶を元に飛ばしたから。鰐蛇しか場所は知らないわ。」

「相変わらず、レイナはトンデモ無い魔法使いますね。」

ロムはレイナに微笑みかける。それに照れながら微笑み返すレイナ。

「とりあえず、これで依頼はほぼ片付いたわね。後はアジトを回って片付けていくだけね。」

地図を広げてアジトの場所を確認するレイナ達。

「アジト、結構ありますね。」

「でもまあ、場所も判るから一気に行けるでしょ。夜明けまでには終わるわ。」

戻りながら、アジトを一つずつ片付けていく二人。

辺りがうっすらと明るくなってきたところで、レイナはギルドの指輪に話しかける。

「聞こえる?」

『お疲れ様です。レイナさん。』

レイナの付けているギルドの指輪からアンナの声が聞こえる。

「お互いにね。回収部隊の方はどうなったの?」

『もうすぐ鉱山跡に到着だそうです。レイナさんの報告通り、重装備部隊を派遣しました。』

「ありがとう、黒きモノは封印して麻袋に入れてるわ。後、もう一つの模倣体だけど。入り口付近で赤い岩になっているから回収する時は気を付けて。」

『了解しました。』

「私達は残ったアジトを片付けて回るから、詳しい報告は戻ってからするわね。」

『はい、引き続き気を付けてください。』

そう言ってレイナは通信を終える。

「じゃあ、後片付け行きましょうか。」

レイナの言葉に、ロムは小さく頷いて、地図を広げた。


「レイナ、これでアジトはあと一つです。」

ロムは、地図の印を塗り潰しながらレイナに話しかける。

「ロムもお疲れ様。もう一息ね。」

「はい。これで安心出来ます。」

ロムは汗をハンカチで拭いながら答える。

アジトがあった場所は、すっかり見晴らしのいい広場になっていた。

レイナとロムが事情を話し、平和的に片付けていたが、中には抵抗する野盗も居た。そう言った者たちは、問答無用でレイナが『安全な場所』へ飛ばしていた。

その都度、『安全な場所』では、質疑応答がされていたようだった。

「アジトがあった時よりも、便利になってませんか?」

森の中に開けた場所があれば、休憩場所にもってこいだろう。

「そうね、これを地図に記入すれば、野盗はアジトにはしないでしょ。」

レイナの言葉に大きく頷くロム。

「なるほど、周知の事実にしてしまえば、目立った動きもやりにくいという事ですね。」

「そういう事。後はこの辺りに共同の訓練場でも作ってしまえばいう事なしね。」

「そうですね!この辺りの警護と訓練を兼ねれば、自警団でもこの森に来る理由が出来ますね。」

「でも、ロムの街だけでやっちゃだめよ。それこそロブフォンと同じ事になるから。」

「はい、周辺の町や村にも声をかけて共同運営とします。街に戻ったら早速提案しますね。」

ロムはレイナの提案を聞いて目を輝かせる。

「じゃあ、最後の片付け、行きましょうか。」

レイナ達は森の出口に一番近いアジトに向かい、あっと言う間にアジトを片付けた。

「さすがに疲れたわね。飛んで帰りましょうか。」

「はい。」

レイナはロムの手を握り、呪文を唱える。その呪文を唱え終わった時には、二人の姿は消えていた。


街の入り口に立っている二人。レイナは背伸びをし、ロムは胸の前で手を組み祈りをささげる。

「んーっ!終わったぁ。」

「レイナ、お疲れ様です。それと、ありがとうございます。」

「こちらこそ、ありがとう。さて、ギルドに報告してゆっくり休みましょうか。」

二人は微笑みながらお礼を言いあう。

「今日も、泊って行かれるんですよね?」

「ロムが良ければ、そうしようかなって思ってる。」

レイナの言葉に、ロムは笑顔で答える。

「もちろん、いいですよ。では、私は先に戻っていますね。」

「じゃあ、ロムの分も報告しとくわね。」

「お願いします。こちらも、待ってますね。」

「うん、ありがとう。」

レイナはロムに手を振りながら、ロムはそれを見送りながら別れた。


冒険者ギルドに来たレイナ。早朝という事もあり、冒険者の姿は少ない。

「ただいま。報告に来たわ。」

「お疲れ様です、レイナさん。」

受付の女性はレイナにねぎらいの言葉をかける。

「まずは、リングレコードを見せてもらえますか?」

「ええ。」

レイナはギルドの指輪を外して女性に渡した。

「はい、少しお待ちくださいね。」

女性は指輪を機械にセットする。機械には板状の物が繋がっていた。

暫くすると、板状の物に映像が映し出された。

「えっと、受注クエストは野盗討伐、達成率は100%ですね。はい、確認しました。」

映像の情報を見ながら、女性は書類を書いている。

「次は、フリーハントですね・・・って、これは?」

女性は見たこともない生物の情報を見てレイナに確認する。

「それは、黒きモノの模倣体よ。一つは本物、後の二つは偽物。」

「これが模倣体ですか。清算額が判らないので、偽物の二つはまた保留とさせてくださいね。」

「ええ、それでいいわ。」

レイナは、笑顔で提案を了承する。

「では、最後に完了報告ですけど、まさか、黒きモノがまだ居たとは思いませんでした。」

「回収は終わったの?」

「はい。黒きモノと、赤い岩の模倣体というのも回収したと連絡を受けてます。」

女性は手元にある紙をめくりながら答えた。

「よかった。赤い岩の方は、厳重に封印するか完全破壊するようにしてね。」

「そんなに凶悪なんですか?」

「ええ、真っ二つにしても生きてるからね。赤い岩の封印解いたら、また動き出すわ。」

「封印、解けるんですか?」

「私以上の力が無いと、無理だと思うわ。」

「レイナさん以上の力の持ち主、そうそう居ませんね。なら安心です。」

女性はほっと胸をなでおろした。

「さて、次は今回のクエストの重要点の説明ね。」

レイナは女性に今回の事件の顛末を報告を始めた。

「ロブフォンが作成した黒きモノの模倣体は、生物兵器や亜人兵器、そして本物を使用する兵器実験という事だったんですね。」

「そうなるわね。」

「以前報告のあったロブフォンの不審な動き、これで裏付けられた形になりますね。」

「あの情報、本当だと思いたくはなかったけど、ここまで証拠が出揃っちゃうとね。」

神妙な面持ちになるレイナ。

「では、その件はギルドで預からせてもらいますね。報酬に新規情報料も追加しておきます。」

「助かるわ、ありがとう。」

「では、これで報告は終わりですね。本当にお疲れ様でした。」

「あ、ちょっと待って。私の出した依頼なんだけど。」

レイナは、女性を引き留める。

「はい。えっと、護衛の依頼ですね。」

依頼書を取り出して女性が答える。

「その依頼も一緒に報告してもいい?」

「はい。リングレコードに入っていた、ロムさんの事ですね。」

「ええ、しっかりと助けてくれたわ。依頼は達成よ。」

「判りました。ロムさんの報酬も一緒に渡して置きますね。」

女性は書類にその旨を書き記す。

「すんなり渡してくれるのね。」

「レイナさんが報酬横取りなんてしませんから。」

「まぁ、元々は自分のお金だしね。」

女性はレイナに指輪と報酬を受け取るための書類を渡す。

「それじゃあ、またね。」

指輪と書類を受け取ったレイナは女性に手を振って受付を離れた。

その後、レイナは報酬受け取り窓口へ行き、報酬を受け取り、ギルドを後にする。

「うん、結構いい金額になったわね。」

報酬明細を見ながら、レイナが呟く。

「さて、私もお休みしよう。」

レイナはロムの教会へ向かった。


「無事に戻ってこれました。神様に感謝ですね。」

一足先に教会に戻って来たロムは、教会前で感慨深そうにつぶやく。

そして、教会の扉を開ける。その音を聞いて、小さな影がロムに向かってきた。

「ロムおねえちゃん!」

レーミュが、嬉しそうにロムに飛びついてきた。

「ただいま、レーミュ。もう起きてたの?」

「うん!もうすぐ帰ってきそうな気がしたから。」

「ふふっ、ありがとう、レーミュ。」

ロムはレーミュに目線を合わせ、笑顔を見せる。

「朝ごはん、出来てるよ!」

「まぁ、用意がいいわね。」

「えへへ。」

レーミュの頭を撫でるロム。

「私はベッドを用意してくるから、ご飯の方はお願いね。」

「うん!わかった!」

ロムは奥の寝室に向かい、レーミュはキッチンへ向かう。二人の準備が終わる頃に、教会の扉を叩く音が聞こえた。

その音を聞いて、二人が扉を開ける。扉の先には果物の入った袋を持ったレイナが立っていた。

「お帰り、レイナ。」

「ただいま。」

そう言って、レイナは二人に微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ