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第16話 預言者ちゃんは魔獣を撃破する

 「■■■■■■■■■!!!」

 「無駄だ。ス■ュ■■ス川の加護を受けている私には、あなたの目は効かない」


 ファルティシナは淡々と魔獣に言った。

 邪眼が効かないと分かると、魔獣は雄たけびを上げて、ファルティシナに向かってその牙を向いた。


 その牙を、ファルティシナは片手で受け止める。


 「……あなたが感じ取っている通り、私はかつてあなたを討ち取った英雄の子孫だ。そして大英雄の孫娘でもある」


 魔獣は牙から毒を分泌し、ファルティシナの肉体を侵そうとするが……

 川の加護により、それらはすべて皮膚で弾かれてしまう。


 「さらに我が身はステ■イ■■川の加護を受けている。そしてこの『金獅子の鎧』は身体能力を強化する加護が宿っている」


 ピキピキピキ……

 魔獣の牙にヒビが入った。


 そして……


 「私はあなたよりも強い」


 片手で牙を粉砕した。

 絶叫を上げる魔獣。


 「あなたは魔獣に堕ちたとはいえ、元々強大な力を持つ女神。ええ……この時代の軍隊では太刀打ちできないでしょう。そもそも戦いにすらならない。あなたの視界に入っただけで、あなたはすべてを石や塩に変えることができるのだから」


 人と人ならざる者。

 両者の間には隔絶とした差が存在するのだ。


 「……そしてこの時代の人間があなたに太刀打ちできないように。あなたも私には太刀打ちできない」

 「■■■■■■■■!!!」


 魔獣は自らの髪を引きちぎり、周囲にばら撒いた。

 魔獣の髪は土に触れると、蛇に姿を変え……一斉にファルティシナに襲い掛かった。


 「無駄だ」


 ファルティシナはマントから槍を引き抜き、軽く振った。

 風圧だけで蛇は吹き飛んでしまった。

 

 「……話し合わないか? 別に私はあなたに害意を持っていない。あなたは呪いさえ、解いてくれればいい。何なら、住む場所も提供する」


 ファルティシナは襲い掛かる魔獣を何度も地面に投げながら、語り掛けた。


 「少し時代はずれているけれど、私とあなたは同じ、神代に、同じ世界に生まれた者だ。故郷を同じくしているし……血の繋がりもある。私にとって、あなたは唯一生きている家族だ。……まああなたに会ったのは今が初めてだが」


 「ゆ■ざ■■ぞ……■る■ない■……」

 「……今、何と?」

 「ゆるざないぞ!!!」


 魔獣は叫びながら、ファルティシナに突進した。

 ファルティシナは片手でその顔面を受け止める。


 蛇と化している髪が、ファルティシナの手に絡みつき、牙を突き立てようとするが……

 『金獅子の鎧』に包まれているファルティシナの手には傷一つつかなかった。


 「よ■も、■ぐ■、ご■わ■■をは■がじ■でぐ■だな!!

 「……私はこう見えても女だからあなたを辱めようがないのだが。……そもそも好みのタイプじゃない」

 

 魔獣は尾を振り上げ、ファルティシナに向かって叩きつけた。

 ファルティシナは槍を振るい、尻尾を切断する。


 鮮血が噴き上がり、尻尾が宙を踊る。

 地面に墜落した尻尾はしばらくのたうち回った後……静止した。


 そしてその断面が盛り上がり、そこから女の上半身が出現した。


 「なるほどね……分裂、か。そういえば、そんな話も聞いたな」


 いつの間にかファルティシナが切断したはずの尻尾も生えていた。

 合計、二体の魔獣がファルティシナの前に現れる。

 

 だが……『蛇の瞳』を持つ方の魔獣は一方だけなので、どちらが本物で、どちらが偽物かは一目で分かってしまう。

 それに目に見えて、神威が減衰した。


 「「■■■■■!!!!!」」

 「力は二分の一になる上に知能も衰えるのか。何のメリットもないな」


 ファルティシナはため息をついた。

 そして小さく、聖句を唱える。


 「『文明の火よ。我が造物主が人に与えし火よ。人にあだなす、獣を打ち払え』」


 紅蓮の炎がファルティシナの槍を包み込んだ。

 ファルティシナは偽物の方の魔獣にその槍を突き刺した。


 槍は一撃で心臓を貫き、炎は魔獣の体内を焼き尽くした。


 「さて、もう一度問おう。戦いをやめるつもりはないか?」  

 「ゆ■■■ぞ……ご■、わ■じを、■ぐも、がみのざ■■おいお■■だな。ごの、おや■ご■もの■ぁ」

 「……どうやら、あなたは殺した方が良さそうだ」


 話し合いは不可能だと、ファルティシナは判断した。

 そしてマントから、アダマスの鎌を取り出した。


 魔獣は叫び声を上げながら、ファルティシナに向かって、闇雲に突撃した。


 「じね!! あるでぃじーなぁぁああああああ」


 ファルティシナは鎌を軽く振った。

 魔獣の首が宙を待った。

 ファルティシナはもうすでに動くこともなくなった首をキャッチする。


 「それは人違い、いや神違いだな」


 ファルティシナは悲しそうに呟いた。

 そしてリリィを守るために、彼女の首にかけておいた堅き盾(アイギス)を取り外した。


 それを元の大きさに戻し、窪みに首を嵌め込んだ。

 すると生首はゆっくりと盾の中に溶けていき、平面の、レリーフのような姿に変わった。


 「……せっかく、故郷を同じくする者と会えたのにね。ままならないものだよ」


 ファルティシナはため息をついた。

 それから再び盾を小型化して、リリィの首に掛けた。


 「『文明の火よ』」


 ファルティシナは火を操り、魔獣の体を焼き払った、

 もう二度と、彼女が苦しむことのないように……そう祈りながら。


 「さて、これにて一件落着……と言いたいところなんだがな」


 ファルティシナは再び槍を握る手に力を入れた。

 そしてリリィを守るように、彼女の近くに寄った。


 そして普段は隠している、その膨大な神威を解放した。


 赤みを帯びた彼女の金髪と、そして黄金の瞳が暗闇の中で光り輝く。

 

 暗闇を睨みながら、低い声で言った。


 「姿を見せろ。気付かないと思ったか? 彼女の体からは、貴様の不快な臭いがぷんぷんと漂っていたぞ」


 暗闇は何も答えない。

 ファルティシナは神炎を槍に纏わせ、闇夜に翳した。


 「こんなことを、魔獣とはいえ、神だった存在を貶めて、何がしたかった?」


 暗黒は沈黙を保つ。


 「私を蘇らせたのも、お前の手引きか?」


 漆黒の闇に対し、ファルティシナは怒鳴った。


 「答えろ、悪魔!」


 すると……

 闇が蠢いた。


 いつの間にかそこには黄金の髪に、真紅の瞳の男がいた。

 その顔はファルティシナ、瓜二つだった。

 髪色と瞳の色が、若干異なり、そして体格や顔立ちが少し男性的であることを除けば全く同じだった。


 「それに対する返答はこうだ……否」

 「……ペテン師の言うことなど、信じられるか」


 ファルティシナが疑いの目で言うと、白銀の男は笑った。


 「ならば、最初から聞かなければいいものを。ペテン師」


 男は――悪魔――は笑みを浮かべていった。


 「久しぶりだな、我が創造主」


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もしお時間があったらどうぞ
『女神様は普通の女の子に憧れる』
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