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碧空の下で 01  作者: 安曇 穂高
02. カナダへの道標
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碧空の下で 007

 

 ついにトロントに到着した。ここからは、ジェシカの家に長い間居候させてもらうことになる。

2人の提案で、クイーン駅からトロントハイパークに向かう。僕も「楓の広場に行きたい。」と言っていたな。大阪の地下鉄とは違って、トークンを購入して切符を買う仕組みだ。早速衝撃を受けてしまった。異国の地だけれども、これからはこの地の住民として馴染まねばならない。

 そうこうするうちにハイパーク駅に着いた。ハイパーク駅に着くと、早速巨大な楓の花壇が待ち構えていた。これからカナダに居住する僕に向けてメッセージが送られて来るようにも見えた。この時、昨日覚えたカナダ国歌が頭をよぎった。しかも、今日はカナダデーなのだから、国歌の演奏がある。僭越ながら、現地の市民とともに歌った。まあこれからは彼、彼女らと同じトロント市民として生きていく訳だけど、まだ戸籍上にはない。

 “O Canada!’’はカナダの国歌。一緒に歌うと、なんだかカナダ人になった気がした。


 夕焼けに染まる空が見えたので、家路につき、住民登録をしに市役所へ行ってからフィンチ駅に向かった。ここが新たな家の最寄りとなる。

戸籍には、新たに決めた名前が掲載されていた。ジェシカと共にこの名前を決めたんだ。もう僕は大阪淳ではないんだ。そんな人間は日本にいるけど、いないんだ。

 地下鉄1号線の車内で、軍事工場にいる母からメールが届いた。召集令状が来たというが、僕からすると当然行く訳はない。これからカナダのレジデントとなるのになぜ日本軍に入らないといけないのか。両親は東シナ海へ行って死んで来いという。なんて古臭いんだろう。国の勝利ためだけに命を落とすことを奨励し、これを正当化する姿勢に関しては大々的に抗議したいが、特高警察に逮捕されかねない。まるで独裁国家だ。昔北朝鮮をネタにしていたが、皮肉な結果になってしまうとは誰が予想しただろうか、いや、していない。

 そして、フィンチ駅に着いた。これからは故郷なのだ。そう茜色に染まる空を見上げながら思う。だが家の場所など知らぬからジェシカに尋ねる。

「ここから新たな家までどう行くの?」

「私に付いて来て。」

と言われ、9月から通うフィンチ中央高校を見ながら家に着いた。なんと6階まである。なんと高いことか。煉瓦造で、よく見ると1967年7月1日と銘記されている。

「独立100年記念なの?」とジェシカに尋ねたら、「偶然だよ、これは。しかも今日はイギリスからの独立じゃなくて、自治が始まった日。」と返ってきた。

 ところで、第2次日中戦争が始まったのが2020年5月1日。この瞬間東京オリンピックはケベックオリンピックに変更されたんだな。ケベックでもスポーツ施設の建設が進んでいたんだな。そして日本から抜け出したのが6月10日。ジェシカに出会ったのが19日。そしてカナダにやってきたのが昨日、30日。今日から7月。カナダの中学では卒業の時を迎えたそうだ。時間が経つのは早いなあ。

 にしても、日本に残された妹らは何してるのだろう。学校に行っているのだろうか。それとも、違うのだろうか。

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