碧空の下で 015
その頃、ジャスティンはセント・アンドリュー駅を発ち、ジェシカと共にボードゲーム部に向かっていた。前回あのメールと言っていたのは、彼が送ったものだった。初回なので、会費60ドル/年と誓約書が必要だ。ただ、カナダの新年度、9月に入って最初の活動日だったので、全員取られてたけど。
誓約書に署名する。ザッと目を通し、Justin Stevensonと記して待っていた。暫くすると、部長のジョン・テーラーさんが現れた。
「ようこそ!トロント・ボードゲームクラブへ!ジョン・テーラーだよ。ファーストネームで呼んでもらってもいいよ。にしてもジャスティン、本当に日本から抜け出したのか。お前はトロント中のカナダ人が知っているぞ。」
そのあと、このクラブに関して簡単な説明があったあと、早速ゲームが始まった。
早速ゲームを始めた。どうやら、石の資材を集めて被らないようにカードを買い、最多の得点を取った人が勝つ、ということだ。結構重い方だ。卓を囲むと、何やら見たことのある人がいた。どう考えても、颯大だ。あのモントリオールの空港で出会った、日本にいたときの友人だ。どうやら、彼も入部届けを出していたようだ。彼に聞いてみた。
「久しぶりやなぁ。颯大。」
「こちらこそやな。ただ、今はもうその名前は使うことなどない。今は、ケリー・スコットだ。淳ももう元の名前は使うことなどないやろ。」
「今は、ジャスティン・スティーブンソン。」
周りには、部長のジョンがいた。ケリーの手番であることを言っている。そうだったな。彼は15金を支払って、鉄鉱石を手にした。これで鉄鉱石は枯れたことになる。先ほどの手番で、ジャスティンの次にいるジェシカの行動から推察すると、彼らは宝石と花崗岩を手に入れ、25金を手にする気か。よし、枯らしておこう。
こうならないように、カードを買っておいた。それを使うと、場のカード1枚を捨てられる。行使すると、ジェシカの顔が蒼白色に染まった。それは、1秒くらいしか続かなかった。更なる最善手があったのだ。
ジェシカは、誰もが気づかなかった、まさにその手に出た。なんと、労働者を1人リストラすることで、恒久的に手番は1減るものの、10点が手に入るのだ。
この瞬間、誰もが目を丸くしていた。
労働者のリストラにより点数を稼いだジェシカだったが、結局はジャスティンが足止めカードを使い、ジェシカを3ターンほど休ませておいて逆転勝ちした。誰もこうなることは想定していなかった。ジェシカが僅差でジョンに勝つものだと思われていた。
帰り道には、星が煌々と輝いていた。途中のクイーン駅で、エリックが乗ってきた。どうやら、繁華街で遊んでいたようだ。しかも、紙袋を携えて。
「その中身を見てもいい?」
「いいけど、シェークスピアだよ。ところで、ジョーク言っていい?」
「いいけど。」
「アメリカの大統領が、コーランを買った。最後の方で、カナダに対する失言をやらかした。これについて、民主党の支持者は、多様化・グローバル化の象徴と喜び、共和党の支持者は激昂した。また、南部の州の住民は、教会に行けと憤り、カナディアンは偏見に対する憎悪を更に持った。」
周りのカナディアンは、大笑いしていた。これに、アメリカンジョークで返そう。
「北緯49度線の北に国はあるか、とある人が問うてきた。通行人は、当然あると答えたら、ボコボコにされたそうだ。」
頷いていたのは、多くの人だった。そうこうするうち、フィンチに着いた。そういえば、ケリーはハイパーク駅のすぐそばに住んでいるみたいだ。さて、明日は地理の時間に、日本のことを発表しないといけない。よく取り上げられるのは、少子高齢化のネタだけど、地理の時間なので、地理にしよう。いやいや、脱日者として話をしよう。問題は、人を泣かせられるか。